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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
七章

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051_移民政策

 


 ヘリオの領主館は小高い丘の上に建っているが、その丘の南側の中腹には迎賓館が建っている。

 これは元建築魔術士のアレクが気合を入れて建てた迎賓館であり、外観は規模の小さい宮殿である。

 この丘には他にも色々な建物がある。

 まずはガラス工房である。このガラス工房はアレクに頼らずにガラス製品を生産するためのものである。

 今はジジリス・アーデンの次男であるカズンが責任者としてガラスの生産の指揮を執っている。

 アレクの工房、カーシャとエリーの薬工房、ザクルの鍛冶工房もある。

 また、宮廷魔術士だったジャックの研究室もあって、それは東側の中腹よりもやや下にある。

 ジャックが王都からヘリオに移り住んで以来、その研究室から外に出たのは数えるほどである。

 ジャックの研究室は倉庫用に建てたものだったが、広々としたスペースが気に入ってジャックは引きこもっているのだ。

「建物なんぞ風雨が防げればなんでも構わんのである。むしろ広い方が助かるのである」

 そう言って王都から持ってきた本や研究用の器材を倉庫だった建物に持ち込み占拠してしまったのである。

 倉庫は他にも建設していたので、これでいいと言うのであればとクリスもそれを受け入れることにしたが、なんとも変わった男である。

 そんな倉庫ではなく研究室では、時々大きな音が鳴り響き窓から煙が上がることがある。

「あれは、大丈夫なんだろうな……?」

「大丈夫でしょう……」

 フォレストが煙の上がっている研究室を領主館の窓から眺めてクリスに確認するが、クリスは少し諦めがちに答えるのだった。


 そんなある日、ジャックが領主館へやってきた。

「あら、珍しいわね。今日はどうしたのかしら?」

 好き勝手しているジャックだが、名目上の上司はクリスである。

 だからジャックが何かを要望したり、報告したりするのはクリスに対してである。

「うむ、これを見てほしいのである」

「……これは?」

 ジャックは小指の先ほどの大きさの白銀に輝く金属の塊をクリスに渡した。

「ミスリルである」

「たしかにミスリルですね。これを私に見せるということは、ジャックの研究に関連しているのですね?」

「左様、それは我が錬金術の粋を結集させた代物である!」

 ジャックは鼻息荒くクリスに顔を近づけた。

「錬金術……」

 ジャックの行動にいちいち反応していては疲れるので、顔が近いことには無反応のクリスだったが、ミスリルと錬金術と聞いて少し表情を変えた。


「すると、このミスリルは錬金術で創り出したと言うのですね?」

「その通りである! それはデーゼマン領で産出された銀を錬金術でミスリルにしたのである!」

 クリスは目を大きく見開いた。

「問題は、銀が10に対して、できるミスリルが1だということである」

 銀は貴重な金属であり、その価値から硬貨にも使われている。

 ジャックはミスリルを創るのに、その貴重な銀を消費すると言うのだ。しかも、10分の1の質量になってしまうという。


「銀の他に必要な材料は何かしら?」

 クリスは冷静に質問した。内心は少しドキドキである。

「材料は銀だけである」

「ならば、問題ありません」

 クリスは銀が10分の1になっても、まったく問題ないと考えた。

 金やミスリルに比べ銀の価値は低い。

 ソウテイ王国内であれば、金1グラムに対して銀40グラム、ミスリル1グラムに対して銀230グラムの価値が等価なのである。

 重量が(素材)の10分の1になっても、ミスリルであれば23倍の価値で売れることを意味しているのだ。

「ただし、アレク殿の魔力が必要であるのだ」

「アレクの魔力? それはどういう意味ですか?」

 クリスは怪訝な表情をし、そのブラウンの瞳でジャックを見つめた。


「銀を錬金術でミスリルにするには、膨大な魔力が必要なのである! 我の魔力ではミスリルに錬金するだけの魔力が得られないのである!」

「なるほど、だから膨大な魔力を持っているアレクの力が必要だと言うのですね?」

「左様である!」

「しかし、ジャックでも時間をかければ必要な魔力量を銀に込めることができるのでは?」

「それができればよかったのであるが、銀に魔力を込めてもすぐに魔力が霧散してしまうのである。であるから、一気に膨大な魔力を注ぎ込む必要があるのである!」

 この説明でクリスは納得して、さらに疑問が浮かんだ。


「多数の魔術士によって銀に魔力を注ぎ込むことで、アレクの代用ができると考えていいのかしら?」

「それについては考えたのであるが、まだ試していないのである。そもそも某と同等の魔術士が最低でも10人は必要になると思われるのである。魔術士を集めるだけでも難しいのである」

 クリスは頷き、顎に手を当てて考えた。

「ジャック並みの魔術士が10人ですか……」

 ジャックは宮廷魔術士の中でも上位に入る魔力量だった。

 そのジャック並みとなれば、簡単に集めることは難しいだろう。

 しかし、試してみる価値はあるとクリスは思った。


「分かりました。アレクにも伝えますので、ミスリルの生産を進めてもらえますか」

「それは構わないのである。ただ、お願いがあるのである」

「どのようなことですか?」

 ジャックはクリスに研究用の設備を購入してほしいと頼んできた。

 クリスとしても、ミスリルが創れるのであれば、研究設備くらい安い物である。

 クリスは研究設備のリストを提出するように指示してジャックを下がらせた。

「まさか銀からミスリルが創れるなんて思ってもいなかったわ。ジャックをスカウトしてよかったわ、うふふ」

 銀よりもはるかに価値のあるミスリルを本当に創ることができるのであれば、ジャックの研究に多少の金をつぎ込むのは問題ないと、誰もいない部屋の中でにやけるのであった。


 

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