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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
十三章

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112/160

112_新たな任務

始めに、北さん様、レビューありがとうございました。

 


 デーゼマン軍の本隊を率いているのは、副司令官のマイラス・バージス少将である。

「突撃せよ!」

 バージス副司令官は、数で倍するアルホフ軍に対して、突撃を命じた。


 先陣を切るのは、機甲科魔術大隊を率いるトット・エギヌ大佐だ。騎馬やバトルホース隊のようなスピードはないが、アースリザードの背中には魔術筒を構えた兵士がいる。

「ぶちかませ!」

 夕焼けを背にした機甲科魔術大隊が、アルホフ軍の陣地へとなだれ込み、数百の魔術筒から魔術が放たれた。

 機甲科魔術大隊は、アルホフ軍の陣地内を一直線に進み、敵兵士をアースリザードで踏み潰し、魔術筒から放たれた魔術によって、テントや兵士たち、そして物資を焼いていく。


「機甲科魔術大隊に遅れるな!」

 キーン十等勲民、ホーレック九等勲民、アットモ十等勲民の部隊は必死で走るが、機甲科魔術大隊の速度には勝てない。

 ホーレック九等勲民とアットモ十等勲民は、先鋒を務めることでアルホフに与したことを帳消しにしたかったが、より多くの将の首を取ろうと気持ちを切り替えた。


「いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! アルホフの首を取るのだっ!」

 ホーレック九等勲民が声を振り絞って兵に指示を与える。

 アルホフ三等勲民の首を取れば、それこそ陞爵できる可能性もあり天国が待っているが、なんの活躍もできなければ、逆にアルホフ三等勲民に与したことを取り沙汰されて改易ということもある。

 彼にとっては、それこそ生きるか死ぬかの瀬戸際というわけである。

 それは、アットモ十等勲民も同じで、何としても手柄を挙げなければならない。


 だが、彼らは知らなかった。

 彼らの説得によって、アルホフ三等勲民に与していた数家の貴族が、デーゼマン軍に合流したことによって、二人の罪科は帳消しになっているのだ。

 これは、アレクが正式な報告書に(したた)めていて、すでに王太子の下に送られている。

 つまり、二人がここで戦功を挙げれば、陞爵する可能性は十分にある。しかし、戦功がなくても罪に問われることはないのである。

 そんなことを知らない二人は、必死に戦功を挙げようとしているのであった。


「アルホフの首だけを目指せ! それ以外は不要だ!」

 アレクから預かったデーゼマン軍。

 常勝無敗のデーゼマン軍を、自分が指揮したからといって、負けさせるわけにはいかない。

 奇襲までの道筋は、司令官であるアレク(の妹であるマリア)が敷いてくれた。あとは、アルホフ軍を潰すだけである。

 バージス副司令官は、プレッシャーを感じつつも、冷静に指揮を執るように心がけた。


「閣下、お逃げください! デーゼマン軍の奇襲です!」

 アルホフ三等勲民家の分家筆頭であるマミネス五等勲民が、テントに転がり込むように駆け込んできた。

 彼は六十を越えた大柄な人物だが、なりふり構わずアルホフ三等勲民に逃げろと言う。

「バカを申すな! たかがデーゼマンの成り上がり者に、背中を見せろというのか!?」

「味方は大混乱に陥っております。中には、味方を攻撃する者もいる始末、ここは後退して、態勢を立て直すことが肝要にございます!」

「なんだと!? どこのどいつが、味方を攻撃しているのだ!?」

「そのようなことは、後から調べればいいのです! 今は、とにかくお逃げくだされ!」

「えーいっ、忌々しい!」

 状況が悪いのは、マミネス五等勲民の顔色を見れば分かる。酒に酔っているとはいえ、そのていどの判断はできる。

 アルホフ三等勲民は、マミネス五等勲民の説得を受け入れて、逃げることにした。


「なんとしても閣下をお守りするのだ!」

 マミネス五等勲民は、アルホフ三等勲民の緩んだ体を、無理やり馬に押し上げて配下の者たちに命じた。

 そして自分は剣を抜き、本家に対する最後の奉公とばかりに、わずかな兵を率いてデーゼマン軍に抗う。


「イグリット・マミネス五等勲民とお見受けする。某は、デーゼマン軍所属、アーマット・ベネジクト少佐だ。いざ、尋常に勝負!」

 二十代の若いベネジクト少佐は、第二歩兵大隊長補佐の職に就いている。

 彼は、ベネジクト十等勲民家の三男で嫡子ではない。そんな下級貴族出身(・・)というだけの彼が、この若さで少佐なら、出世としては早いと言えるだろう。


「小僧が、出しゃばるな!」

「老害が、大層な口をきく!」

「何を!?」

「何だ!?」

 口撃で始まった戦いは、剣による戦いへ発展した。


 マミネス五等勲民は、六十を越えているが大柄で筋肉質な体つきであり、動きに衰えは見られない。

 一方、ベネジクト少佐は、王国の平均からしたら小柄な細身であり、若い。対象的な二人である。

 黒髪黒目と珍しい風貌のベネジクト少佐は、腰に佩いた刀と言われる。その風貌もあって、アレクの従者であるカムラと、同じ土地の出身者かと思わせる。


 二人の攻防は、一進一退だ。

 マミネス五等勲民が攻めれば、ベネジクト少佐はそれを受け流し、ベネジクト少佐が攻めれば、マミネス五等勲民が受け止める。

 二人の周囲を両陣営の兵士たちが囲み、せわしなく変わる攻守を見守る。


 その頃、アルホフ三等勲民は、混乱する自分の陣地を後にし、本拠地であるカルバロ郡を目指していた。

 つき従うのは、わずか六人だけ。これだけを見れば、一方的な負けであることは、誰の目にも明らかである。

「忌々しい、デーゼマンめ!」

 アルホフ三等勲民は、そう吐き捨てることしかできなかった。



<デーゼマン軍>

 マイラス・バージス少将(副司令官)

 ボルフェス・ドメニス准将(政治将校)

 ゲムズ・ホッパー准将(参謀長)

 クラウス・シュメルツァー准将(編成部長)

 ジョナサン・アルバレス中佐(副参謀)

 トット・エギヌ大佐(機甲科魔術部隊隊長)(大隊長)

 アーマット・ベネジクト少佐(第二歩兵大隊長補佐)


<味方>

 ゼムド・キーン十等勲民(ザイムの町の領主)

 ホーレック九等勲民

 アットモ十等勲民


<アルホフ陣営>

 ブロス・カルバロ・アルホフ三等勲民

 ドマス六等勲民家(アルホフ分家)

 イグリット・マミネス五等勲民(アルホフ分家筆頭)


<アルホフ陣営・不満あり>

 コートジール六等勲民(アルホフ分家)

 ベナンジール五等勲民


<アルホフ陣営・離反>

 キース・カルバロ・アルホフ(アルホフ三等勲民の息子)


<教国軍の城>

 ガルス城、ベニーゼ城、ハープン城、ベミル城


<教国陣営>

 メニサイス・バッカニル中枢卿


 

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[気になる点] 黒髪黒目と珍しい風貌のベネジクト少佐は、腰に佩いた刀と言われる。 酷い二つ名だ? 『腰に佩いた刀』とは。
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