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第7話 初めてのお茶会

 ダリアさんに誘われたお茶会。

 それはダリアさんとヨハンさんの屋敷の中庭で行われる。

 綺麗に整えられた植物。真っ白な丸いテーブル。それを囲む五つの椅子。テーブルの上にはケーキスタンドや紅茶の入ったカップが置かれている。

「紹介しますね。私の新しい友人のリヴァさんです」

 ダリアさんにそう、他のお茶会参加メンバーに紹介してくれる。

 俺とダリアさんを除き、三人の女性が椅子に座っている。そんな俺たちを守るかのように遠くでクロエさんが静かに立っている。

 俺はとりあえぶ三人に向けて笑顔を作る。

「リヴァと言います。よろしくお願いします」

 俺の自己紹介から始まり。


「私はリズ・ノイラートと申します」

「私はラミ・クレムと申します」

「私はエマ・ギューデンと申します」


 三人がそれぞれ自己紹介をした。

 姓を名乗らなくても、身なりから貴族と分かるほど、三人とも立派な服で綺麗に飾られている。

 歳は見た目でいうとリズさんが40歳。他は30歳前後といったところだ。

「まあ、なんて綺麗な子。失礼ですが、どこの貴族の方ですか?」

 ラミさんからどこかで聞いたことがある質問。

「いえ、庶民です」

 そう答えると、三人は驚いた表情になる。

「まあまあまあまあ、こんな綺麗な子が?」

「一体どのようなお手入れをされているのですか?」

「どこでダリアさんとお知り合いに?」

 リズさん、ラミさん、エマさんの順に質問。

「ちょっと皆さん、リヴァさんが困っているでしょう?」

 ダリアさんが止めに入る。

「ダリアさんとの出会いは、船が難破した時に助けていただいた時です。今は騎士見習いとして騎士を目指しています」

「騎士見習い?こんな綺麗な子が騎士として戦うのですか?そんな、肌を傷つけることになりますよ?こんなに綺麗なのに勿体無い」

 ラミさんがそう言ってきた。

 まあ、確かにそうかもしれない。でも。

「いえ、私は身寄りがない身。ヨハンさんの誘いは大変嬉しいものでした」

「なら、騎士を目指すのではなく、嫁を目指すのはどうですか?私にはあなたぐらいの息子がいます。愚息ですし、勿体無いぐらいあなたは美しいですが、どうでしょう?」

 リズさん。リズさんの年齢的に息子は20歳ぐらいか。

「すいません。お会いしていない方と結婚は。それに私はまだ結婚を考えていません」

 というか、考えるつもりがありません。

「彼氏はいないのですか?」

 次はリズさん。

「そういうのも」

 男と付き合う?反吐が出るぜ。

「きっと男たちはあなたが魅力的すぎて、手が出せないのでしょうね」

 ラミさんの言葉。

 何だこの質問攻めは!

 愛想笑いも辛くなってきたぞ!

 もっとのほほんと紅茶を楽しむものじゃないのか?誰一人ケーキどころか紅茶にも手をつけないぞ。紅茶を飲みたいのに飲めないお茶会とか、取引先で出されたお茶が飲めない日本のよう。

「そうだ!」

 ふと名案を思いついたと言わんばかりにエマさんが手を叩く。

「リヴァさんはドレスなど興味ありませんか?」

「ドレスですか?」

「ねえ、良いでしょう、ダリアさん。リヴァさんにいろんなドレスを着せてみたいわ」

「それは良い考えね、エマさん」

 あ、嫌な予感がする。


「やっぱり純粋さが出る真っ白なドレスが良くなくて?」

 リズさんに言われるがまま、真っ白なドレスを装着!

「赤色で可愛さを表現するのも良くては?」

 エマさんに言われるがまま、真っ赤なドレスを装着!

「黒のドレスで魅惑の女性を飾ってみましょう」

 ラミさんに言われるがまま、真っ黒なドレスを装着!

