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第10話 アレックさんと戦った

 始まった訓練。

 アレックさんがいるからどんな特別な訓練なのだろうと思ったけども案外普通で。

 二人のペアを作り、模擬戦を行う。そしてその模擬戦に対してアレックさんが様々なアドバイスを行う。そして全員が一度ずつアレックさんと一対一で戦うことだった。


「君は剣の癖が強いね。斬り方が弧を描いてる。横にね。まっすぐ振り下ろす方が力が出る。でも、トリッキーな戦いをするときは君の癖も武器になる。どちらも練習してみよう」

 とカーク君、略してカー君に対して。


「君は左からの受けが弱い。重心がズレてるのかな? でも人間、そう簡単に重心は治せない。だから常に右を相手に見せて戦うと良いかもしれない。言い換えるなら右は強いわけだから」

 とリーク君、略してリー君に対して。


「君はバランスが良い。癖も少なく、重心もしっかりしてる。だからこそ動きが単調だ。特徴がない。君なりの強さを身につけたらもっと強くなれるよ」

 とノーク君、略してノー君に対して。


 普通に普通の訓練だ。

 女好きだから男には厳しいのかと思ったらそういうわけではなく、誰でも隔てなく優しく教えている。

 順番通り進み、残りはアリス、リナ、俺の女子三人組になる。

「さてと、次は誰からいく?」

 アリスは獣のように威嚇をしており、リナは怯えている。

 性格に難はあるけども、アレックさんの実力は申し分ないみたいだし。

 次は俺が行こうと思った。

「私が行きましょう」

「リヴァちゃん、良いよ。私がいく。リヴァちゃんに変なことされたら私……」

「大丈夫。みんなの前じゃアレックさんも変なことはしないと思うから」

「でも」

「俺の信頼酷いなあ」

 何を今更。

 その後、俺とアリスの口論が続くが、アリスに対してそれ以上反論してきたら嫌いになると言ったらすんなりと諦めてくれた。

「というわけで、私になりました」

 そんなこんかで、俺が次の特訓相手となる。

「そう言えば、リヴァお嬢様は、強いと聞いたね。少しだけ楽しみだ」

「それは誰から?」

「ヨハンさんから」

 やっぱりヨハンさんか。ヨハンさん、俺のこと話さないでほしい。なんて言っても人の噂話を止めることなんか出来っこない。

「特訓を始めますか。どこからでもお好きにどうぞ」

 アレックさんがそう言って、剣を構えずに言った。


 さて、どうしたものか。

 俺の強いってどれぐらい?

 ヨハンさんはどんな風に説明したのだろう。分からないからすごく困ったぞ。

 だからと言って、酷い手加減をしたら後で色々と言われそうだ。

 というか、騎士隊長に対して手加減する立場。

 そして自分の方が強いと思っているアレックさん。

 なんだか自分がめちゃくちゃ酷い人間、じゃなくてリヴァイアサンみたいじゃないか。いや、人間殺してるし酷いか。

 とにかく。

 オークぐらいの力加減が妥当かな?

