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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
十三章

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108/160

108_新たな任務

 


「失礼します」

「どうした?」

 アレクたちが軍議をしていると、兵士が入ってきてキーン十等勲民に耳打ちをした。

「何? 真か?」

「はい」

 どうしたのかと、アレクたちがキーン十等勲民を見つめる。

「ただ今、城門の前にキース・カルバロ・アルホフと名乗る者が」

 その場にいた者たちがその名を聞いた瞬間、目を見開いた。

 キースはアルホフ三等勲民の嫡子であり、母は国王の妹である。

 そのキースが門前に現れたというのだから、驚くのももっともな話である。

 視線がアレクに集まる。判断を仰いでいるのだ。

「……キース殿をここへ」

 アレクの言葉を聞いて、キーン十等勲民が部下に命じる。


 会議室へ連れてこられたのは、アレクとさほど年の違わない青年である。

 ただし、元々は金髪だと思われる髪の毛もくすんでいて、とても三等勲民家の嫡子とは思えないほど汚れた姿だった。

 そのキースの姿を見た、キーン十等勲民や他のアルホフ三等勲民の寄子だった貴族たちが頷いた。キースで間違いないということだ。


「アルホフ三等勲民が嫡子、キース・カルバロ・アルホフです」

「アレクサンダー・デーゼマンです」

「デーゼマン閣下へのお目通りが叶い、感謝いたします」

 アレクに対して深々と頭を下げた青年は、とてもアルホフ三等勲民の息子とは思えないほど礼儀正しかった。

 アレクも軽くではあるが頭を下げてから、キースに視線を固定した。


「キース殿、ここへは何をしにお越しになったのですかな?」

 代表してバージス副司令官が話を切り出した。

「私は王家への忠誠を忘れたことはありません。しかしながら、父ブロスは私や母が諫める言葉をまったく聞くことなく、王家へ反旗を翻しました」

 皆が頷き、キースの言葉に聞き入る。

「残念ながら、父は諫言する私や母を監禁しました。私は父の説得を諦めるしかなく、ケルメック城を脱出してここまで落ち延びてきました。こんなことを言えた義理ではありませんが、どうか母を助けてもらえないでしょうか」

 深々と頭を下げ母を助けてほしいと懇願するキースの姿は、概ね好意的に受け入れられたと言っていいだろう。


「閣下。キース殿の母君は国王陛下の妹君にございます。アルホフ三等勲民に協力しているのであるならともかく、諫言し監禁されているのであればお助けするべきと存じますが」

 ホッパー参謀長が王家に対しても受けがいいだろうと提案する。

 それには全員が賛成するが、それはアレクとマリアの考えとはやや違った。


「話は分かりました。その上でキース殿に確認します」

「なんなりと」

「キース殿はこの後、何をなされるのか確認したい」

 アレクのその問いにキースは返答に迷った。アレクの意図していることを計りかねてのことだ。

「閣下。それはどのような意味でしょうか?」

 たまらずホーレック九等勲民が、アレクの意図を確認する。

「これは失礼しました。私はキース殿がこの戦を収めるために何をするのか、お聞きしたかったのです」

「私は……」

 キースは思ってもない質問に声を詰まらせた。


「キース殿の父、アルホフ三等勲民が王家に反旗を翻したのは、変えがたい事実です。反逆罪は族滅が王国の法です。ですからキース殿は、ただ助けてほしいと言うだけでは足りないと、私は思っています」

 いくら国王の妹と甥であっても、今はアルホフ三等勲民家の人間。ケルメック城に監禁されているのを助けることはできても、反逆者アルホフの家族なのだ。

 国王や宰相に就任した王太子が、法を無視してキースたちを助ける可能性はあるが、それをすれば今後反逆者を裁く時の弊害になるだろう。

 法とは、時の権力者の都合によって歪められるべきではない。それをすれば、法などというものは形骸化してしまい、誰も守らなくなる。

 王太子はアレクに、叔母や従兄が死んでも恨まないと言った。国王もそのくらいの覚悟はしているだろうし、アルホフ三等勲民を反逆者とした以上は、そのくらいの冷徹さを持ち合わせていると思っている。


「今のままではキース殿もアルホフ夫人も、反逆者の一族です。例え監禁から解放しても、待っているのは族滅です」

 キースはぐっと拳を握り、アレクの声を聞いた。

「もし、国王陛下の妹や甥という立場だからと思っておいでなら、そのような甘い考えは捨てたほうがいいと、私は思います」

 アレクは容赦なく厳しい言葉をかける。

「閣下は、キース殿とアルホフ夫人は許されないと、お思いなのですか?」

「反逆罪は族滅が法です。国王陛下と王太子殿下が法を守らずして、誰が守るのですか?」

 アレクのその問いに、皆の口がぐっと結ばれた。


「総動員令を無視し、移封を無視している貴族はアルホフ三等勲民家だけではないのです。最初にアルホフ三等勲民家を選んだ、国王陛下と王太子殿下の思惑をよく考えてください」

「……つまり、国王陛下の妹君であっても……死を賜ると?」

「そう思って行動されたほうがよいと、申しているのです」

 会議室の中に沈黙が流れる。


 キースは、そこまで深刻な事態になっているとは思ってもいなかったため、城を抜け出して降伏の意志を示せば助かると思っていた。

「デーゼマン閣下。私は……」

 それ以上声が出なかった。

 ここでアレクにどうすればいいのかと聞くのは簡単だ。だが、アレクが手助けをするための何かを、自分が提案しなければいけないと思ったのだ。


「私は、父に従っている貴族を説得し、デーゼマン閣下へ寝返らせます。ですから陛下へ、お口添えをいただけないでしょうか」

 アレクは横に座るマリアをちらりと見た。その視線に反応し、マリアはわずかに顎を引く。


「キース殿が国のために働くと言うのであれば、私は国王陛下と王太子殿下にそのことを報告いたしましょう」

「ありがとうございます」

 キースは感謝の言葉を述べてアレクに深々と頭を下げた。



<デーゼマン軍>

 マイラス・バージス少将(副司令官)

 ボルフェス・ドメニス准将(政治将校)

 ゲムズ・ホッパー准将(参謀長)

 ジョナサン・アルバレス中佐(副参謀)

 トット・エギヌ大佐(機甲科魔術部隊隊長)(大隊長)


<味方>

 ゼムド・キーン十等勲民(ザイムの町の領主)

 ホーレック九等勲民

 アットモ十等勲民


<アルホフ陣営>

 ブロス・カルバロ・アルホフ三等勲民

 ドマス六等勲民家(アルホフ分家)


<アルホフ陣営・不満あり>

 コートジール六等勲民(アルホフ分家)

 ベナンジール五等勲民


<その他>

 キース・カルバロ・アルホフ(アルホフ三等勲民の息子)


 

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