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第5話 世の中何とかなるもの

「船が難破しまして。気づいたら知らない浜辺にいました。命からがら森を抜けましたら、あなた方の馬車を見つけたのです」


 なんて説明すると、相手は簡単に納得してくれた。

 馬車の中。

 その中には合計で六人の人がいた。それでも十分スペースがあり、俺は真ん中の特等席をいただいた。

 この六人の構成を説明すると、夫婦とその子供二人。そしてこの家族を守る二人の騎士である。

 そう、騎士。外の兵とは明らかに格好が違う。


「私はヨハン・アルベール。息子の名はレオンと言う」

「私はダリア・アルベール。娘の名はイリヤと言います」

「レオナールだ。アルベール聖、専属の騎士をしている」

「クロエ・フェーベル。レオナール同様アルベール聖、専属の騎士をしている」


 子供を除く四人がそれぞれ自己紹介をする。

 第一印象を言えば、綺麗な家族、だった。ヨハンさんとダリアさん。どちらも美男美女。歳は二十代後半か、三十代前半だろうか。騎士の二人も同様である。

 息子と娘であるレオン君と、イリヤちゃんはそれぞれ四歳と一歳と見た。

 自己紹介されたのだから、俺も自己紹介をしなくてはいけない。

 でも、名前をどうしよう。

 リヴァイアサン。リヴァイ。リヴァ。うん。


「私はリヴァと言います。このご恩は忘れません」

「いや、何。困っている時はお互い様でしょう?」

「失礼ですが、姓は?あなたのような美しい方は見たことがない。さぞ有名な貴族の娘なのでしょう?」


 ダリアさんがそんなことを聞いてくる。

 どうも、貴族の娘と思われたから助けられたみたいだ。

 まあ、ここは素直に話しても、大丈夫かな?


「いえ、庶民です」

「なんと。いやはや信じられませんな」


 騎士二人は自己紹介してから一度たりとも会話に入ろうとしない。いや、してはいけないのだと思う。


「ねえ、どうして豚を持っているの?」


 ふと、レオン君が聞いてきた。

 ブーは俺の膝の上にいる。

 レオン君の言葉にブヒブヒと反応を見せた。


「この子は私のペットなの」

「ペット?家畜を?不思議だね。もう食べごろなのに」


 食べごろ?


「ごめんなさい。こら、そのような言い方はないでしょう?謝りなさい」

「ごめんなさい」

「いえ、大丈夫です。それよりも食べごろとは?」

「もう大人という意味です」


 あ、そうなんだ。

 なんだ、こいつ子供じゃないのか。


「すみません。実は私、世間に疎くて。あなた方は貴族なのでしょうか?」

「ええ、そうです。今向かっている街を統治しています」


 街を統治する貴族か。


「クロエも貴族の娘ですよ」

「そうなのですか?」

「ええ。ですので、自己紹介時に姓を名乗ったでしょう」


 はて?


「姓を名乗ると貴族なのですか?」

「なんと!」


 その質問にヨハンさんが驚いた。


「ええ、そうです。貴族以上にのみ姓は与えられます。貴方は姓を持っていないでしょう?つまりそういうことなのです」

「そうだったんですね。すみません。本当に世間に疎くて。人生のほとんどを一人で生きてきましたから」


 嘘だけど。

 それにしても、なるほど。

 この世界について少しずつ分かってきたぞ。貴族以上にのみ姓があり、ヨハンさんみたいに貴族の中には街を統治する者もいれば、クロエさんみたいに騎士の人もいる。

 あの魔法使いを食べてしまった時、あくまで魔法の知識だけでこの世界の一般常識までは分からないからな。


「いや、何。あなたが悪いわけじゃありません。環境が悪いのですから。それにしても」


 ヨハンさんが俺の足元に置かれた槍に目がいく。


「何故槍を?」

「森は危険ですので。だから錬金術で作製しました」

「錬金術を?すごいですね。そのような高度な魔法を使いこなすとは」


 え?錬金術って高度なの?


「装飾も施されている。素晴らしい。それほどの物を錬金術で作り出す人間は国に百人いたら多い方だ」

「まさか、有名な魔法使いの娘とかでしょうか?」

「いえ、父と母は普通の方です。魔法使いとかではありませんでした」

「では、自力でそこまで鍛錬なさったのですか?」

「はい」


 そう答えて、ふとヨハンさんの視線が変わった気がした。

 どうしたのだろうか。

 少し怖い。

 そう思った時。ふいに馬車が止まった。


「オークです!オークの集団です!」


 その叫び声に、ヨハンさんは笑った。

 笑った?

 何1つ危機感を感じていない。オークはオーガよりも強いはずだ。

 そのオークは何体来ようとも脅威じゃないのか?


「ヨハン様。ダリア様。すぐに終わらせてきます」


 そう言って、クロエさんが立ち上がる。そしてそのまま馬車の外へと出て行った。


「あの、彼女一人に任せて大丈夫なのですか?」

「大丈夫です。このために彼女はいるのですから」


 大丈夫?

 いや、でも。

 仮に大丈夫でも、なんでレオナール。あんたが出ないんだ?男なら女性を戦わせるなよ。

 よし、俺も出よう。

 そう思って、俺はブーを椅子に置き、槍を手に取った。


「どちらへ。まさか、外に出るつもりですか?危険ですので中にいた方が」

「大丈夫です。私はこう見えて強いので。恩返しと思ってください」


 そう言って、俺は馬車を出た。

キャラ紹介3

モブ ヨハン・アルベール

アルベール聖の貴族。めちゃくちゃ偉い。

イケメンで美人の妻持ち。歳は30歳。

こいつがいなければ物語は進まないと言っても過言ではない重要キャラ。

今後ボチボチと出る予定。

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