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B-1 実食日の記録

 雨風が凄まじいことになっている。バケツをひっくり返したような大雨とはまさにこのことを言うのだろう。


 雨が降っていたため、研究室に到着したのはいつもよりちょっと遅め……と言いたいところだけど、加工があったため普通に早く来た。──だけに中だるみしているのに、この仕打ちはあんまりだと言わざるを得ない。


 到着後は早々に加工に入る。今回行ったのはアルム板材の削りしろの処理。前回までにステル板材の削りしろの処理は終わったから、残りをやっちまおうって寸法ね。


 これについては特に問題なく終了。さすがにもう何度もフラウルを扱っているだけあって、作業スピードも初期とは段違い。適当に刃当てして寸法測って切り込むだけである。数が多いのが難点だけれど、所詮はそれだけだ。


 キリが良かったので、加工はちょっと早めに終了することにした。これで全ての板材の削りしろの処理が終わったので、後は魔法陣表面粗さを仕上げていくだけ。あのよくわからん魔法刃に変更するの、クソ面倒でやりたくないけれども。


 研究室に戻って昼餉を取り、ちょっとお腹が落ち着いたところで昨日製作したバケツゼリーの試食会に移る。雨風が窓を強く叩く中、キート先生に見守られつつ、えいや、とそのバケツを大きなお皿にひっくり返した。


 ……が、出てこない。何度ゆすっても出てこない。一応沸騰したお湯で外側表面を温めたはずなのに。


 しょうがないのでスプーンを用いて円周に切り込みを入れていく。いい感じのぷるぷるした手応えに期待を隠すことができない。


 二度目のトライ。ぶよよっ! って音が響く。そして悲劇は訪れた。


 やっちまったって思った。明らかに手応えがおかしい。バケツに透けて見える影が、もう既に尋常じゃあない。


 うん、下層(緑色の部分)だけがさ、お皿の上にぷっちんしちゃったんだよね。上層中層と剥離しちゃってさ、その二つは未だにバケツの中にあったんだよ。


 さすがに絶望。フィルラドやキート先生の笑い声が院生室に響く。よもやこんな展開になるとはだれが思ったことだろう。


 ともあれ、このままにしておくことは出来ないので何とかリカバリー出来ないか試みる。キート先生やジオルドのアドヴァイスもあり、少々不格好ながらも、緑ゼリーの上に無理矢理残りのゼリーを乗せることに成功した。この時点でだいぶ不安定ではあったけれど、まぁ、見た目はそこまで悪くなかった……ように思える。


 ただ、いかんせん色合いがエキセントリック。王都の方の体に悪いお菓子って感じ。


 早速試食タイムに入る。学部生にも声をかけ、プリンの時と同様、いい感じに切り分けておすそ分けした。意外にも断面部分は滑らかであり、緑以外の部分はほぼ一体型を成していることが見受けられた。


 ただ、層間の部分に炭酸の気泡が混じっており、そこからぺりぺりとはがれていく。緑ゼリーのき裂もそこから発生していたようで、ゼリー断面は非常に凸凹していた。どうやら図らずも炭酸の気泡が欠陥として働いていしまっていたらしく、無数のそれのいずれかがき裂発生点となってしまっていたようだ。


 実際、食べている間にもどんどんせん断方向に崩れていき、自立こそしているものの滑りが生じてしまい、凄まじい見た目になっていたことをここに記しておこう。


 なお、味そのものは普通にデリシャス。思いのほか炭酸が残っていてそのしゅわしゅわ感を楽しむことができた。甘みも十分だし、ゴロゴロと入っているみかんが何とも嬉しい。緑ゼリーの部分では割としっかりメロンの味がして、『ここが一番うまい』とポポルがほめるほどであった。


 ただ、ポポルとラフォイドルがみかんばっかり突いてくのは頂けない。なんであいつらいっつもゼリーを食べずにみかんばっかり食べていくのだろう。それってちょっとなくない?


 さて、そんなカラフルなゼリーを延々と食べていたわけだけど、やっぱりというかなかなか減らない。食べても食べてもその鮮やかなゼリーは体積を減らさず、ちょっとずつ崩れて見た目を悪くしていく。ポポル&ラフォイドルがピンポイントでみかんだけを突いていたこともあって、半分食べきるころには結構ぐしゃぐしゃになってしまっていた。


 で、ゼリーに飽きたのか、『俺ゆで卵作っちゃうよ』とか言ってポポルがゆで卵を作り出す。ちょうどしょっぱいものが欲しかったので俺の分も作ってもらった。まぁ、そもそもが俺の卵なんだけれども。


 意外なことに、ポポルはゆで卵を作るのはうまいらしい。半熟具合が絶妙で、黄身がとろりとしている何とも素晴らしい仕上がりである。ゼリーの甘さでいっぱいだったお口にとっては、あのゆで卵は何よりもおいしく感じられた。


 さて、そうやってゆで卵を食べた後もゼリーの攻略にかかる。今回は一人で結構な量を食べることができた……けど、やっぱり完食に至ることは難しい。とりあえず大きな塊はまた今度たべるということにして、細かく崩れたそいつらから食べていこうと試みる。


 これについてはラフォイドルも手伝ってくれた。『もしかしたら味が変わるかも』と、秘蔵のコーヒーを提供してくれる。そいつをコップに流し込み、そこにゼリーをぶち込めば、なんちゃってコーヒーゼリーの出来上がりである。


 これがまた、色合いが絶妙に綺麗であった。なんか意識高い武系の人がインスタとかにあげていそうな感じの飲み物。味そのものはコーヒーゼリー(苦め)なんだけど、コーヒーの茶色とカラフルゼリーの光の反射が混じってすっごくイマドキっぽかったんだよね。


 そうそう、ラフォイドルはさらに秘蔵のポテトチップスまで提供してくれた。あいつがこんなにも連続で優しさを見せることに驚きを隠せない……けれど、素直に好意を受け取っておく。


 もちろん、ポポルはポテチを食べながらもみかんだけをピンポイントで食べていた。解せぬ。


 さて、もうすっかり研究なんてする気が無くなってしまったため、なぜだかみんなでゼクトのゲームを遊ぶことになった。名前はそのまま【THE GAME】ってやつで、協力型のカードゲームというか、パーティゲームね。


 ざっくり説明すると、1から始まる山を二つ、99から始まる山を二つ用意し、各々99、1になるまで手札の数字のカードを順番に出し合い、最終的に全員の手札の合計が一定数以下ならばクリアってもの。


 一度に出すカードの最低枚数が決まっているから、手札が酷いと数字を進め過ぎてしまい、結果としてみんなの出せるカードが無くなって……っていうかんじ。それを防ぐためにも、ルールに抵触しない範囲で情報交換を行い、なるべくみんながカードを出せるように手札を選択して出していかなきゃいけないってわけだ。


 結構シンプルなルールだったけど、これが意外に盛り上がる。数字を進め過ぎてしまったり、被害を少なくするためにあえて山を一つ潰したり……一回しかやらなかったとはいえ、どうやら結構奥が深いようだ。


 ざっくりしているけどこんなもんにしておこう。なんかあまり書く気分じゃないのと、文章量の制限に引っかかりそうな気がするからである。なんか最近どうもスランプ気味と言うか、文章が読みづらい感じもするし、一回ゆっくり休んで元の調子に戻しておきたいところだ。

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