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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
十章

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076_帝国進軍

 


 何が起きているのかアドレス大佐には分からなかった。

 しかし、状況が悪いということだけは理解できる。


 伝令が駆け込んできてバルマー司令官の前で膝をつき、息を切らせながら報告する。

「バレッド州方面より帝国軍が来襲。すでにワーダン砦が陥落したもようにございます」

「バカな!? なぜバレッド州から帝国軍がくるのだ!?」

 バルマー司令官は酷く狼狽して伝令に聞くが、伝令もその理由まではは分かっていなかった。

 だが、アドレス大佐は非常に危険な状況だと判断し、バルマー司令官に撤退の上申をしなければ味方が全滅しかねないと考えた。

「バルマー司令官。撤退を上申いたします。傷口が大きくなる前にヘルネス砦へ撤退いたしましょう」

「そんなことをすれば、ツバス砦、サラメ砦、フォルド砦が敵の手に落ちてしまう。そうなったら、ヘルネス砦は孤立無援になるぞ!」

「さればでござる。サラメ砦を放棄してその兵をフォルド砦に移動させ、フォルド砦を死守させましょう。フォルド砦は四砦の中で最も強固な砦なれば、本国からの援軍が来援するまで持ちこたえてくれましょう」

「ぐぅ……。仕方がないか。サラメ砦を放棄し、フォルド砦を死守する。また、我らはヘルネス砦へ撤退する。殿(しんがり)はボランズ中佐に任せる!」

「はっ!」

 軍首脳陣と諸侯がその命令に従う。


 このままここで戦っても敗戦は免れない。それどころか四砦だけではなく、ヘルネス砦までも落とされてしまう。そうなっては、帝国軍を止めることが難しくなってしまう。諸侯もそのことを知っているため、誰も撤退に否を言わなかった。

 だが、問題がある。帝国軍が四砦のうち三砦を手に入れてしまうと、それに接する貴族の領地が危険に曝されてしまうのだ。

 ヘルネス砦を守ることで帝国軍を抑えることができている分にはよかったが、三砦が落ちればほぼ間違いなく貴族たちの領地が荒らされてしまうだろう。

 バルマー司令官はそのことに考慮しなければならないのだ。

「周辺貴族の領地へ伝令を。ただちに守りを固めよと」

「はっ」

 バルマー司令官に配慮できるのはここまでで、この場に集った貴族を領地へ帰すことは考えていなかった。

 もし、貴族を領地に帰しても帝国軍に各個撃破されてしまうだけで、被害を余計に広げてしまうからだ。

 無駄に戦力を消耗することになるため、貴族を領地へ帰すことはできないのである。


 大きな被害を出しながらも、バルマー司令官たちはヘルネス砦に撤退した。

 1万ほどいた兵は、7000ほどにまで減ってしまった。

 だが、このままヘルネス砦にこもっていれば、なんとかなる数だ。

 ただし、そんなことは貴族たちには関係なく、自分たちは領地へ戻ると言う貴族が出だした。

「我らは、自領を守る義務がある! 戻らせてもらう!」

「待たれよ。今から戻っても間に合わぬ。それどころか、帰還途中で帝国軍に待ち伏せされて全滅するのが落ちですぞ」

「くっ……」

 誰もがそう思うだけに、反論ができない。だが、時には理性よりも感情が勝ることがある。

 数名の貴族がヘルネス砦を出て自領へ戻ってしまったのだ。


「フォレスト殿、今回の帝国の動きをどう思われるか?」

 ロベルト・アーシア・アムント六等勲民が憔悴した表情でフォレストに聞いてきた。

「左様ですな……。おそらく……、おそらくですが、バレッド州からやってきたのでしょう」

「バレッド州から……? しかし、バレッド州は……」

「海でしょうな」

「海……か」

 アムント六等勲民も、その可能性は考えていた。しかし、帝国の海軍は精強でもなく数も大したことない。それが海からきたというのは、考えることはあっても信じられない気持ちである。


「しかし、海からとなると、戦力は大したことはないはず」

「いや、そうも言いきれませんぞ」

「どういうことかな?」

「昨年、帝国南部方面軍の規模が縮小されたと、我々は思っていました」

「うむ」

「しかし、その縮小された戦力を海から輸送する準備が進んでいたとすれば、どうですかな?」

「まさか……」

 そのまさかである。それしか考えられないとフォレストは考えていた。


「我々はそういった情報を掴んでいない。掴めなかったというわけか……」

 アムント六等勲民が唸るように言う。

「問題は、バレッド州がどこまで帝国の手に落ちて、どれだけで応援がくるのかということ、いや、援軍は果たしてくるのかということです」

「バレッド州が落ちていれば、援軍は望むべくもないか」

「そうですな」

 アムント六等勲民とフォレストは腕を組んで難しい顔をする。


 この7日後、バレッド州の七割が陥落した報がヘルネス砦に届いたことで、ヘルネス砦内の諸侯が大騒ぎになったのは言うまでもない。


 

<<お願い>>

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