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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
十三章

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102/160

102_新たな任務

 


 王都に入ると、民衆総出でアレクたちの凱旋を迎えた。王都に住む人々が全員集まったのではないかと思うほどの大観衆である。

 大騒ぎしすぎるとアレクなどは思うが、その横で軍務大臣のハイネルト・ヒリングは出迎えた民衆に手を振って応えている。

 ハイネルト・ヒリングはこういうことに慣れているようだが、アレクは性格的にこのようなパレードの主役というのは何度やっても慣れないだろう。


 パレードで精神的に疲れ切ったアレクだが、すぐに国王との謁見が予定されている。気が休まる暇もない。

 謁見の間には多くの貴族が顔を連ね、アレクは弟のフリオと共に中央の毛足の長い赤い絨毯の上を歩き進む。

 国王の表情は非常に機嫌がよいようで、笑みこそないが和やかなものである。

 諸侯に混じって国王へ謁見しているため目立ってはいないが、アレクの戦功は際立っていることから目立ちたくないと言うほうが無理だろう。

 ただし、当の本人は多くの貴族がいるので一人でないだけマシだと思っている。


 数日後、正式に論功行賞の結果が戦いに参加した貴族諸侯に言い渡されたのだが、アレクは予定通り六等勲民に叙された。

 それが発表されると、居並ぶ貴族たちから大きなざわめきが起こった。

「静まれ! 陛下の御前である、静まらぬか!」

 宰相が声を張り上げて貴族諸侯のざわめきを収めようとするが、なかなかざわめきは収まらない。


「恐れながら申し上げます!」

 最前列の一角に陣取る貴族が声を上げた。この貴族はボドレニュウス・キッシンジャー三等勲民だ。

 白髪でも分かるように60歳を超えた老人であり、数年前まで大臣職にあった人物でもある。

「キッシンジャー殿、お控えられよ」

「いいや、言わせていただきたい!」

 このボドレニュウス・キッシンジャーは大臣だったことでも分かることだが、領地を持たない法衣貴族である。

 建国以来の名門貴族で、国王にも歯に衣着せぬ物言いをすることでも有名な人物でもある。ただし、国王を敬っていないのではなく、諫言することで王家への忠誠を示している不器用な老人なのだ。

 つまり、ボドレニュウス・キッシンジャーはご意見番のような役割を自分に課していると言える人物であり、貴族諸侯もそんなボドレニュウス・キッシンジャーに一目置いている。


「構わぬ。キッシンジャーよ、申せ」

 国王がキッシンジャーに発言を許したことで、ボドレニュウス・キッシンジャーは深々と礼をして謝意を述べる。

「デーゼマン殿は九等勲民であり、それを一気に六等勲民へ昇爵されるのは、慣例もなくあまりにも突飛な行いでございます。どうかお考えなおしいただきたく存じあげます」

「キッシンジャーは慣例と言うが、アレクサンダー・デーゼマンのような戦功を挙げた者が過去にいるのか?」

 国王が謁見の間で直答をすること自体、慣例にないことである。


「某の記憶では第二次アッサン戦役のゴドル将軍、第三次テルメール戦役のパニス将軍がいたと存じあげます」

「その二人はたしかに英雄と言える人物だ。しかし、二人は王族であり、その当時で三等勲民だったと記憶している。もし、二人がアレクサンダー・デーゼマンと同じ九等勲民であれば、今回のように一気に昇爵したのではないか? しかも、その二人であっても今回のアレクサンダー・デーゼマンの功に及ばぬと余は思うが、キッシンジャーはどう思うのか?」

「たしかにデーゼマン殿の功は非常に大きいでしょう。だからと言って慣例にないことを行うのは、某は反対にございます」

「ではキッシンジャーに聞く、今回のアレクサンダー・デーゼマンの功に対して八等勲民への昇爵に留めた場合、その褒美は功に対して適正であるか?」

「そ、それは……」

「王家は貴族諸侯の奉公に対して正しく褒美を与えねばならぬ。御恩と奉公について余がそなたらに話して聞かせる必要はないであろう。今回、アレクサンダー・デーゼマンの奉公に対して、余は報いねばならぬ。キッシンジャーは余を奉公に報いぬ無能な王にするつもりか?」

 御恩と奉公は君臣を繋ぐ最も重要なことである。つまり、国王は労働に対する対価を払うのは当然のことであると単に言っているのだ。

 もし、アレクの評価が不当に低いものであれば、アレクはそのことに不満を持つ。アレクのような英雄が不満を持ち、もし反乱を起こしたらどうするのか?

 これは言い過ぎではなく、それこそ過去には多くそういった騒ぎが起きているのだ。


「ぐっ……。出過ぎた物言い、平にご容赦願います」

「分かればよい」

 この君臣のやりとりを聞いて、今回の褒美について口を挟むことは誰にもできなくなった。

 実を言うと、このやり取りは国王とボドレニュウス・キッシンジャーの演技である。他の貴族諸侯がアレクへの褒美に不満を持つのは簡単に予想できたので、ボドレニュウス・キッシンジャーから悪役を買って出たのだ。

 このように色々な配慮があり、アレクの六等勲民への昇爵が決定した。


「ゴホン。諸侯が納得したところで、アレクサンダー・デーゼマンの褒美について続ける」

 宰相は今のやり取りで貴族全員が納得したという言質を残す。さすがは政治の中枢で長く生きてきた宰相である。もっとも、こういった強かさがなければ、宰相にはなれなかったのだろう。

「アレクサンダー・デーゼマンを六等勲民へ昇爵させるに合わせ、領地の加増を行う。だが、今回の加増は一時保留する」

 さきほどの御恩と奉公の話はなんだったのかと、貴族諸侯が再びざわめく。

「静まるのだ! これは、加増をわずかな期間保留するだけであって与えぬのではない!」

 宰相の言葉で貴族諸侯は静まったが、保留にする理由が分からなかった。

 あまり大きな声では言えないが、族滅したり帝国軍に協力的だった貴族から取り上げた土地があるため、アレクに与える領地には困らないのだ。


 論功行賞が終わると、国王は来年の帝国との休戦協定の失効において、激しい戦いが予想されるとして、占領した旧帝国領にブロス・カルバロ・アルホフを移封すると宣言した。

 それだけではなく、今回の総動員令を発したにも関わらず国王の命令に背いた貴族たちの移封を発表したのだ。


 特に、ブロス・カルバロ・アルホフは、守るべきボーノス要塞が教国によって陥落してしまった。

 本来であれば厳罰が言い渡されても文句は言えないが、所領を減じられて移封だけで収まったのだからよしと思わなければならないだろう。

 ただし、当のブロス・カルバロ・アルホフを始めとした移封を命じられた貴族たちの多くは、その決定を不服として国王へ異議申し立てを行った。もちろん、それが受け入れられることはなかった。

 これが国王と軍務大臣、そして新しく宰相への就任が決まっている王太子の思惑通りに事が進んでいることに、当人たちはまだ気づいていない。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本でも足引っ張るだけのゴミを間引きできればな・・・
[一言] 情報部も役たたずだったし、国の危機に動かない者、足を引っ張る者、敵国と内通する者、 全部粛清して整理しないとね。
[一言] ・・・貴族の間引きやる前振り?
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