第6話 実技試験1
筆記試験が終わり、無事に俺たちは実技試験へと進むことになる。
実技試験は広場集合後、馬車で移動するらしく、数台の馬車が集まっていた。
そう言えば、実技試験だけ二日だ。
騎士見習いの試験みたいに一対一で上官と戦うわけではないのか。
「今年は何か、楽しみだね」
女子三人とアレットさんだけが乗り込んだ馬車はゆっくりと進む。そんな中、リナがそんなことを呟いた。
「今年は?」
「騎士試験の度に実技試験の内容は変わるらしいよ」
俺の問いかけにアリスが答えてくれる。
なるほど。
つまり騎士見習い誰一人して、どんな実技試験なのか分からないのか。
確かにそれは楽しみだ。
「前は何だったかな。騎士見習い全員でどっかの森の奥に行かされたね」
「あれは、難しかったね」
「どんな試験だったの?」
「全員がチームを組んで森の奥のどこかにある合格の書を持って帰るの。実力とチームワーク力を見る試験。でも森にはたくさんの手ごわい化け物がいて、私とリナちゃんは途中であきらめて、合格したのは二人だけだった」
「それは危なくないの? 安全面で。軽傷ならまだしも重傷を負ったりとか、最悪死者が出たり」
「大丈夫。試験官が四人すぐ傍にずっと付き添っていたから」
なるほど。それなら確かに大丈夫、なのか?
日本なら例えそうだとしても絶対に出来ない試験だけども。ここは異世界だし、強さを求められる騎士の試験とはしてはこういった試験も必要だろうし。
これでうまく行っているということは、大丈夫なのだろう。
「ちなみに今回の試験は四人あるいは五人で一つのチームとして試験に挑むことになる」
そんな会話をしていると、アレットさんがそんなことを教えてくれた。
「教えて良いのですか?」
「ああ。到着すればすぐにわかることだ」
四人もしくは五人。ということは四人のチームが二つに五人のチームが一つ。それぞれのチームに試験官の付き添いが一人なのだろうか?
公平を期すだろうから、アリス、リナたちとは離れ離れになるかもしれない。
「今年は少し面倒な試験だ」
最後にアレットさんはそんなことを呟いた。
馬車が到着するまでだいぶ時間が掛かった。馬車の外の景色は見えなかったため、実際の時間よりも長く感じたかもしれない。
馬車の外に出た俺たちは一列に整列させられる。
目の前に映る光景は洞窟であった。扉が設置され、誰も入れないようにしている洞窟。
騎士の数はルドルフさん、アレットさん、騎士副隊長二名。
そして洞窟の入口に初めから立っていたのだろう二人の騎士。
「今回の試験の内容は、この洞窟の奥に設置してある合格の書を持ち帰る試験だ。四人ないし五人のチームを三つ作る。見ての通り、危険な洞窟だ。道中多くのモンスターに会うだろう。そのモンスターたちを殺す許可は与える。試験よりもまず自身の命を守ることを考えるんだ。安全面としてそれぞれのチームに試験官が二人付き添う」
付き添いの試験官は二人。
ルドルフさん、アレットさん、騎士副隊長が二人、そして入口の騎士二人?
それなら人数に問題はないけども。入口のいかにも警備している騎士二人を付き添いにできるのだろうか?
なんて思っていると、もう一台、馬車がやってきた。
その馬車から二人の女性騎士が優雅に降りて来る。
「遅れてすまない」
そう謝罪しながら、二人の女性騎士がルドルフさんの隣に立つ。
第一印象を言えば、綺麗な人、だった。
肩にかかる程度の長さの綺麗な金髪。透き通り、見通すような碧眼。真っ白な肌。華奢な体には似合わない巨大な斧。
その立ち姿は騎士というよりも女王のような。
「諸君。私は騎士隊長第九位、ディーナ・ファテーエワだ。今回、試験官として同伴することになる。よろしく頼む」
その自己紹介に皆がざわめき始める。
騎士隊長の一人?
それに第九位?
もしも順位が強さの順番なら、ディーナさんはこの国で九番目の強者? めちゃくちゃすごい人じゃないか。そんな人が騎士試験の付き添い試験官をするのか?
「そうだった。隣は私の補佐官であるフィオナ・テトラーゼだ。フィオナもよろしく頼む」
ディーナさんの隣に立つフィオナさんが頭をペコリと小さく下げる。
フィオナさんはどちらかというと綺麗というよりもかわいい子だった。隣が目立ち過ぎて隠れているが、フィオナさんもすごく魅力的な女性だ。
その手には弓が握られている。
「ルドルフ。試験の説明は?」
「もう終わっています」
「そうか」
ディーナさんはではと再び俺たちを見て。
「では試験を始めるとしよう」
ディーナさんはそう高らかに言った。
チーム別けが発表される。
俺を除いたチームメンバーはアラン君、ホン君の二人だけ。他は五人チームが二つなのに俺たちだけ三人チームだった。
そして付き添いの試験官はディーナさんとフィオナさんの二人。
アリスとリナは同じチームで、試験官は副隊長が一人とアレットさんみたいだ。
「あのディーナさん。これは何かの間違いでは?」
「いや、間違いではない」
勇気を振り絞りディーナさんに聞いてみるが、ディーナさんは首を横に振る。
アラン君、そしてホン君も驚いている。
「どうして僕たちのチームは三人なのですかね?」
「私が二人分の力があるとみられたのかもね」
「それなら納得ですね」
「それとも。もしかしたらアラン君が五人分の実力があるとみられたのかも」
「僕にそんな力はないです」
なんてアラン君が慌てふためく。
アラン君は俺がいるからか、それとも騎士隊長であるフィオナさんが付き添いだからか。恐怖心は見えなかった。
俺はそんなアラン君へ微笑みかけるが、心の中は笑えていない。
何故ならフィオナさんも驚いているからだ。
ディーナさんの傍に寄り添い、耳打ちをする。
すると。
「何だお前は見えないのか?」
「……………………」
「安心しろ。見えなくても可笑しくはない。相当高度な魔法だ。私もはっきりとは認識できていない」
「…………」
何を話しているのかさっぱり分からない。
見えない?
認識できない?
なんだ。幽霊でもいるのか?
他のチームが順番に洞窟に入っていく。アリスとリナが洞窟に入る、その少し前に俺の方に心配そうな表情を向けた。
それを俺は笑顔で返し。
この先の未来に少しだけ不安が生まれた。
キャラ紹介28
モブ フィオナ・テトラーゼ
20歳女性。ディーナの補佐官、実質騎士副隊長を若くして務める。
家柄の関係上、ディーナとは生まれた時から関係があり、仲が良い。そんなこともあり、身内びいきで実力なく上に上がった女として周囲からは思われているが実際は弓の名手で天才的な実力者。
ディーナ以外に彼女の言葉を聞いた者はいない。親すら会話をしたことがないとかどうとか。




