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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
十三章

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113/160

113_新たな任務

 


 アルホフ軍を奇襲して、これを壊滅させたデーゼマン軍。

 アレクは、デーゼマン軍の本隊をそのままバージス副司令官に任せて、自分は教国軍に占領されている土地を奪還して回った。


「兄さん、教国軍を壊滅しました」

「フリオ、それに皆、ご苦労様。休ませてあげたいけど、本来の目的はアルホフ三等勲民の討伐だから、カルバロ郡に向かうことになる。すまない」

「そんなことは、分かり切っていることだから、気にしないでいいよ」

 アレクの言葉にフリオが答える。

 帝国軍との戦いから教国軍との戦いを経て、フリオは多くの兵士たちから信頼される将になっている。

 アレクは弟の成長を見て、嬉しさに目を細める。


「閣下が率いている兵士たちは、常勝無敗のデーゼマン軍の中にあって、最精鋭たちです。このていどのことで、音を上げるような者はおりません!」

 機甲科魔術大隊から、アレク直属の精鋭部隊に配属替えになった、セリーヌ・マッタンホルン大尉が力こぶを作ってみせる。

 マッタンホルン大尉は、アレクと同じ赤毛の大柄な女性仕官である。騎馬を操るその腕は、フリオの下でさらに磨かれて、王国でも並ぶ者なき騎馬兵となっていると、フリオは言う。もちろん、フリオ自身は除外しているが。


 マッタンホルン大尉が言ったように、精鋭たちは強行軍だったが、誰一人かけることなく本隊に合流した。


「申しわけありません。ブロス・カルバロ・アルホフを捕縛できませんでした」

 カルバロ郡に入ったところで合流したアレクに、バージス副司令官が頭を下げた。

「こればかりは、仕方がありません。敵軍を瓦解に追い込めましたので、目標の半分以上は達成できました。ですから、気にしないでください」

 奇襲時に、アルホフ三等勲民を捕縛するか、討ち取ったほうがいいに決まっている。

 だが、アルホフ三等勲民の下に集った貴族は、三割は寝がえり、三割は討死し、二割は捕縛した。残った二割の貴族は、這う這うの体で逃げ隠れしているのだ。

 アルホフ三等勲民が、本拠地であるケルメック城に帰りついたとしても、再び戦力を集めるのは難しいだろう。であるならば、ケルメック城がどれほど堅牢な城であっても、問題にはならない。


 兵士がテントに駆け込んできた。

「何ごとか?」

 カムラが、何事かと問いただす。

「ケルメック城から、使者がやってきました!」

 兵士の言葉を聞き、アレクたち首脳陣は顔を見合わる。

「降伏の使者でしょうか?」

 フリオの言葉に、その場の全員が「あのプライドの高いアルホフが?」と思った。


「何はともあれ、使者をこちらへ。それと、キース殿をここへ」

 アレクは兵士に指示を与えると、使者用の席を用意させた。

 すぐにキースがやってきて、使者がやってきたから立ち会うようにと、アレクが申しつけた。


 しばらくすると、兵士に囲まれた使者がやってきたが、その使者の顔を見た全員が驚いた。

 年齢は三十代後半くらいだと思われるが、金色の髪を短く切り揃えた男装の麗人と言える人物である。アルホフ三等勲民は使者に女性を選んだのか?


