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5. 結果および考察

 図6に作成した多層積層バケツゼリーをぷっちんしようと試みた結果を示す.図より,ぷっちんするにあたり下層部ゼリーが乖離してしまい,多層積層バケツゼリーの作成としては失敗してしまうことがわかった.このとき,上層,中層ゼリーにおいては密着状態が確認され,バケツをひっくり返して下層ゼリーが乖離した後も,バケツ内に留まったままであった.次に,図7に乖離した下層ゼリーの上に強制的に上層,中層ゼリーを載せ,見かけ上の多層積層バケツゼリーを完成させたものを示す.このとき,上層,中層のゼリー接合外周面はほぼ一様で滑らかであることが確認された.また,下層部と中層部の断面は合致することが確認された.



挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


Fig.6 Separated under layer



挿絵(By みてみん)


Fig.7 Cooking result of jelly



 図8にバケツゼリーの断面図を示す.図より,バケツゼリーの断面は概ね一様であり,層間における明確な剥離は見受けられなかった.このとき,上層と中層の境界面を拡大したものを図9に示す.図より,各ゼリーの層間には無数の微小な気泡が境界面に沿うように帯状に存在することが分かった.これは材料に使用したサイダーによって発生したものだと考えられる.頂上部およびゼリー間においては,目視による気泡の確認を行うことができなかったため,ゼリー間に存在する全ての気泡が層間に集中したものだと推測される.図10にバケツゼリーを食べ進めた際の崩壊の様子を示す.この時バケツゼリーは剥離した下層と中層の間でせん断破壊的に滑りを生じていた.前報(1)においてほぼ同形状のバケツプリンを食べた際にはこの現象を確認できなかったこと,および上層と中層の境界面強度はそれ以外の部分に比べて比較的低かったことより,境界面には大きなせん断力がかかっていること,さらに層間境界面の気泡が欠陥として働き,き裂発生点となった可能性が考えられる.



挿絵(By みてみん)


Fig.8 Cross section of jelly


挿絵(By みてみん)


Fig.9 Enlarged view


挿絵(By みてみん)


Fig.10 Appearance of collapse



 図11に自重を模擬した強制変位がバケツゼリーに与えられた際のZXせん断応力の応力分布を示す.図より,ZXせん断応力は全体として概ねバケツゼリー内部から外側に向かって働くことがわかった.このとき,このせん断応力図について,バケツゼリー中層部のみに着目したものを図12に示す.図より,せん断応力は内側よりも外側のほうが強いことが分かった.また,全体として底面部に近いほどせん断応力が強くなる傾向が見受けられ,中層部における最大せん断応力は中層部下面に発生することがわかった.



挿絵(By みてみん)


Fig.11  Analysis results of ZX shear stress


挿絵(By みてみん)


Fig.12  ZX shear stress Analysis results of middle layer



 以上より,多層積層バケツゼリーの破壊メカニズムについて考える.各層間境界面に炭酸材料による気泡が集中していたこと,せん断応力は底面部に近づくほど大きくなること,今回においては中層-下層境界面にかけてぷっちんの際に剥離し,また強制的に多層積層を模擬した場合においてもそこから破壊が生じたことから,層間境界面に生じた気泡が欠陥として働き,そこに強いせん断応力が加わったことでき裂の発生が誘発されたのだと考えられる.中層-下層境界面と同じく気泡が集中していた上層-中層境界面でせん断的剥離が生じなかったのは,中層-下層境界面に比べて負荷されたせん断応力が低かったためだと推測され,強いせん断応力がかかっているはずの下層においてせん断的破壊が起きなかったのは,き裂発生の要因となる炭酸材料の気泡が中層-下層境界面に集中していたためだと考えられる.これらを簡易的にモデル化した模式図を図13に示す.



挿絵(By みてみん)


Fig.13  Schematic diagram of fracture behavior



 これらの事柄より,多層積層バケツゼリーを製作する際は炭酸材料を使わない,あるいは使ったとしてもせん断応力による影響が小さい上層部のみにとどめるか,十分に炭酸を抜くことで破壊を防ぐことができるのだと推測される.また,積層をしないモデル(一体型モデル)であれば,炭酸材料を用いても破壊は生じないのだと考えられる.

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