154_帝国激震
一騎討の代表者は、スバレン九等勲民とフリオのどちらかを選出することになった。
スバレン九等勲民の力は一部の貴族には知られているが、それ以上にフリオの武威は王国中に知られている。なにより王太子がフリオのことを高く評価しているため、一騎討ちの代表はフリオという声が多かった。
「それならば、スバレン九等勲民とデーゼマン八等勲民を競わせ、一騎討ちの代表者を選ぶのがよろしいかと存じますが、王太子殿下のお考えはいかがでしょうか?」
フォルム・アリスタイン五等勲民が、王太子の意見を聞いた。この細身の壮年のアリスタイン五等勲民は王太子の側近の一人である。諸侯軍の軍監を命じられ従軍していたが、あの敗戦の混乱によって息子が行方不明になっている。軍監の役目は命令違反や違法な軍事行動があった場合、上司である王太子に報告するものであり、軍の指揮権はない。そのため、帝国領土に進軍した諸侯軍を止めることができず、そのまま従軍するしかなかった。
諸侯軍を率いていたソルダーク三等勲民は、自分以外は家来、否、奴隷に等しいと思っている人物である。そのため、アリスタイン五等勲民の声など聞くことはなかった。これは誰が軍監であっても変わらない事実だ。それでも、王太子の側近であるアリスタイン五等勲民の声なら、傲慢なソルダーク三等勲民も少しは耳を傾けるだろうと思われていた。結果は皆が知るものであるが。
アリスタイン五等勲民の息子はまだ発見されていない。死んでいるのか、捕虜になっているのか、それともまだ逃げ回っているのか。それでも側近として王太子を補佐しなければならない。
「だが、一騎討ちを行い、二人が怪我でもしたら本末転倒であろう?」
「であるのであれば、決をとりますか?」
「うむ。明日、決をとるとしよう。また、二人の強さを知らぬ者もいよう、その者は棄権することを許すが、後になって不平不満を言うことは許さぬ」
王太子の言葉に皆が頷き、ゲルバルドが呼ばれた。
休戦の条件の確認が終わり、ゲルバルドはキミリス城を後にした。
一騎討ちの日取りは二日後の日の出と共に。それまでは双方共に軍事行動を控え、準備を行う。
一騎討ちの場所はキミリス城と帝国軍が布陣している中間点で、一騎討ちの代表者と付き人が二人、そして見届け人を二人出すことで決まった。
▽▽▽
ブリエス少将がバーレン特別州の貴族たちを集めた。ブリエス少将はバーレン特別州の貴族たちと顔見知りであり、彼らが帝国領に進軍した時も、無理に引き留めることはしなかった。
「一騎打ちには必ず勝たねばならぬ。だが、デーゼマンを代表にするのは、気が進まぬ」
この発言で分かるように、ブリエス少将はデーゼマン家をよく思っていない。彼自身は六等勲民であり、アレクが五等勲民に叙されたことも、自分よりも軍の階級が上なことも許しがたいことなのだ。デーゼマン家、特にアレクのデーゼマン本家のことを、成り上がり者と蔑んでいる。
集められたバーレン特別州の貴族たちは、王家の命令に背いてこの地に移封された者たちばかりだ。その旗頭とも言えるブロス・カルバロ・アルホフ元三等勲民を討伐されたことで、泣く泣く移封に同意した者たちなのだ。
つまり、ここに集まった貴族は、反アレクの気持ちが強い者たちなのである。
「しかし、フリオ・デーゼマンの強さは、誰もが知っていることです。対してスバレンの強さは未知数ですぞ、ブリエス殿」
「いや、スバレンの強さも相当なものだ。あやつの武功は、デーゼマンの影に隠れて目立っていないが、帝国の死神の鎌と言われたモニゲットを討ち取っているのだ」
帝国のデスサイズといえば、一騎当千の猛者であった。デスサイズに身内を殺された王国貴族も少なくない。そのため、王国にもその勇名は轟いていたが、そのデスサイズをスバレンが倒しているのであれば、その強さに間違いはないだろう。
「なんと、あのデスサイズを討ち取っているのですか! それであれば、デーゼマンなどに頼らずとも、スバレンに任せてもよろしいでしょう」
こうして、バーレン特別州の貴族のほとんどが、スバレン支持に回った。また、スバレン支持のバーレン特別州の貴族たちが、ロビー活動によってスバレン支持を広げていく。
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