「は、母上!?」

 キースの言葉を聞いた、全員が「え!?」と声をあげた。

 キースの母親ということは、アルホフ三等勲民の妻であり、何より国王の妹である。


 キースは席から立ちあがり、母親の前へ転がるように進み出て、膝をついた。

「母上。その髪は、どうされたのですか?」

 どうやらアルホフ夫人は、髪の毛を切ったようだ。アレクは、その意味を測りかねる。

「キース。控えなさい! 自分の立場を弁えるのです」

「母上……。申しわけありません」

「貴方が謝るべきは、私ではなく、ここにおいでのお歴々にです」

 キースを立たせると、キースの無礼を詫び、アレクに許可を得て席に戻す。キースが自分の席に戻ると、アルホフ夫人は最奥に座るアレクに視線を移した。


「私はモンロー・カルバロ・アルホフにございます。謀反人ブロス・カルバロ・アルホフの首をお持ちしました」

「っ!?」

 アレクを始め、その場の全員が息を飲んだ。キースなどは、あまりのことに放心して声も出せない。


「首を、首を持ってきたと申されますか?」

 ホッパー参謀長が身を乗り出して、確認する。

「落ちつきなさい、参謀長」

「こ、これは失礼つかまつった」

 アレクの言葉で、ホッパー参謀長は浮かせた腰を降ろした。それを見たアレクは、アルホフ夫人に視線を移す。


「アルホフ夫人。失礼しました。まずは、席へ」

 アレクに促されると、アルホフ夫人は用意されていた席に座った。

「お初にお目にかかります。私はアレクサンダー・デーゼマン中将にございます」

「お噂は、かねがね。この度は、夫ブロスの不心得により、デーゼマン将軍始め、お歴々に大変なご迷惑をおかけしました。また、国王陛下に対し奉り、申し開きもできぬ不始末を犯してしまい、本来であれば顔を出せた筋ではありませんが、我が子可愛さに出しゃばってしまいました。どうか、デーゼマン将軍には、キースのことをよろしくお引き立ていただければ、これ幸いにございます」

 アルホフ夫人は、席を離れて地面にひれ伏した。アルホフ夫人の、この行動を見た首脳陣たちは騒然とする。

 相手は謀反人の妻ではあるが、なんと言っても元王族であり現国王の妹である。そのアルホフ夫人が、地面にひれ伏して頭を地面に擦りつけたのだ、驚かないほうがおかしいというものである。


「アルホフ夫人。そのようにしていては、話もできませんので、お立ちください」

 アレクの言葉で、アルホフ夫人は顔を上げる。額には土がつき、とても元王族とは思えない姿だ。

「私のことは、いかようにも。しかし、キースのことだけは、なにとぞ!」

 鬼気迫るとは、このことだろう。アルホフ夫人は自分の命さえ捨てて、息子のキースを生かすことを望んでいる。母親とはなんと強きものかと、アレクは息を飲んだ。


「アルホフ家に関しては、国王陛下のお考え次第です。しかし、キース殿は、ブロス殿には与せず、協力的でした。そのことは、国王陛下にしっかりとお伝えいたします」

「デーゼマン将軍の寛大なる処置に、感謝の言葉もありません」

 再び地面に額をつけるアルホフ夫人は、元王族のプライドなどよりも、海よりも深い母の愛によって動いているのだ。


 アルホフ夫人を席に座らせ、話は進む。

 持ってきた首は、ブロス・カルバロ・アルホフ三等勲民のもので間違いなく、それはブロスの顔をよく知っている、キーン十等勲民、ホーレック九等勲民、アットモ十等勲民だけではなく、キースも証言した。

 この後、アレクはアルホフ三等勲民に従った貴族たちの残党を掃討し、ケルメック城に入って王都に使者を出した。

 ケルメック城は、大貴族のアルホフ三等勲民家の居城だっただけあって、巨大で贅を凝らしたものであった。しかもアルホフ夫人は、宝物庫には一切手をつけず、アレクに全てを差し出したのである。



<デーゼマン軍>

 マイラス・バージス少将(副司令官)

 ボルフェス・ドメニス准将(政治将校)

 ゲムズ・ホッパー准将(参謀長)

 クラウス・シュメルツァー准将(編成部長)

 ジョナサン・アルバレス中佐(副参謀)

 トット・エギヌ大佐(機甲科魔術部隊隊長)(大隊長)

 アーマット・ベネジクト少佐(第二歩兵大隊長補佐)


<味方>

 ゼムド・キーン十等勲民(ザイムの町の領主)

 ホーレック九等勲民

 アットモ十等勲民


<アルホフ陣営>

 ブロス・カルバロ・アルホフ三等勲民

 ドマス六等勲民家(アルホフ分家)

 イグリット・マミネス五等勲民(アルホフ分家筆頭)


<アルホフ陣営・不満あり>

 コートジール六等勲民(アルホフ分家)

 ベナンジール五等勲民


<アルホフ陣営・離反>

 キース・カルバロ・アルホフ(アルホフ三等勲民の息子)

 モンロー・カルバロ・アルホフ(アルホフ三等勲民の妻)


<アルホフの城>

 ケルメック城


 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あっさりと終わってしまったけどなにか裏があるのか気になる…
[一言] うーむ、あっさりし過ぎている感が・・・ 書籍が出た時に描きたされるのかな
[気になる点] 討伐迄の流れがごっそり消えてしまった。 不意を衝けば婦人なら暗殺できるかもしれないけど、その後で敵の真っ只中を脱出するのは難しいし、使者として選ばれるのも難しいはず。 追い詰められた…
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