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087_失地奪還戦

聖騎士の犬と言われた僕はガチャに目覚めて最強を歩む ~最強になりたいわけじゃない。ただ、誰かに引け目を感じたくないだけなんだ~

もよろしくお願いします。

 


 王都の軍務大臣の執務室では、シュテイン州のデーゼマン師団から届いた報告書に首脳陣が頭を悩ませていた。

「まさかヘルネス砦に5万の戦力を置くとは思ってもいなかった。他の前線の戦力に変わりはないのだな?」

 軍務大臣が唸る。

「確認しましたが、他の前線に大きな変化は見られません」

 統括参謀長が軍務大臣に視線を向けて答える。

「デーゼマン少将の報告にあったように、帝国本土からの援軍と見るべきか……」

「帝国は皇帝の命令で数万の兵を帝国の端から端へ動かすことくらい簡単にしますからな……」

 軍務大臣の言葉に軍務副大臣が自重気味に笑いながら答える。

「我が国の貴族どもにも見習ってもらいたいものだ」

 戦いのない地域の貴族は、私兵や物資を供出することさえ拒む。国王などはそういった貴族たちを本気で前線の土地に領地替えをしたいと思っているが、それをしたら国内が荒れることになるためできない。

 だから、なんとしても帝国軍を追い払いたいのだが、帝国軍がさらに増強されるという頭の痛い現実だけが突きつけられる。


「アッサン公国方面軍を動かせないか?」

 軍務大臣が聞く。

「あの国は部族の独立色が強いため、隙を見せれば侵攻される恐れがあります。動かすのであれば、貴族たちにその防衛を任せて方面軍をシュテイン州へ回しましょう」

 アレクの舅であるステイラム・オイゲンスは、アッサン公国方面軍の司令官を経て今の地位に就いている。そのためアッサン公国について詳しい。

「貴族たちは地域防衛を理由に派兵しませんので、その地域防衛を任せてやればいいのです」

 統括参謀長も同調した。


「あとは、ブロス・カルバロ・アルホフたちサダラード州の貴族には、新設したボーノス砦を任せましょう」

 ボーノス砦はケルマン渓谷のトルスト教国側出口にアレクが防壁を築いた砦である。

 強固な防壁は教国軍を何度も防ぎ、ケルマン渓谷の支配をソウテイ王国にもたらした。

「軍務大臣の仰るように、あの傲慢なブロス・カルバロ・アルホフを使ってやりましょう」

 統括参謀長が珍しく口角を上げる。

「これまで国軍をいいように使ってくれたのだから、お手並み拝見ですな」

 軍務副大臣も口角を上げる。


「あとはハーマン州の貴族に動員をかけるべきかと」

 統括参謀長がシュテイン州の南西部に隣接するハーマン州からもと口にすると、皆が頷く。

 ハーマン州は友好国であるゼント共和国との交易で潤っている地域だ。魔物が生息する地域と接しているため、3割から4割ほどの貴族は魔物を抑えるために動かせないが、6割の貴族を動員できるだろう。

 国王が国家総動員令を発令し、帝国軍を駆逐する方針を打ち出していることを基に、地域防衛を貴族たちに任せて国軍の戦力をシュテイン州などの前線に集中するべく案をまとめて会議は終了した。


 軍務大臣はすぐにその案を国王へ提出する。

 すると、即日国王の裁可が下りて、軍務大臣は東部方面軍とアッサン公国方面軍をシュテイン州へ移動させる命令書を発行した。

 同時に宰相府より各貴族へ各拠点を守るように命令書が発行されることになった。


 それに驚いたのは、今まで国軍に地域防衛を任せっきりになっていた貴族たちだ。

 貴族たちは異議申し立てしたが、今は国家総動員令が発令されていることから、即日却下された。

 その間も時間は無常に流れ、貴族たちがそれぞれの拠点に入る期限の日になった。国軍は粛々と移動の準備を進めていたので、命令にあった日には拠点を貴族へ明け渡すのだが、集まった貴族の数はかなり少なかった。

 それでも国軍は命令を遂行しなければならない。


 ケルマン渓谷の教国側に築かれたこのボーノス砦でも国軍が移動を開始する。

 しかし、新しくこのボーノス砦の主将に任命されたブロス・カルバロ・アルホフは、まだ到着していない。この日からブロス・カルバロ・アルホフがボーノス砦の主将になることから、国軍司令官はボーノス砦に残って守ることはできないのである。

 ボーノス砦をこれまで守ってきた東部方面軍司令官ゲバン・ガバラン少将は、軍を率いてシュテイン州へ向かうが、駆けつけた貴族の数があまりにも少ないため不安があった。

 このままブロス・カルバロ・アルホフが兵を率いてこなければ、ここに駆けつけた貴族たちの信を失うだけではなく、王命への反逆と取られても仕方がない。

 例え王国でも三本の指に入るほどの名家と言えども、ただでは済まないということが分かっていないようだ。


 その頃、ボーノス砦の主将に任命されたブロス・カルバロ・アルホフは、領地の屋敷でワインを傾けていた。

「なぜこの私があのような辺鄙な砦を守らねばならぬ。国王も耄碌しよってからに。のう、皆の衆。わーっはははは」

「左様、左様。ははは」


 ブロス・カルバロ・アルホフには、王命を守ろうとかボーノス砦へ向かう気はまったくなく、取り巻き(主に寄子)の貴族たちを集めて酒宴を開き、宰相府からの命令をあからさまに無視する態度をとった。

 サダラード州の主要な港と塩の販路を押さえているブロス・カルバロ・アルホフとその一党は、有り余る財力を背景にこれまで好き勝手してきた。

 国王や宰相たちはそれを見て見ぬふりをするしかなかったが、今は非常事態であり看過できるものではない。


 ブロス・カルバロ・アルホフは、帝国軍との戦いは長引き、国がどんどん疲弊していくと考えた。そのため、自分の財力や兵力を温存しようと考えたのだ。

 帝国との戦いが長引けば、確かにブロス・カルバロ・アルホフの力はこれまで以上のものになるだろう。だが、それは帝国との戦いが長引けばの話であり、教国がボーノス砦を破って王国へ侵攻しなければの話である。


 はたしてブロス・カルバロ・アルホフはこの行動で自らの力を誇示できるのだろうか? 自らの命を縮めることになるとは、まったく思っていないブロス・カルバロ・アルホフであった。


 

<<お願い>>

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― 新着の感想 ―
[良い点] ブス・カバ・アホですかw
[一言] ブロス・カルバロ・アルホフたちサダラード州の貴族達は 国家反逆罪の良い見せ締めになりますね
[一言] 最悪国家反逆罪で連座処刑されるよなあ
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