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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
十二章

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088_失地奪還戦

聖騎士の犬と言われた僕はガチャに目覚めて最強を歩む ~最強になりたいわけじゃない。ただ、誰かに引け目を感じたくないだけなんだ~

もよろしくお願いします。



あえて言おう、ケイトクさんなぜ分かった!?


 


 暑い夏も佳境に入り、国の威信と命運をかけた戦いが繰り広げられるまで、10日を残すところになった神帝歴622年8月3日。

 アレクは兵たちの英気を養うため最後の休息日を与えた。

 そしてじりじりと全てを焦がす太陽光の下、フリオの結婚式が執り行われた。


 アレクは婚約に際し、あるていど帝国との戦いに決着がついた頃に結婚式をとアムント家に申し入れたが、ロベルト・アーシア・アムントは戦が始まる前に婚儀をと申し入れてきた。

 今回の戦いは死力を尽くしてのものになると誰もが考えている中で、ロベルト・アーシア・アムントは自身が命を落とす可能性も考えていた。そのため、開戦前に愛娘セーラの嫁ぐ姿を見ておきたかったのだ。


「フリオ、セーラさん。おめでとう」

「フリオさん、セーラさん。おめでとう」

「兄さん、ラーレさん。ありがとう」

「アレクサンダー様、ラーレ様。ありがとう存じます」

 フリオとセーラが並んでデーゼマン家の当主夫妻であるアレクとラーレに挨拶をする。

 フリオの両親であるフォレストとリーリア、続いて新婦の両親であるアムント夫妻、さらに式に出席した両家の家族が挨拶をしていく。

 それが終わると今度はデーゼマン家の家臣たち、そしてアムント家の家臣たち、両家の来賓と続く。

 フリオとセーラにとってかなり長い挨拶だが、これは貴族の子弟であれば誰でも通る道だ。そして、この結婚によってフリオは分家として十一等勲民の騎士家を興すことになっている。


 式は新郎新婦の両親の前で結婚の誓いを立てるものだ。

 下級貴族である九等勲民のデーゼマン家が嫁を迎える側なので、普通はそこまで派手な式にならない。

 九等勲民としては有り余る財力を持っているデーゼマン家の式も派手さはないが、用意された調度品などはどれも高級品であった。


 新婦のセーラは純白のドレスに身を包み、新郎のフリオもびしっと決めている。

 2人は気恥ずかしそうに、手を取り合ってお互いの両親に結婚の誓いを立てるが、新婦の父であるロベルト・アーシア・アムントは娘の晴れ姿を見ることができて感無量と涙を流す。


 フリオの結婚式が終わると、今度は大規模な宴会が始まる。

 アレクは王都で結婚式を行い宴会を開いたが、それこそ千人規模の来賓があった。

 だが、ここはデーゼマン領であり、最前線である。さすがに王都から誰かがくるということはなく、フォレストと親しいオイエン・ブリッグスは第三騎士団を率いてフェフレン州で帝国軍と睨み合っていたので使者が祝いの品を届けてくれた。

 今はそういう時期ということもあって、客は少ない。

 それでもデーゼマンの領民はこの結婚式を祝い、お祭り騒ぎをする。

 アレクもフリオとセーラの結婚式を祝ってくれる領民に感謝して酒をふるまった。


 フリオとセーラの結婚式の翌日、へルネス砦に動きがあった。

 おかげでお祝い気分は吹き飛んでしまったが、その数日後には帝国軍の行動の意味を把握できた。

「アレクサンダー殿、帝国軍がツバス砦とフォルド砦を破却したというのは、本当かね?」

 ロベルト・アーシア・アムントはアムンゼンに帰らず、ヘリオで情報を共有することになった。

「はい。どうやらへルネス砦に戦力を集中させるようです」

 規模の小さいツバス砦とフォルド砦を個別に守るよりも、規模の大きいへルネス砦を守るほうがいい。だが……。

「何かがおかしい」

 言いようのない違和感がアレクの脳裏を支配して、首を傾げる。


「閣下、何がおかしいのですか?」

 ゲムズ・ホッパー大佐がアレクの言葉に反応した。

「それが分からないのです」

 アレクは自分の執務室のデスクの椅子の背もたれに背中を預けてしきりに頭をひねる。

「分からないのに、おかしいと?」

「はい。自分でもおかしいと思っていることが不思議なのですが……」

 アレクは自重して笑う。


「帝国軍は数が多い」

 アレクの隣のデスクで本を読んでいたマリアが呟いた。

「そうだよ! 帝国軍はこちらより数が多いのに、なんで守りを固める必要があるの?」

「そう言えばそうですな……」

 ゲムズ・ホッパーもアレクの違和感の正体が分かっておかしいことに気がついた。

 へルネス砦には5万以上の帝国軍が駐留している。対してアレクが指揮する兵は周辺貴族を入れてもせいぜい2万を少し越えるていどだ。

 兵力では圧倒的にへルネス砦に駐留する帝国軍側に分があるのだ。なのに、守りを固めるのはあきらかにおかしい。


「マリア。もしかしてへルネス砦に駐留している軍は少ないのかな?」

「多分、そう」

 マリアは迷うことなく答えた。

「しかし、へルネス砦とその周囲は斥候たちによって完全に監視しています。兵数が少なくなるわけが……」

 ゲムズ・ホッパーが顎に手をやって考え込む。


「もし、へルネス砦の軍が密かに移動していたとしたら……いや、でもどうやって」

「地下」

 アレクの疑問にマリアが答える。

「そうか、地下か!」

 ゲムズ・ホッパーが叫んだ。そしてアレクたちも納得がいった。

「もし地下に穴を掘って兵を移動させていたら……」

 土魔術士が数人いれば、二、三カ月もあればかなり長いトンネルが掘れる。

「その兵力はどこへ……?」

 ロベルト・アーシア・アムントが自問自答する。

「帝国の勢力下で姿をくらませてしまった以上、いきさきがどこか全く追えなくなりますからな」

 ゲムズ・ホッパーが苦虫を潰したような表情をする。


「マリア。帝国軍はどこに向かったんだ?」

 それまで口を閉ざしていたフォレストが口を開いた。

 ゲムズ・ホッパーとロベルト・アーシア・アムントはアレクとフォレストが、マリアのような少女に意見を聞くことが理解できなかった。

 たしかに、地下のことに気づいたのはマリアだが、マリアのような少女に聞くような話ではない。

 それより何より2人はマリアという少女がアレクの執務室にデスクを与えられていることが不思議だった。マリアのことをよく知らない2人からすれば不思議な光景であるが、デーゼマン家の者にすれば最高最強のアドバイザーである。


「シュテイン州南東部だと思う」

「なぜだ?」

「後方を遮断」

「へルネス砦に大軍がいると思っている我らを横目に、南東部に布陣する王国軍を破って我らを孤立させるつもりか」

「うん」

 フォレストの問いに、マリアは言葉少なく答えた。

 2人のやりとりを見守っていたアレクが立ち上がる。

「ホッパー大佐。マリアの言葉を信じてください。そのうえで判断してほしい。へルネス砦にこもっている帝国兵の数はどのていどですか?」

「……5万以上と見せてこちらの攻撃を躊躇させるものであれば、5000……多くても1万かと」

 つまり4万以上の帝国軍が南東部の援軍として現れるということになる。それだけの数に奇襲されたら、どれほど精強な軍でもひとたまりもないだろう。


 

<<お願い>>

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