第2話 変身したら女になった
俺がリヴァイアサンに生まれ変わってから3日が経った。
生まれ変わってからの人生はと言うと。
体をくねらせたり。
魚を食べて。
また体をくねらせて。
また魚を食べて。
眠る。
これを繰り返す毎日。
体が大きいからかカロリー消費が増え、数時間経てばお腹が減る。今度は美味しい魚でありますようにと祈りながら、俺は見たこともない魚を食べる。鋭い牙で全てを粉砕する。
うん。美味しくも不味くもない。
まあ食事には困らない。
何より、働いていた頃と比べるとストレスがない。
素晴らしい。
リヴァイアサン万歳!
とは言ったものの、流石に退屈になってきた。
初日に出会った小人たち。俺が大きすぎて小人に見えていた普通の人間たち。あの人間とコミュニケーションを取りたい。
そして願わくば陸に上がりたい。
この世界を見て回りたい。
この世界はどんな世界なのだろうか?
でも、そんなことはできない。
人間の船に近づけば、どういうわけか船の乗組員たちは桶のようなものを投げてくる。そして逃げていく。痛くはないのだが、海を汚さないでほしい。
仮に近づけたとしても、もう1つ問題が。俺は言葉が話せない。うめき声は出せるのだが、喉が人間のそれとは違うため、人間の言葉が話せない。
どうすればいい?
出来ることといえば、大口を開けて火の息を吐き出すことと、鼻に力を入れて煙を出すことぐらいだ。
何もできない。
しかし、俺はこの世界に来て1つ成長した。
魔法だ。
これについて詳しく話すと、昨日出会った船の乗組員の一人が魔法を使ったことから始まる。
魔法はちっぽけな火だった。
人間と比べると人間よりも大きい火の玉だったが、俺からすると小さく。体に当たっても、痛くも痒くも、熱くもなかった。
俺はその光景に感動して、思わずその船を追いかけてしまう。そして、誤って船を沈めてしまう。
そして船の乗組員を食べてしまった。偶然だ偶然にも口の中に入ってしまったのだ。
リヴァイアサンになり、人間だった頃の感情がなくなったのか、殺した事実は気にならなかった。
それはさておき、この魔法が使える乗組員を食べたことによって、体に異常が現れた。
そう、魔法の知識を手に入れたのだ。
どういう原理か。それは分からないが、俺が食べた乗組員は優秀な魔法使いだったらしく。
俺は魔法を理解した。
リヴァイアサンも使うことができるらしく、俺は魔法を使ってみることにする。
火の魔法、水の魔法、風の魔法、土の魔法。
ありとあらゆる魔法の中で、もっとも俺が興味を持った魔法は今の俺に最も必要なものだった。
変身魔法だ。
人間から人間以外へ変身するために生まれたこの魔法は、俺が使えば人間に変身することができる。性別を偽ることはできないため、格好いい男になれることだろう。
なんて素晴らしい!
イケメンに変身出来れば、女性と夢見た行為が出来ることだろう。
よし!
さっそく使ってみる。
えっと。
魔法を使う際に、詠唱の言葉を唱えないといけないから。
心の中で唱える。
ぷ、る、ら、る、り、れ、ろ、ぴ、る。
不思議な言葉の文字列を唱えると体が光輝きだした。
徐々に小さくなっているのが分かる。
そこでふと気づく。
あれ、海の中で使ったらやばいのでは?
うわっぷ!
それまで波に流されることは無かったのに、体が流されていく。
波のいくまま、運に任せて。
俺はどこかへと流されていった。
……
…………
………………
気づくと知らない場所にいた。
小さな砂浜。奥は森。
とにかく起きよう。
体を起こして、腕を見ると本当に体になっている。
「すごい」
小さく呟く。
うん、あれ?俺の声ってこんなに高かったか?
そして腕にも違和感。白くて細い。
ふと下を見る。
足元が見えない。何かが視界を遮る。
胸だ。
「…………はて?」
どうして?
何が起きている?
状況を整理しよう。
変身魔法は性別を変えることは出来ない。幻覚魔法とは違うからだ。
じゃあ、なぜ?
なぜ胸がある。
俺は急いで海へ向かう。そして海面を覗く。
そこには美少女がいた。
体を触る。感覚はある。
ふと、あの魔法使いの知識を1つの、思い出す。
リヴァイアサンは雌だ。
次から本編始まります。
次の投稿は4日後を予定しています。