第17話 VSセリア1(三人称視点)
「誰?」
リヴァは面倒臭そうにその女性へ言った。
その女性を一言で説明するならば、絶世独立の美人である。長い茶髪と鋭い目つき。今までリヴァが出会ってきた中でもひときわ目立つ存在であるのは確かだ。
ただ、リヴァはすでに戦う気力などなかった。それはララとの戦闘による疲弊。現時点で戦いへ集中できるような状況ではなかった。
そして、目の前の女性が何者かは分からなくても、リヴァは負ける気などさらさらなかった。
「セリアよ」
その名前に、聞き覚えがあったリヴァは考え込むが、思い出すことができなかった。
それほど女性へ興味が芽生えなかった。
「何故、あなたが出るのですか! リヴァさんの相手は私のはずです」
「クロードが破れ、あなたも破れ、あとは私しかいない。だから私が戦うしかない。違う?」
その言葉にララは黙った。
ララにとってセリアとは、今は見方であるが、本来は敵である。聞き入れる理由などないし、まして本来なら先にセリアを倒すべきであった。
そしてリヴァイアサンに負ける気のなかったララにとって、セリアにも負ける自信などなかった。
それでもララが黙るを選択したのは、疲弊したリヴァに勝てる可能性があるのは、同じく疲弊したララではなく、セリアしかいないと考えたからである。
セリアはリヴァの方を向き、首を傾げる。
「それで」
セリアの腰の剣は抜かれていない。
だからリヴァは油断をしていた、そんな時。
刹那、リヴァの目の前に剣が現れた。無から現れたかと錯覚してしまうほどの速度で、音を置き去りにして、セリアの剣はリヴァの両目を斬ろうとしていた。
そのコンマ数秒の間にリヴァは瞬時に後ろへ回避する。リヴァの寸前を剣が横切る。
「始めて良いのかしら」
初めてリヴァの額に汗が流れ落ちた。
「あんた、何者?」
「セリアよ。名乗ったでしょう? ここでは隣国のセリアなんて呼ばれているのかしら」
隣国のセリアで、リヴァは思い出す。
先輩の誰かが言っていた。タトス王国が誇る最強の騎士。世界で五本の指に入る実力者だと。
その類なき美しさと強さから、セリアが只者ではないことは分かっていたが、かの有名な隣国のセリアと結びつけることはできなかった。
「あんたが、あの」
「さあ、おしゃべりは終わりにして。殺し合いましょ」
セリアは剣を構える。
それと同時にリヴァも剣を構えた。
剣を構えるという行為はリヴァにはあまり意味がないことである。
それはリヴァは剣に対する知識、ひいては剣技を一切身につけていないからだ。今まで見せてきたのはすべて力技によるものであり、だからこそ、今までの模擬戦闘にリヴァは苦戦をする羽目になったのだから。
もしも仮にも剣技を身に付ければ、それは果てしない力となって、リヴァの戦いを手助けするであろう。
そして、リヴァと同じように力を持ち、そして剣技も習得したセリアがリヴァと剣の殺し合いで負ける道理などない。
「なんだ、これ」
まるで、赤子のように。
セリアはリヴァの剣をすべて受け流すか回避をし、着実にリヴァの体を切裂いていった。集中力がなく、また剣技を習得していないにしても、リヴァはここまで一方的になるとは予想だにしなかった。
「不思議ね」
セリアはこの短時間の攻防で抱いた疑問を聞く。
「何故、本気を出そうとしないのかしら? いえ、質問として可笑しいわね。どうして旧魔法を使っているのかしら?」
「旧魔法?」
「旧魔法の変身魔法では魔力が尽きないと元に戻れない。だから人外が人へ変わりたい時、この魔法は好まれなかった。でも今は違う。現代魔法ならそうならない方法が生み出されている。そしてその魔法をまさか知らないなんて言わないでしょう?」
「どうして俺が、使っている魔法が旧魔法だと分かったんだ?」
「そんなの簡単よ」
逆の質問にセリアは微笑して。
「だって、明らかにあなたの魔力の残りが可笑しかったもの」
セリアは常にリヴァを解析していた。
どうして、リヴァイアサンがこんなところにいるのか。どうしてこの国の国宝を二つも所持しているのか。どうして人の手助けをするのか。
だからこそ知っているリヴァという存在を。
そしてリヴァはセリアを知らない。
「それでどうして旧魔法を使っているのかしら?」
「そんなの簡単」
リヴァは素直に答えた。
「だって、魔法という、非科学的な存在を何一つ理解していないから」
リヴァの言葉にセリアは目を細める。
「でも良かった。そうなんだ。現代魔法なら、自由に変身できる魔法があるのか。この戦いが終わったら覚えよう。どこに行けば覚えることができる?」
「さあ」
セリアも分からなくなる。
ララと同様にリヴァという存在が、どうもリヴァイアサンに見えなくなってきた。それとは別の、普通の人間としか思えなかった。
「それと何か勘違いしているみたいだけども、あいにくと俺は本気だぞ。ただ元の姿に戻れないだけで、今はいたって真面目に本気に戦っている」
「そう、なら」
セリアは呟く。
「もしも私が本気を出したらどうするのかしら」




