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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
四章

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032_防衛

 


 神帝暦617年10月。

 デーゼマン家と帝国軍との戦いは終わった。

 まだヘルネス砦では王国軍と帝国軍が睨み合っているが、デーゼマン家としてそちらに援軍を送る判断は今のところない。

 今回、帝国軍は死者450人、重傷者150人、軽傷者230人以上を出して瓦解した。

 対してデーゼマン家は死者はなく重傷者が1人、軽傷者は13人である。

 敵の重傷者は治療しても生きられるか分からないので、苦しみを長引かせないために殺すのが戦後処理の常である。

 だから捕虜は軽傷者と無傷の兵士を合わせたおよそ300人である。

 1000人もの帝国兵士のうち、900人が戦死するか捕虜になったのだから、デーゼマン軍は圧倒的な戦果を挙げたと言っていいだろう。


 デーゼマン家の防衛戦争は終わったが、本当の意味での終戦はまだである。

 死んだ帝国兵の死体の処分をしなければならないし、死肉や血の臭いに誘われて森から魔物が出てきているので駆除も必要だ。

 死体からは武器防具だけではなく、金になりそうな物をより分ける。今回は新しい領地も得られない防衛戦なのでこういった物を得る権利が兵士にはあるのだ。

 ことが終わって国との話し合い次第ではそれなりの金銭が得られるかもしれないし、捕虜の金銭的交換もあるだろうから、今回の死体漁りは命をかけて戦ってくれた兵士たちへの一時的な恩賞である。

 そうすることでデーゼマン家の財政的負担を減らす意味もあるのだ。戦争ではこのようなことが普通であり、デーゼマン家だけの話ではない。


 防衛戦が終わってから6日後、逃げた帝国兵が領内で悪さをしないように敗残兵狩りを指揮していたリーリアが帰ってきた。

 逃げ出した帝国兵の半分ほどは森に入ったことから放置したが、半分ほどは領内を逃げ回っていたのでリーリアと騎士ハルバルトがそれぞれ部隊を率いて掃討戦をしていたのだ。

 今回の戦いで騎士ハルバルトはベルムーイ村の守りのために、ヘリオの町に入っていなかったことでフラストレーションがたまっているようで、嬉々として帝国兵狩りを行った。

 そこで20人ほどの敗残兵を捕虜にして、30人以上を殺してきたのだ。惨いようだが、抵抗するなら殺すしかない。

 逃がすと開拓村が襲われたり、商隊や旅人を襲って被害が出ることも考えられるからだ。

 もちろん、抵抗せずに捕虜になれば少なくとも命の保証はしている。


 戦いから10日がたった、秋のカラっとした空気が気持ちよい晴れたある日。

 帝国兵の掃討も打ち切られ、魔物の駆除もひと段落がついて、やっと日常に戻りかけた日のことだ。

「お館様、王国軍が……」

 フォレスト、クリス、ウイル、アレクが書類仕事をしていたところに、王国軍の援軍が到着したと報告があった。


「今さらね」

 クリスは今頃きても遅いと不快感を隠しもしない。

「しかし王都からの援軍にしては早いな? まさかヘルネス砦からか?」

 王都からこのヘリオの町までは馬車で7日がかかる。

 援軍要請をして、軍を組織して、行軍してくるのに、王都からここまで12日で到着できるとはとても思えない。

「とりあえず、応接室にお通しするように」

 フォレストはアレクにも一緒にくるように言うと腰を上げた。


 応接室にはフォレストがよく知った顔があった。

 応接室でソファーに座っていたのは、王都にいた時に何度かフォレストを訪ねてデーゼマン家を訪問したことがある、オイエン・ブリッグス四等勲民だ。

 緑髪翡翠色の瞳で2メートルを越える大柄の偉丈夫で、顔もよく王都ではご婦人たちと浮名を流していた美男子でもある。

「そうか、貴殿が」

 フォレストは短く呟いた。


「久しぶりだな、フォレスト殿」

「オイエン殿も息災で何よりだ」

 立ち上がったブリッグスとフォレストが握手をするとソファーに座る。

 ブリッグスは王国第三騎士団を率いている団長である。

 フォレストとは騎士団の同期入団で、四等勲民家の次期当主だったブリッグスはどんどん出世した。

 平民出身のフォレストは現在十等勲民として領地を拝領して、貴族の一員となったが身分の差は歴然だ。

 だが、騎士団の団長であり上級貴族の四等勲民であるブリッグスは、ある作戦行動でフォレストに命を救われてから、親交を温めていた間柄である。


「聞いたぞ、帝国軍を殲滅したそうだな」

「町の防衛は私の管轄だからな。全力で防衛したさ」

 ブリッグスは苦笑いをした。

「随分と早いが、王都からか?」

「そんなわけないだろ。アルガス州で軍事演習をしていたところに援軍の要請があったのだ」

 アルガス州というのはヘリオの町があるシュテイン州と、王都のあるマゼランド州の間にある州である。

 ただ、騎士団が演習をするのはマゼランド州だったかもしれないが、勝手にシュテイン州へ騎士団を動かすことはできないはずだ。


「なるほど。……軍務卿あたりの命令か?」

「その通りだ。あの方も今回の帝国軍の動きを捉えきれていなかったのだ。だから我が王国第三騎士団を軍事演習と称して、アルガス州へ送っておいて様子を見ていたのだ」

 どうやら軍務卿が帝国軍の来襲に備えて準備をしていたようだ。

 しかし、人選がなんとも渋い。

 軍務大臣がフォレストとブリッグスの間柄を知っていて、この人選をしたのであれば国内の情報網は正常に機能しているようだ。あくまでも国内の情報網であって、対帝国の情報網は大したことないが……。

 ただ、デーゼマン家がここまで早く帝国軍を殲滅するとは思ってもいなかったので、中途半端な対応になってしまった。

 そして何より、援軍が今の時期に到着していたのでは、普通であればデーゼマン家の領内は大きな被害を受けていたはずである。

 実際には圧倒的な勝利で終わっているが、被害があってからの援軍になんの意味があるのだろうかと、アレクは思うのであった。


 

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