「行きます!」

 俺は模擬剣を構えた。

 皆に注目される中。

 俺はアレックさんへ突っ込んだ。


 模擬剣を縦に降る。

 それをアレックさんは剣で受け止めて、俺はそんなアレックさんにつかさず回し蹴りをした。

 それをしゃがみ避けられる。

 アレックさんは反撃はしない。あくまで訓練だからだ。この訓練で男子の中でアレックさんに攻撃を当てた男子はいない。

 せめて俺ぐらい、攻撃を当てたいものだ。

 数度、アレックさんへ向けて模擬剣を振るう。縦に横に、時には回し蹴りなどの体術を加えて。しかし、すべて受け止められるか避けられてしまう。

「すごいね、君。予想以上だ」

「そうですか? ありがとうございます」

 アレックさんが褒めてくれる。

 嬉しくはない。

 というかアレックさんも中々やるな。

 普通にやっていたら無理だな。

「一つ、質問いいですか?」

「何だい?」

「魔法は使っても良いですか?」

「もちろん良いとも」

 その言葉を聞き、俺は笑みを浮かべた。

「後悔しないでくださいよ」


「ああ」

 アレックさんが頷く。

 その間に俺は地面に模様を描く。錬金術の魔方陣。それは光り輝き、地面から模擬剣が新しく生まれる。服などと違い、模擬剣ぐらいなら地面の土を使い作ることができる。

「へぇ」

 アレックさんが関心したように呟く。

 俺は二つの模擬剣、ひいては二刀流でアレックさんへ向かう。

 二刀流で舞い。

 力任せの攻撃と回避。

 それをアレックさんは一本の剣で受け止めて行く。

「魔法とは錬金術のことかい?」

「いいえ」

 一連の攻防の中、俺は器用に足で地面に魔方陣を描いていた。

 それにアレックさんが気づいた時、俺は模擬剣を空高く放り投げた。それと同時に地面から新しく模擬剣が生まれる。

「三刀流?」

「でもありませんよ」

 俺は手にある二本の模擬剣を使い、アレックさんに斬りかかる。それを受け止められて、力任せに退けさせた。

 そして空から落ちてくる模擬剣を回し蹴りで思いっきり蹴り飛ばす。これは副隊長と戦った時と同じ方法。

 だから避けられる。

「危なかった……」

 ここまでは予想通りだった。

 アレックさんは隣を飛んで行った模擬剣に無意識に目がいったみたいで。俺の動きが止まっていたため油断していたのだろう。

 俺の目的は別にある。

 瞬間、模擬剣が弾け飛んだ。

 それは水の攻撃となって辺りに散らばる。

「なっ!」

「うわっ!」

 それが周囲の人の顔を体を濡らす。

 そう、そうなれば。必ず人は目をつぶってしまう。必ず隙が生まれる。

 その隙を俺は攻撃した。

「うん。良い動きだったよ」

 でもこれも受け止められた。

 目を閉じたまま、俺の動きが分かっていたみたいで。

「流石ですね。騎士隊長なだけあります」

 俺は褒めてしまった。

「見直した?」

「むしろ殺意が湧きました」

 その時の俺は何を考えていたのか自分自身分からない。

 そう、ただ。

 ムキになっていた。

 ダンのようなミスをしないよう気にしつつ。

 俺はアレックさんへ向けて手を向けた。

 巨大な魔方陣が俺の前方に作られる。


 刹那、巨大な火の玉が生まれる。それはリヴァイアサンだった頃見た魔法使いが使っていた魔法。


「くっ!」

 初めてアレックさんに余裕のない表情が生まれる。

 アレックさんは後方へ飛び逃げた。

 俺はそんなアレックさんへ向けて模擬剣を一つ投げた。

 それをアレックさんははじき返す。その時点でアレックさんは俺のことを見失っていた。だからこそ俺は驚異的な脚力でアレックさんの背中へと回り込み、そんなアレックさんの背中から模擬剣で軽く攻撃を当てた。


 それは時が止まったかのように。

 静寂だった。

「今日は私の勝ちで良いですよね?」

「ああ、良いよ。それにしてもすごいな。まさかあんな魔法を使われるとは思いもしなかった」

 なんて会話をして、ふと俺はルドルフさんに目が行った。

 驚きの表情の中、一人だけ怒りが見えた。

「なるほど、君なら適任かもしれない」

 その最後の言葉に俺は気づかなかった。


 その後、ルドルフさんからお叱りを受けた。

キャラ紹介14

モブ 伸ばし棒三人兄弟

カーク、リーク、ノークの三人のこと。

それぞれカー君、リー君、ノー君と呼ばれる15歳の少年。別に兄弟というわけではない。実力は中の上。

一章2話で「なんだ?あの可愛い子は?」と発言したのはカー君。

「ヨハンさんは別の目的で紹介したんじゃないか?」はリー君。

「なんで豚を持っているんだ?」はノー君。

それぞれエロに目覚めており、リヴァの哀れもない姿を毎日のように想像していたりしていなかったり、毎晩夜な夜な何かしていたりしていなかったり。

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