115_新領地(新天地)
お久しぶりです。
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アレクは、拝領したバレッド州のケール郡とセップ郡の視察を終えて、ヘリオ町に戻った。
ラーレ、フォレスト、リーリア、カーシャ、クリス夫妻、エリー夫妻、ロア夫妻、そして先に帰っていたフリオとその妻のセーラが館の入り口で待っていた。
「無事のご帰還、お慶び申し上げます」
ラーレが代表して、アレクに挨拶をする。
「なんとか帰ってこられたよ。留守の間、何もなかったかな?」
「はい。義父様を始め、皆さん健やかです」
アレクは、ラーレの答えに頷き、微笑む。
その後ろには、最後までつき合わされたマリアが、疲れ切った顔で佇んでいた。
その日は、家臣を集めて大宴会が開かれた。
先に帰っていたフリオから、詳細を聞いていた家族と家臣たちは、アレクの出世に喜びの声を発する。
「アレクが五等勲民か。五年前には想像もできなかったことだ。うおおおお! 俺は歌うぞ!」
フォレストは、嬉しくていつもよりも多くの酒を飲んでべろんべろんに酔っていた。
フォレストが、ダンテたち家臣の首にその太い腕を巻きつけて歌い出したので、会場は歌えや踊れやの状態に陥った。
「さすがはあたしの息子だ! アレクならもっと出世するぞ!」
リーリアは、フリオの出世にも大喜びしたが、アレクの出世も同じように喜んだ。
フォレストと肩を組んで、アレクの出世を歌って喜びを表す。
「アレクや、おめでとう。あんたなら、もっと出世すると思うけど、足元をすくわれないようにするんだよ」
デーゼマン家の長老であるカーシャは、孫の出世を喜ぶが、しっかりと足元を固めろと釘を刺す。
「アレク! うふふふ。やっぱりアレクよ。あははは、アレク、アレク、アレク、アレク、アレク」
クリスは、酒を飲みすぎて顔真っ赤にしている。いつもの冷静さの欠片もない姿に、アレクはかなり引き、夫のザクルはどうしたらいいかおどおどしている。
「アレクは、がんばったわ! しばらく、ゆっくりと休んだほうがいいのよ!」
エリーが感情を露わにして、アレクに抱きつく。エリーもまた、酒が入っているようだ。
「アレク! 肉を食っているか!? もっと食べて、大きく育つんだぞ!」
ロアは相変わらずのように見えるが、誰よりも酒を飲んでいるようだ。
「美味しい」
マリアは喧噪には混じらず、ひたすら料理を食べる。
我が道をとことん突き進むのが、マリアなのだ。
「兄さん、僕はどうしたらいいんだろうか!?」
フリオも貴族になった。不安があるのは分かるが、アレク自身は一生懸命に取り組んできただけなので、その結果が今の状況なのだ。
「旦那様。本当にご苦労様でした」
「ラーレにも、寂しい思いをさせてしまったね。しばらくは、一緒にいられるよ」
青色のストレートの髪を腰の辺りまで伸ばした、サファイアのような青い瞳のラーレは、自分もフリオのように戦場へついていきたかった。
しかし、帝国との戦いが起こるという時に、ラーレは身籠っているのが分かった。ラーレはアレクに子供ができたことを伏せ、アレクを送り出した。アレクに心配をさせないためだ。
「この子も、旦那様が無事に帰還されましたので、きっと喜びます」
「子供を授かったのだから、死んでも死ねないよ」
アレクは、ラーレの大きくなったお腹を撫でる。
帝国との休戦協定は今年の四月に失効するため、この子が生まれてすぐに出征する可能性がある。
そうならないように祈るが、こればかりは帝国次第だ。
翌日、遅く起き出したアレクは、館の窓から平和なヘリオの町を眺める。
この平和がいつまでも続くように、アレクは努力しなければいけないと心に誓うのだった。
「旦那様、皆さまがお待ちですので、お着替えを」
「うん」
ラーレが用意した服に袖を通し、アレクは食堂へ向かう。
「お待たせ」
当主が座る場所にアレクが座ると、ラーレがその横に座る。
「それじゃあ、いただこうかね」
カーシャがいつものように、神へ感謝の言葉を述べると、アレクたちも感謝を口にする。
この場に、クリス、エリー、ロアの姿はない。三人には、自分の家庭があるからだ。
その代わり、アレクの妻であるラーレと、フリオの妻であるセーラがいる。
「昼からは、新しい領地のことを含めて、皆で話し合いをするそうだね」
カーシャが話を切り出した。
「うん。拝領したケール郡とセップ郡は、帝国の占領下にあったため、今は復興途中なんだ」
「まあ、領地が増えると、人も増やさなければならないだろうし、しっかりと話し合うんだよ」
「うん、ありがとう。カーシャ母さん」
アレクは、遅い朝食(昼食)を楽しく食べ、少し休憩したら、家族と家臣たちが待つ会議室へ向かうのだった。




