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第19話 シモンとの決闘2 (三人称視点)

 それはただの恐怖であった。

 老若男女問わず、その場にいた総勢一万二千人弱の国民および貴族は皆同じ感情を覚え、幼き子の泣き声だけが辺りに響いた。

 一人の王族、ロラン王子も同様であった。

 そしてそれが恐怖であると理解する者は数えるほどしかいない。

 その内の一人は今その恐怖と戦っているシモンである。


「…………何が起きて」

 リヴァを巨大な水が包み込んだ。その水の中は不思議と見ることは出来ない。

 今水の中で何が行われているのか、誰も分からない。

 リヴァを除いて。

 シモンは咄嗟に大剣を構えた。

 例え意味がないとしても、これから起こる何かに対処するために。それと同時にリヴァを閉じ込める水が、閉じ込める薄い膜がなくなったかのように重力に従い始めた。

 辺りに水が飛び散る。

 その一滴がシモンの口の中に入る。そしてそれが海水だと気づく。

「…………はあぁ」

 その中央でリヴァは嬉しそうに歓喜の声を上げた。

「久々の海水。懐かしい。この塩味。最高」

 リヴァの姿はすでに鎧の姿ではなかった。

 それは平たく言えば、戦う姿ではない。青いワンピース。水に濡れて少しだけ色が変わった普通の服装であり、今から騎士の決闘を行うにはあまりにも脆い。

 そして剣ではなく槍が握られた姿は何ともミスマッチしていた。

「誰だお前は?」

「あれ? 名乗ったよね? 名前はリヴァ」

「違う。そうじゃない。お前は本当に人間なのか?」

 言葉遣いが変わっていることに違和感を覚えながら、シモンがそう聞くと、リヴァは薄気味悪い笑みを浮かべた。

「人間だけど? 生まれも育ちも立派な人間。多分ね」

「多分?」

「それよりも」

 リヴァはよいしょの掛け声とともに槍を振り回す。槍についた水滴を辺りに飛ばした後、足から靴を脱ぐ。

 そして。

「あんたは、最強の騎士らしいね」

「ああ」

「残念、こちらは最強の生物だ」

「…………?」

 リヴァはシモンに向けて投てきを行った。


 槍の投てき。それはすさまじい速度でシモンの横をかすめる。

 それはシモンが反応したからではない。リヴァがわざと外したからだ。それがシモンの横を通り過ぎ、そして壁に突き刺さるその前に。

 その僅かコンマ数秒の間に、リヴァはその投げた槍を取った。

 音もなく、いや音を置き去りにして。リヴァはシモンの後ろへと移動していた。その強靭な脚力で。

 シモンがそれに反応を見せる前に、リヴァは取った槍を思いっきり振り回した。

「…………っ!」

 矛ではなく柄の方で、リヴァはシモンをはるか上空へと飛ばす。

 シモンの口から血が出た。鎧も粉々になる。ただまだシモンに余裕はあった。少なくともその時までは。

 遥か上空でシモンは地上を見る。

 リヴァがこちらに向けて手を向けているのが確認できた。

 それはこの国でも数える者しか使えないであろう究極魔法。

 巨大な水の柱がシモンを襲った。

 水の力がシモンを地面へと押し戻す。その後襲ってくるのは高い水の柱の中にある水圧である。

 究極魔法を人間が自身の魔力だけで使うことは決してできない。人間として所有できるエネルギーをゆうに超えるからだ。

 だからこそ、シモンはリヴァが周囲のエネルギーを集めたと考えた。

 でも、シモンははっきりと見た。

 リヴァがその魔法を使うまでに懸けた時間がごく僅かな点に。

「…………」

 あり得ないとシモンは口を動かした。

 エネルギーの収集にかかる時間はそれ相応なものがある。

 仮にも究極魔法を使うならば、長時間をかけてエネルギーの収集をしなくてはいけない。決して数呼吸する間にできるものではない。

 リヴァはそんなシモンを見て。

 魔法を切る。

 ほどなくして切れた水の柱が再び辺りに巨大な波として押し寄せる。その中央でシモンは地面に膝をつき、さも弱ったふりをしていた。

 その次の瞬間、地面を思いっきり蹴り飛ばす。

 高くジャンプをしたシモンはそのまま勢いにのせてリヴァへ斬りかかる。

 それをリヴァは槍で受け止めた。

「殺しに来てるけども、良いの?」

「もうお遊びは終わりだ。お前は危険だ。だから」

「だから?」

「俺は全力でお前と戦う」

「そうでなくちゃ」

 リヴァは槍を振り回し、シモンを遠くへと飛ばす。

 シモンは空中で回転し即座に地面に足を着いた。そして、再びリヴァへ向かう。

 斧を槍で防ぐ攻防が何度も続く。

 本来ならば、この時点で審判は二人を止めただろう。しかし、その審判が水の柱が消えた時の波で意識不明に陥っており、二人を止める者はいない。

 だからこそ、二人の戦いは終わらない。

「ふざけるな」

 その中、シモンは目の前の恐怖に対して、激しい嫉妬をしていた。


 シモンがかつて敗北を期したのは二人。

 一人はハイデン。

 そしてもう一人は戦場で出会った隣国のセリア。

 それまで自身が最強と勘違いしていたシモンは血のにじむような特訓をした。結果、騎士らしさを捨てればハイデンに勝てるようになるまで行った。あくまで騎士らしさを捨てた時であり、仮にもハイデンが騎士らしさを捨てればどうなるか分かったものではない。

 でもそれでも良かった。

 勝ったという事実はなくならないのだから。

 でも、今目の前に。

 どこか騎士らしさを残し、力を残し、戦う少女がいる。

「ふざけるな!」

 そんなことはあってはならない。

 この圧倒的な力の差はあってはならない。

 だからシモンは否定をしたかった。

 数十に及び、大剣と槍の攻防。それは必ずシモンから行われ、リヴァはそれをただ淡々と、しかしながら綺麗に防ぐだけであった。

 圧倒的な力の差がなければこんなことは起きない。

「本気を出すのじゃないのか?」

「出したよ? 少なくともさっきまでは。そして、ここまで力を出したのは初めてだ。だからあんたは誇っていい。でも、さっきの魔法で気づいた」

 リヴァは槍で大剣を遠くへ弾き飛ばした。

「本気を出す相手じゃないことに」

「ふざけ…………っ!」

 シモンはリヴァへ殴りにかかろうとした。

 それを槍で受け止めようとしたとき。

 両者の間にハイデンが降り立った。

「終わりだ。両者」

 その言葉で騎士の決闘は幕を閉じた。


 それは誰も予期できなかった結末であった。

 最強の騎士が騎士になったばかりの一人の少女に負ける姿。

 そして。

 新たな最強の騎士が生まれる瞬間でもあった。

キャラ紹介38

モブ アリサ

アリスの母親。38歳人妻。夫はいなくなった。

カウナ帝国が誇る大賢者の一人。騎士ではないが、大賢者という称号持ち。ただ貴族ではない。

船に乗り、隣の大陸へ王の命で、ある物を輸送する中、不運にもリヴァイアサンである主人公と出会う。主人公に殺されそうになるも命からがら自国へと戻って来た。

ちなみにアリスが同性が好きになった要因は、アリサとアリサの夫のちょっとしたいざこざが関係しているけども、この話は多分扱うことはない。

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