「この髪色ですもの。青のドレスが1番です」

 ダリアさんに言われるがまま、青のドレスに決まった。

「髪型はどうしましょう?」

「後頭部で髪をまとめて上品さを出しましょう」

 リズさんに言われるがまま、髪型が変わる。

「後頭部ではなく、サイドにまとめてはどうでしょう?」

 エマさんに言われるがまま、髪型が変わる。

「いいえ。一部の髪をまとめて可愛さを表現しましょう」

 ラミさんに言われるがまま、髪型が変わる。

「リヴァさんはそのままが1番だと思います」

 ダリアさんに言われるがまま、髪型が元に戻る。


 その後、貴金属で綺麗に飾られた俺は椅子に座らされる。

「まあまあまあまあ、なんて可愛らしい」

「娘に欲しいぐらい」

「きっと男たちに見せたら引っ張りだこでしょうね」

 リズさん、ラミさん、エマさんの順。

 はい、そうですね。まる。

 ふと、俺は少し離れた場所で静かにこちらを見守るクロエさんに目がいく。

「あの、クロエさんも貴族の娘ですよね?彼女もお茶会に参加させませんか?」

「クロエ?」

「ああ、フェーベル聖の」

「忘れていましたね」

「彼女は、少し」

「騎士ですからね」

「仕方がないのです」

「でも、私も騎士見習いですよ」

「その」

「何といいますか」

「ほほほ」

 作り笑いを作る三人。

「リヴァさん。クロエのことは気にしないでください」

 そしてダリアさんが口元に指を当ててそう言った。

 どういうことだ?


 この謎は分からないまま。

 様々な世間話で盛り上がったお茶会は気づけば夕暮れ時を迎える。

「そろそろお開きにしましょうか」

 ダリアさんの言葉でお茶会は終わる。

 馬車の迎えが来て、貴族の方達は帰っていく。

 終わりはあっという間で、気づいたら俺とダリアさん、そしてクロエさんだけになっていた。

「そうだ」

 ダリアさんが俺に向かって。

「そのドレスと貴金属、リヴァさんに差し上げます。私なんかよりもリヴァさんが来ている方が、ドレスにとっても本望でしょう」

「いえ、さすがにこのような高価なものは」

「大丈夫です。自慢するわけではありませんが、私たちにとってそのドレスと貴金属はささやかなプレゼントとして渡せる程の物なのです」

「ではお言葉に甘えて」

 これ以上、断るのもそれはそれで失礼な気がして。

「ありがとうございます」

 俺はお礼を言った。

 するとダリアさんは嬉しそうに。

「こちらこそ、私の我が儘に付き合っていただきありがとうございます。リヴァさんとの出会いは運命だと私は思っています。この縁を大事にしていきたいのです」

 その言葉に。

 俺は嬉しくなった。



 その後、ダリアさんの馬車で騎士見習いの施設まで送ってもらった俺は女子寮でアリスとリナに出迎えられた。

「な、な、なな」

 俺はドレス姿のままである。

 そんな俺を見て、アリスが固まる。開いた口が閉じないとはまさにこのことだろう。

 なんて思った矢先、物凄い勢いで詰め寄って来た。

「かわいい!すごくかわいい!リナちゃん!今日だけ持ち帰りの許可を!」

「却下」

「お願いします!何でもするから!」

「じゃあ、これからずっと、リヴァちゃんの部屋に入らないと、約束する?」

「それ以外でお願いします!」

「じゃあ、駄目」

 何故俺を持ち帰るどうのこうのをリナが決めるんだ。

「それよりも」

 リナが羨ましそうに俺の方を見てくる。

「良いなぁ。すごく綺麗なドレス」

「リナも着てみる?」

「私なんか、似合わないから」

「はい!私は着たいです!」

「アリスはダメかな」

「そんなあ~」

 残念がるアリス。

 俺は楽しくて、笑った。

 何とも楽しい毎日になった。

 それは日本にいた頃は体験できなかったもの。

 いや、したくても出来ないものだった。

キャラ紹介11

モブ アレット

22歳の金髪女騎士。作中の騎士の中で最もくっころが似合う騎士。

でもされたことはないし、この世界のオークはそんなことはしない。

佇む姿はどの騎士よりも騎士らしい騎士。

でも実は残念系女性(予定)

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