084_アレクサンダー・デーゼマンという英雄
聖騎士の犬と言われた僕はガチャに目覚めて最強を歩む ~最強になりたいわけじゃない。ただ、誰かに引け目を感じたくないだけなんだ~
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フォレスト、マリア、ラーレの3人は、アレクに先駆けてデーゼマン領へ向かった。
アレクはその数日後に機甲科魔術部隊と師団を率いて王都を発つ予定だ。機甲科魔術部隊と師団は別枠なので、アレクが預かる兵員の数は1万7000を越える。
フォレストたちがロベルト・アーシア・アムント六等勲民が治めるアムンゼンに到着し、挨拶のために屋敷を訪問したのが神帝歴622年1月26日のことであった。
「久しぶりですな、デーゼマン殿」
「ご無沙汰しております。アムント殿」
今回、アレクに与えられた権限に対して、最もネックになるのがこのロベルト・アーシア・アムントである。
ロベルト・アーシア・アムントはシュテイン州西部の盟主でもあり、王都からデーゼマン領へ補給をしようとすると必ず彼の領地を通るのである。
盟主を差し置いて九等勲民家のデーゼマン家が対帝国の指揮を執るのだから、顔を潰されたことで腸が煮えくり返っていても不思議ではない。
「この度はアレクサンダー殿が大変な出世、デーゼマン家は安泰ですな」
「その件ではアムント殿には不満もありましょう。この通りでござる」
フォレストは深々と頭を下げた。
「フォレスト殿、某はそれほど狭量ではないつもりだ」
フォレストは驚き顔を上げる。
「今回の帝国の侵攻は、王国にとって極めて危機的状況にある。このシュテイン州は特にだ」
「………」
「力ある者が先頭に立ち帝国に当たらねば、もっと酷い状況になる」
ロベルト・アーシア・アムントという人物は軍人としては二流だが、政治家としては一流。今の危機的状況が見えないほど愚か者ではない。
「ただ、一つだけ頼みがあるのだが……」
「なんでしょうか?」
ロベルト・アーシア・アムントは真剣な眼差しで、フォレストを見つめる。
貴族の頼みというのは、非常に厄介なものもある。今回はデーゼマン家がアムント家の顔を潰したようなものなので、どんな無理難題が出てくるかフォレストは戦々恐々とした。
「フリオ殿に我が娘のセーラをもらってもらいたいのだ」
「………」
唐突な話であった。だが、悪くはない。
フォレストは瞬時にそう感じた。
アレクの件でアムント家と軋轢が生まれたことを懸念する周辺貴族もいるだろう。だが、この話を受ければ、そういった懸念は払拭できる。
そうなれば、周辺貴族もアレクの指揮下に入りやすくなる。
アレクに側室をと言ってくる話はいくつもあったが、次男のフリオに嫁をと言ってくる家はない。
アレクの戦功が華々しいこともあって、貴族から見たフリオの評価は低いのだと感じていた。それが、アムント家から嫁をもらえるのであえれば、かなりよい話だ。
「ありがたい話です。ただ、某は隠居した身ゆえ、当主のアレクサンダーの意見を確認してからお返事をさせていただきます」
それもそうだとロベルト・アーシア・アムントが頷く。
フォレストがヘリオに入ってからおよそ半月後の神帝歴622年2月18日に、アレクが率いるデーゼマン師団がデーゼマン領へ入った。
雪が舞う中の到着だったが、デーゼマン師団は整然と行軍した。
「准将。僕は父に挨拶をしてきますので、後のことを頼みます」
「はっ」
アレクに敬礼して返事をする茶髪茶目の偉丈夫は、デーゼマン師団の副師団長を任されているマイラス・バージス准将だ。
今年で46歳になるマイラス・バージスは、軍人としては有能だが世渡りが下手で不器用な男である。
12年前に当時の軍務大臣の勘気をこうむって、それ以来閑職に追いやられていたが、エドワール・ノヴェールが昨年10月に統括参謀長の要職に就いたことで、旧知の仲であるマイラス・バージスがデーゼマン師団の副師団長に抜擢されたのだ。
「ホッパー大佐とシュメルツァー大佐は僕についてきてきてください」
「はい」
金髪茶目の細身の人物がゲムズ・ホッパー大佐で、デーゼマン師団の参謀長をしている。
かなり生真面目で融通の利かないところもあるが、アレクはそういったゲムズ・ホッパーの人となりに好感を持っている。
「お供いたします」
今年32歳になるアレクよりやや大柄な茶髪碧眼の人物がクラウス・シュメルツァー大佐である。クラウス・シュメルツァーはデーゼマン師団では編成部長の重職に就いている。
なんとも掴みどころのないほわっとした雰囲気を持っている人物だが、アレクと同じステイラム・オイゲンスの娘婿でもあるのだ。
しかも、子供が女の子ばかりで男子のないステイラム・オイゲンスは、このクラウス・シュメルツァーと娘の間に生まれた子供を養嗣子として迎えており、いずれオイゲンス五等勲民家はクラウス・シュメルツァーの息子が継ぐことになっている。
アレクとこの3人の幹部は、この先長いつき合いになる。
「アレクサンダー様、お帰りなさいませ」
アレクが屋敷の庭に到着すると、デーゼマン家のメイドを束ねる妖精種風族のカトレアが迎えてくれた。
「ただいま。カトレア」
カトレアは若々しい容姿をしているが、カーシャが若い頃からデーゼマン家にいるため、アレクどころかフォレストのおしめも替えていた人物で、マリアほどではないが魔術の才能と実力は素晴らしいものがある。もっとも、本人は魔術について一言も語ったことはない。
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