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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
九章

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063_初任務

 


「アレクサンダー・デーゼマン中佐、出頭しました」

 指令室に出頭したアレク。指令室の中には、司令官のホルス・ブスカス少将、参謀官のアルスト・カーマス大佐、そして初めて見る顔の佐官がいた。

「ご苦労、かけてくれたまえ」

 司令官の言葉でアレクが椅子に座ると、参謀官が口を開いた。

「デーゼマン中佐、この者は参謀本部のキリング少佐だ」

 参謀官の言葉使いはいつものそれとは違った硬いものだった。

「アルフレッド・キリング少佐であります」

 キリング少佐の敬礼を受けてアレクは座ったまま敬礼を返す。アレクのほうが上官なので座ったままでも失礼にはならない。

「アレクサンダー・デーゼマン中佐です。よろしく」

 敬礼を解いて、簡単に挨拶する。

「挨拶が終わったね。キリング少佐、説明を」

「は!」

 司令官に促されてキリング少佐は机の上に地図を広げた。

 その地図はソウテイ王国の東部に位置するサダラード州のものであった。


「20日ほど前からサダラード州東部の魔物生息地で不穏な動きがあり、参謀本部は情報の収集を行っていました」

 キリング少佐の説明は、サダラード州東部にある森林部で魔物の活動が活発化しているというものであった。

 この山間部は隣国のトルスト教国との国境付近にあって、トルスト教国が魔物の活発化に関係している可能性があるらしい。


 ここで問題になるのがトルスト教国の存在である。

 トルスト教国は必ずしもソウテイ王国と良好な関係ではない。それどころか、これまでに何度か衝突したことのある国で、テルメール帝国同様にソウテイ王国の敵国の1つである。

 場合によっては魔物の他にこのトルスト教国と衝突する可能性もある。


「デーゼマン中佐には部隊を率いて先行してほしい。我らも軍をまとめてから後を追う」

 軍属になってしまった時からアレクはこういう任務があると覚悟をしていた。

「魔物が生息地から出てきた時には、現地の東部方面軍と協力してこれを駆逐し、トルスト教国軍の進軍があったら同じく東部方面軍と協力してこれを迎え撃ってほしい」

 司令官は援軍が到着するまで持ちこたえてくれればいいと続けた。

 ただ、司令官はトルスト教国との戦争に発展するような事態にはしたくない。これは司令官だけではなく、軍部上層部の総意でもあった。

 現在のソウテイ王国は北にテルメール帝国という大きな敵がいる。だから教国と戦うと軍が疲弊するし、戦力を集中できないのだ。

 元々、ソウテイ王国は戦力の集中、命令権の統一ができていないため、防衛に専念しているのが実情だ。

 騎士団はプライドが高く、自分たちのほうが軍よりも上であり、軍は騎士団の指揮下にあればいいと考えている貴族の子弟が多い。

 逆に軍は騎士団の下請けになるつもりはなく、共に牽制しあっている。残念なことにこれがソウテイ王国の実情なのだ。


 ▽▽▽


 神帝暦619年8月。

 アレクは部隊を率いて王都北駐屯地を発った。

 従うのは、アレクの従者であるカムラ特務大尉、オウエン特務中尉、ゲーデス特務中尉、ラクリス特務少尉、ソムン特務曹長、副官にベイリー少尉、騎馬担当副隊長のマッタンホルン中尉、魔術担当副隊長のアマナウ中尉、その他28人の隊員である。

 アレクはラクリスが操縦するアースリザードに乗り、その周りにカムラとオウエン、ベイリー少尉がいて、小隊はアレクを取り囲むように進んでいる。

 マッタンホルン中尉は4騎の騎馬を引き連れて先行し、街道付近の偵察を行っている。


「隊長殿」

「なんですか、アマナウ中尉」

 アレク同様に2人乗りのアースリザードの後部席に乗ったアマナウ中尉が、アレクに話しかけてきた。

 鼻の頭が赤いことから今朝まで酒を呷っていたのが分かる顔である。

「トルスト教国が関与していたらどうするつもりですか?」

「どうしましょうか? アマナウ中尉は何かいい案を持ってないですか?」

「しがない中尉にそんな政治的な考えがあるわけないじゃないですか。ははは」

「そうですか? それは僕も同じなんですけどね。ははは」

 2人して笑って話すがアマナウ中尉の目は笑っていない。

 アマナウ中尉としてはぽっと出のアレクをまだ認めていないのだろう。


 騎馬とアースリザードの混成機甲科魔術小隊の移動速度は歩兵のそれとはまったく違った。アースリザードの速度に合わせているので騎馬だけの編成よりも遅いが、アースリザードはパワーと持久力に定評がある。

