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B-2 実食日の記録

 久々に化け物に襲われる夢を見た。そいつはガス状粒子生物なる未知の怪物で、パッと見は霧で出来た触手的な何かなんだけど、眼孔、鼻孔、口腔……人間の穴と言う穴から侵入し、全身くまなくその卵を産み付けるという悪魔のような存在である。


 で、孵化したガス状粒子生物は宿主を内側から食い破り、新たな獲物を探して大気中を彷徨いだす。孵化後の活性化は非常に速やかであり、何ともなかった人が一瞬で血の煙になった様に見えることから、最初は未知の病原菌による何らかの病とされ、血煙病と呼ばれていた。


 あいつらは非常に狡猾で、そして強かった。火で焼き殺そうとしてもダメだった。薬物汚染もまるで意味がなかった。もちろんナイフも銃も効かなかったけど、指向性の光プラズマ照射だけは効果があった。ただ、あいつらは社会性が高いらしく、数匹がプラズマ照射装置の排気孔に『詰まる』ことで全部ぶっ壊したけど。


 逃げて逃げてずっと逃げて、途中で右腕の毛穴から感染して、やむなく腕ごとぶった切った。それを囮にして何とか逃げ切れたけど、頼みの綱のシェルターの扉を開けたら、すでに中の人間は全滅しており、無数の奴らが蠢いていた。


 最終的に奴らにつかまり(最初に脚を壊された)、生きたまま卵を産み付けられ、苗床として死ぬまで体で卵を育てる羽目になった。あのクソ共、苗床として長持ちさせるためにあえて俺を殺さず、脳ミソだけ傷つけないようにして点滴的な何かをしてきやがった。


 自爆をためらったのが良くなかった。点滴のせいで体が言うことを聞かなかった。次はまとめて始末してやる。ぜってぇ許さねえぞクソが。


 さて、夢についてのメモはここまで。これからは普通に書いていこう。あ、一日日付が飛んでいるけど、昨日は歯医者に行っていたってだけでサボっていたわけじゃあない。


 加工があったため、研究室に到着したのはいつもよりちょっと早め。身支度(いつも通り、いつ洗濯されたかわからない作業着を身にまとった)を整えた後は早速加工場へと向かう。前回までに削りしろの処理と魔法陣表面粗さの加工実験を終わらせていたため、本番の魔法陣表面粗さ仕上げをすることに。


 今回行ったのはステルの試験片の仕上げ。なんかゴッツい例の魔法刃を取り付け、刃当てをしてからがーって一気に削っていく。送り速度が遅いものだと微妙に時間がかかるけれど、繰り返し作業だからそこまで面倒と言うほどでもない。


 が、あのポンコツはギアが入れづらくて本当に困る。明らかに目盛り以外のところまでレバーが動いちゃうし、目盛りの所に合わせているのにギアが噛まなくて台座がうまく動かないことがザラ。なんであんなにもポンコツなのか……というか、果たしてあれで本当に加工精度は出ているのだろうか?


 ともあれ、なんだかんだで作業は順調に進んでいく。これなら余裕をもって終われるな……と思ったら、途中で明らかヤバそげな異音が発生。ついでになんかさっきまで出ていなかった火花までぱちぱちしだす。


 本当にもうやんなっちゃう。どうしてこうも問題が続くのか。


 もちろん、仕上げ面はなんかおかしいことになっていた。先生にそのことを相談すると、『間違いなくチッピングしたな』とのこと。なんかよくわからんけど、刃がボロいし管理がなっていないせいでこんなことになってしまったらしい。新しい刃を探す時もずっとそのことをグチグチ言っていたよ。


 なんだかんだでだいぶ余裕をもってステル試験片の表面粗さ仕上げは終了。で、次回はアルムの奴を仕上げます……なんて言ったら、『アルムはアルムで加工実験しないと数字出るかわかんねぇぞ』等と言われてしまう。なぜ前回までの加工実験でそのことを言わなかったのか、小一時間ほど問い詰めたくなった。


 そんなわけで急遽アルムのサンプル試験片を使って加工実験をすることに。ステルで取った全ての魔法条件を試す時間はなかったため、適当にそれっぽいところをピックアップしてやってみることにした。


 これについては特に問題なく終了。後は実際に粗さを測定するだけ。一応先生にお礼を言ってから加工室を後にする。


 お昼の時間、なんとなく冷蔵庫を見てみたら、昨日のバケツゼリーがだいぶ減っていた。どうやらみんなが食べてくれていたらしい。みかんばかりがごっそり減ってほとんど残っていなかったけれど、協力してくれたことには礼を言いたいと思う。


 午後は午前中に作成したアルムサンプル試験片の粗さ測定を行う。結論から言うと、アルムもステルとほぼ同じ値を示していた。ステルに比べると全体的にやや滑らかな値を取っていたけれど、理論値よりもいくらか荒くなるという傾向は一緒。ぶっちゃけステルと同じ近似直線を用いても全く問題ないだろう。


 そうそう、もしかしたらステルの一番荒い条件のアレ、切削条件間違っていたかもしれない。アルムの方は綺麗な直線近似になっていたし、最後のそれ以外はステルとほぼ同じ値を示していたことを考えると、ステルのアイツだけが全てのパターンとかけ離れた値を示している。あそこだけ何らかのミスがあったと考えるほうが妥当だろう。


 いずれにせよ、後で実際の試験片の粗さを測定しなきゃいけない。それで値を修正しておけば問題ないだろう。誰かが使うかどうかはわからないけれど、これで一応魔法陣表面粗さの理論値と実測値の関係が取得できたわけだし、触媒研の人間が再び加工実験をする必要はなくなるはずだ。


 だいたいこんなもんだろう。関係ないけど、ラフォイドルが最近コーヒーにハマっている。今日も『ちょっと牛乳ちょうだい』って言ってきたので快く提供した。ちょっと前まで飲むヨーグルトにハマっていたというのに、彼にいったいどういう心境の変化があったというのだろう。ちょっと気になる。


 ちなみに、あいつの愛飲のコーヒーはほとんど甘さの無いブラックだった。こういうところもやっぱりブラックとか、さすがはラフォイドルと言わざるを得ない。


 なお、ゼリーについてはちゃんと完食することができました。最後には結構味に飽きが来てたけど、ちょうおいしかったです。

チッピング:魔法刃の損傷の一種。詳しくは【魔系学生の日記 230日目 魔法構築学:魔法刃の損傷について】を参照。


 ……理系の人ならたぶんそのまま通じるはず。

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