もう1人の自分に会いました。
気付いたら暗闇に1人、佇んでいた。
それだけで充分変な事だが、なんと目の前には自分にそっくりな少女が立っていた。
変な事だらけで全然頭が回らない。
「やぁ、」
と、少女は薄ら笑いを浮かべ、声をかけてきた。
「突然だけどさ、私と主導権を交換しない?」
「……は?」
突然意味がわからない事を言われ、思わず「は?」と言ってしまった。
「私は実はあなたのもう1人の人格なの。珍しい事じゃないよ?殆どの人間にあること。」
「…その人格さんが何か用?」
私の乏しい理解力ではいまいちよく分からなかったが、このままだと話が進まないと思った。
「だから私に主導権を譲って欲しいの。今はあなたが表の人格で私が裏の人格。私は表の人格になりたいの。」
「それは何故?」
「だってあなた、虐められていたんでしょ?友達にも、おやにも。」
「…それが何?」
「私だったらあなたにそんな辛い思いはさせない、あなたを虐めたいじめっ子を殺してやるの。じわじわと苦しめてから。」
私は溜息を吐いた。
「そんなことして何が楽しいの?」
するともう一人の私は顔を歪めて
「楽しいに決まってるじゃない!だってあなた…いや、わたしの事を苦しめた奴を殺せるのよ?あなたは楽しいと思わないの?」
「苦しめられる気持ちは分かっているでしょ?なのに何故そんなこと…」
私がそう言うともう一人の私が声を荒らげて言った。
「うるさいっ!この世界は不平等と理不尽で成り立ってるの!あなたはもう分かっているでしょ!?私がそれを変えるの!悪になってでもね!
努力をしても報われない、誰にも認めて貰えない…そんなのおかしい!おかしいんだ!」
「……確かに、努力をしても報われないし誰にも認めて貰えない。でも、私は分かってる。」
「え…?」
「他にはわからない。けど私は分かってる。自分だもん。誰も知らない事を私は知っている。分かってあげている。それじゃ駄目かな?」
「…」
「それにね、友達もできたんだ。初めての友達。私に向かって笑ってくれるの。嘲笑いじゃない暖かい笑顔で。」
「…あなたはいつも綺麗事ばかり……ねぇ、私はあなたを無理矢理にでも支配することが出来るの。でも私はそれをしない。
あなたのそう言うところが好きだから。」
…もう一人の自分は初めて暖かい笑顔で笑った。醜くない、本当の笑顔。
「じゃあ、また会おう。」
「うん、会えたら。」
そう言うと私は意識を失った。
もう一人の自分が「ありがとう」と言ったことも知らず。
…起きるとそこはいつもの寝室だった。
さっきまでのは夢だったのか?とも思った。
だけど心の中には、言いたいことが言えたような爽快感が広がっていた。