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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
九章

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062_初任務

 


 賭けに勝ったアレクはその金で部下に酒を奢った。

「隊長、ありがとうございます! こんなに美味い酒が飲めるなんて、俺、一生隊長についていきます!」

「ばーか、隊長はすぐに出世するんだから、お前なんてどこかの地方に飛ばされて終わりだぜ。あははは!」

 軽口が飛び交う中でアレクも飲み慣れない酒に口をつけていた。


「隊長、そんな飲み方じゃぁ、飲んだことにはならないぜ!」

 アマナウ中尉が右手に肉を左手に大きなジョッキを持ってアレクに絡んできた。

 すでにでき上っているアマナウ中尉は上官に対する敬意などはなく、ラクリスは口にはしないがアマナウ中尉を親の仇のように睨んでいる。

「アマナウ中尉、僕はあまり酒が飲めないのです」

「なんだ、隊長のくせに。酒くらい飲まないと部下にバカにされるぜ!」

「そうですか? うーん、酒が飲めないと……」

「そんなに悩まなくていいぜ! 俺が隊長の分まで飲んでやるからよ! あははは!」

 陽気に大声でアレクに話しかけるアマナウ中尉にカムラたちはいい顔をしない。


 酒盛りが終わった翌日、アレクはあまり酒を飲んでいないことから二日酔いもなく、やや寝不足だったが起きるのには問題なかった。

 それはカムラたちも同じで酒量を考えて飲んでいたので、アレクより先に起き出して今日の準備をしていた。

「おはようございます、アレクサンダー様」

「おはよう、ラクリス。今日もいい天気だね」

「はい、雲1つない晴天で気持ちよい日です」

 ウサミミがピコピコと動いていることから、ラクリスは本当に気持ちのよい日だと思っているようだ。


 アレクが執務室へ赴くと、すでにベイリー少尉とマッタンホルン中尉が待ち構えていた。

「「おはようございます、中佐殿」」

「2人ともおはよう。アマナウ中尉はまだ寝ているのですか?」

 2人は顔を見あわせて苦笑いをした。

「アマナウ中尉は……おそらくどこかで飲んでいるかと……」

「アマナウ中尉は聞いていたように自由奔放な方のようですね。ははは」

 アレクは笑うがカムラたちはそうではない。

「アレクサンダー様、笑いごとではありません。アマナウ中尉が今でも飲んでいるのであれば、明らかな軍規違反です」

 カムラが代表して苦言を呈す。


「こんな若造がいきなり隊長として赴任してきたのです。納得いかない部分もあるのでしょう」

「そのような気持ちがあっても飲み込むのが軍人です」

「カムラのいうことも分かりますが、大目に見てやりましょう。それより今日の予定をお願いします」

 アレクは無理やり話題を切り替え、ベイリー少尉に話を振った。

「はい、本日は参謀官のカーマス大佐と面会し、司令官殿と参謀官殿のお二人と昼食を摂ることになります」

 この王都北駐屯地のトップスリーによる昼食会は、情報交換の場として使われている。

 軍の中ではこういったことは普通に行われているのだ。


 昨日、少しだけ見た訓練風景を考えると、すぐに訓練内容を見直さなければならないとアレクは思っているので、訓練内容の見直しをカムラたちに相談した。

「アレクサンダー様、小隊の訓練はオウエンとゲーデスに任せてよろしいかと思います。本当は拙者も訓練をしたいのですが、アレクサンダー様の従者筆頭なので他の部隊長たちに顔見せをしておく必要があると思いますので」

「……分かりました。オウエン、ゲーデス、訓練を見直してください。マッタンホルン中尉、構いませんね?」

「カムラ特務大尉に負けた身です。デーゼマン流の訓練を否定することなど、できようはずがございません」

「ありがとうございます。では、オウエンとゲーデスはマッタンホルン中尉と共に訓練をお願いします」

「「「はい!」」」

 カムラとの模擬戦に負けたマッタンホルン中尉だったが、裸で訓練場の中を走ることはしていない。

 マッタンホルン中尉は約束だからと裸になろうとしたが、あれは模擬戦であって訓練なのだからとアレクが認めなかったのだ。


 マッタンホルン中尉たちと別れたアレクは参謀官であるカーマス大佐の元に向かった。

 カーマス大佐の執務室へ入ると、アレクたちは敬礼をする。

「アレクサンダー・デーゼマン中佐であります。昨日赴任いたしました」

「アルスト・カーマス大佐よ。よろしくね」

 随分と特徴的な喋り方の人物であり、見た目もひょろっとして軍人には見えないというのがアレクの感想である。

 このカーマス大佐は軍務大臣子飼いの人物で、大きなミスがなければ今年のうちに准将に昇進するのではといわれている人物だ。


「アレクちゃんって呼んでいいかしら?」

「え? あ、はい、お好きにどうぞ」

 子供のころにはちゃんづけで呼ばれたこともあったが、最近はそのように呼ばれたことはない。それが39歳の男性から呼ばれるとは思っていなかったので、アレクは少し驚いた。

「ありがとう。それじゃぁ、アレクちゃんのことは軍務大臣閣下やオイゲンス王国軍統括幕僚から聞いているわ。困ったことがあったら私に言ってね」

「あ、ありがとうございます」

 リーリアの傭兵仲間にもこのような人物はいたのであるていどは慣れているが、まさか規律の厳しい王国軍の中にいるとは思ってもいなかった。

 この時のアレクは、目の前にいるカーマス大佐と長いつき合いになるとは思っていなかった。

 その後、司令官のブスカス少将とカーマス大佐の2人と食事を共にしたアレクは、午後から各部隊長の挨拶を受けて夕方まで執務室から出ることはなかった。


「ご苦労様です。本日の予定は全て終了しました」

 ベイリー少尉が無表情に今日の予定の終了を宣言した。

「ベイリー少尉、明日の予定はどうなっていますか?」

「明日は本日同様に司令官殿と参謀官殿と昼食を共にする以外は、本日非番だった部隊長5名の挨拶が午後に予定されています」

 基本的に昼食は3人で摂ることになる。

 中佐といえば幹部予備軍であり、この王都北駐屯地の中では3番目に高位の階級だから情報共有という名目でこのような昼食会があるのだ。

 これは他の駐屯地でも同じことが行われているし、騎士団でも幹部が昼食を共にすることは多い。


 ▽▽▽


 アレクが王都北駐屯地に赴任して数日が経過したある日。

 訓練を視察していたアレクの元に、下士官が走り寄ってきて敬礼をした。

「申し上げます。ブスカス司令官殿がすぐに作戦指令室へお越しくださいとのことです」

 通常の呼び出しであれば司令官の執務室のはずだが、今回は作戦指令室ということもあってアレクは何ごとかと緊張した。

「ご苦労様。今から向かいます」

「は! 失礼いたします」

 下士官は踵を返すと走って戻っていった。


「カムラとベイリー少尉はついてきてください。ここはオウエンに頼みます」

「はい」

「はい」

「はい、お任せください」

 アレクは作戦指令室へ向かった。

 カムラとベイリー少尉を廊下で待たせて作戦司令室の中に入ると、司令官と参謀官の他に少佐の階級章をつけた壮年の男性が待ち構えていた。


 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] アレクって優しさと甘さを履き違えてるよな
[一言] ありゃ?また軍部が失態やらかしたん?(間違った信頼感
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