 アースリザードだけの編成だと1日走り続けて200キロメートル以上の移動ができるが、騎馬はそこまでの距離を移動できない。

 瞬間的な速度であれば騎馬に勝てないが、アースリザードは同じ速度で半日走り続けることができるのだ。しかも二人の兵士と多くの物資を積んでそれだけの移動ができるのである。騎馬は兵士一人とわずかな荷物を運ぶことしかできない。そこにアースリザードの強みがある。


 今回、アレクの機甲科魔術小隊は騎馬とアースリザードの混成部隊になっている。騎馬には荷物を積まずゆっくりと進み、1日で60キロメートルほどを移動した。

 騎馬を使い潰すのであればもっと距離を稼げるが、起伏があって整地されていない道を進むのは馬にも負担が大きいので、これだけの距離を稼げたのは優秀だと言えよう。通常だと1日で40から50キロメートルほどが移動距離なのだ。


「アレクサンダー様、某とゲーデスとソムンで三交代で見張りを指揮します」

「はい、お願いします」

 オウエン特務中尉の報告にアレクは笑顔で答え、焚火をアレク、カムラ、オウエン、ベイリー少尉、マンハッタン中尉、アマナウ中尉が囲んだ。

 孤児だったソムンに見張りとはいえ兵の指揮ができるのかと思うが、この数日でソムンは兵士たちに馴染んでいた。

 ソムンのスキルは獣育成という珍しいもので、これは騎馬でも魔獣でも育成しやすくなるスキルである。そのため、騎馬やアースリザードの世話を兵士たちに教えるうちにソムンは兵士たちと親しくなったのだ。

 こういうところは物怖じしないソムンの性格もあるのだと思われる。


「この調子でいけば、あと二日で東部方面軍と合流できそうです」

 目的地はトルスト教国との国境近くの森林地帯だが、シュテイン州にあるデーゼマン領にいくよりはるかに近い。

 ただ、近いと言っても歩兵は三日では東部方面軍と合流することはできないので、機甲科魔術小隊の機動力が優れていることが証明されたことになる。


 二度ほど魔物と遭遇したので戦闘はあったが、概ね予定通りに進んだアレクたち機甲科魔術小隊は、王都を発って三日後の夕方には東部方面軍と合流できた。


「アレクサンダー・デーゼマン中佐、ただいま到着しました」

 アレクは敬礼し、命令書を東部方面軍の司令官に手渡した。

「デーゼマン中佐、ご苦労。今日は遅いのでゆっくり休んでくれ。明朝、軍議を行う」

「は。配慮いただき、ありがとうございます」

 黒髪を短く刈り揃えた東部方面軍の司令官は軍人に多い大柄で筋肉質だ。大きいはずの執務机が小さく見え、年齢は40歳ほどだろうか。階級は少将である。

 そんな東部方面軍の司令官の名は、ゲバン・ガバラン。八等勲民家の当主である。

 帝国と違って王国では方面軍の司令官職はそれほど地位が高いわけではないので、この司令官の出身が下級貴族ということを考えれば、出世は早くも遅くもないだろう。


 翌朝、アレクとオウエンの姿は会議室の中にあった。

 会議の内容は魔物の大群が3日後に山を下りてくるというものと、そしてトルスト教国の関与については未だ不明であるということであった。

 すでに魔物と教国の両方に対応するために、防御陣地を築いている東部方面軍だが、その防御陣地は馬防柵と空堀を巡らせるくらいである。


「デーゼマン中佐は土魔術の達人だと聞く、防御陣地の構築に尽力してもらいたい」

 ガバラン司令官としては、魔物の大群だけでも厄介なのに、教国まで攻めてきたらシャレにならないと考えている。

 だから王都で有名なアレクを派遣してほしいと上申したのである。若き宮廷魔術士アレクサンダー・デーゼマン。ガバラン指令官の希望である。

「承知しました。さっそく防御陣地へ向かいます」

「すでに2千の兵が詰めて防御陣地を構築しているが、2日後には私も3千の兵を率いて向かう」


 方面軍の拠点であるカムライルの町から東に四キロメートルほどのところに防御陣地は築かれている。

 アレクはその防御陣地へ向かうのであった。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 物語的に必用なんだろうけど、アマナウは軍いたら即処分されてもおかしくないレベルなので、もう少しキャラクターどうにかしたほうが良いのではないかなーと思ってしまいます。
[一言] たぶん二日後には完成しているw
[一言] 防御陣地どころか砦にならない?
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