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第6話 初めての休日でのこと

 ブヒブヒと朝の鳴き声が聞こえる。

「おはよう、ブー」

 俺の上に乗ってブーが可愛い顔を見せてくる。

 ブーを抱き上げ、隣に置く。そして俺は背伸びをした。

 今日は初めての休日である。

 さてもう一度今ある問題をまとめよう。

 一つ目、怖がられている。

 アラン君が弟子入りしてきた日。その日を境に男子たちから恐れられてしまった。ダンを倒した女なんて呼ばれた。

 女子と男子の溝はより一層深くなる。男子たちとも仲良くしたいが少し難しそうだ。

 これは少しずつ時間をかけないといけない。


 二つ目、アリスについて。

 上半身を起こした俺はさてと、と立ち上がろうとしてふと違和感に気づく。

「…………ん」

 寝息が聞こえた。

 隣を見る。

 アリスが寝ている。

 毎晩である。毎晩アリスは夜這いをしてくるのだ。

 最初の日、アリスに気付いた俺はアリスと交渉をした。変なことをしないこと。しないのであれば一緒のベッドに寝ることは許そう、と。その結果が毎晩の夜這いである。

 最初は反応を見せたが、今となってはアリスが来ても無視して寝るようになってしまった。

 朝、起きた俺には毎回仕事がある。

 夜這いは許そう。俺はね。でもリナが許すとは限らない。

 そっと立ち上がり、部屋を出る。そして二つ隣の部屋の扉をノックする。

 しばらくしてリナが扉を開けてくれる。

 可愛い。すごく可愛い。アリスと違ってリナは至る箇所が女の子らしいのだ。

 着ている洋服から、部屋から漂う匂い。扉の隙間から見える部屋の内装。至る所が可愛らしく、毎回朝早くにこの子と挨拶ができて俺は幸せだなと常々思う。

「おはよう、リヴァちゃん」

「あはよう」

「どうか、した?」

「アリ…………」

「ちょっと待ってて。すぐに準備する」

「…………スが」

 なんという事でしょう。

 朝早いがために可愛らしく潤んだ瞳が一瞬にして獣の眼へと変わる。そして女の子の部屋にあってはならない縄を取り出して。

 静かに、でも素早く。

 まるで暗殺者のように。

「…………アリスちゃん」

「うん?あ、リナちゃん。おはよう。どうしたのこんな朝早くに?それに私、リヴァちゃんの部屋にいるはずだけど」

「…………」

「その手に持ってるのは何?どうしたのリナちゃん?」

「今日は、休みの日だから、ね。長い、かも」

 しばらくして悲鳴が聞こえて来るが、俺は無視して自室から遠ざかる。

 まあ、アリスに関しては特に実害はないため良しとしよう。


 三つ目、アラン君について。

 女子寮を出て、俺は広場を目指す。

 するとアラン君が一生懸命模擬剣を振っているのだ。

「あ!」

 俺に気づくアラン君。

「おはようございます。リヴァさん!」

「おはよう」

 アラン君は素直な子で、毎朝早くから模擬剣を振るのを日課にしているらしい。

 なんて健気。

 それなのにあの弱さ。

 なんて可哀想な子。

 さて、このアラン君の問題とは、師匠として何もしてあげられない事だ。

 俺の強さは種族的なものであり、俺自身はその強さを何一つ活用できていない事だろう。

 つまり、俺はある意味で弱いのだ。アラン君よりも。

 そんな俺がどうやってアラン君に強さを教える?

「頑張って」

「はい!はやくリヴァさんに追いつけるよう頑張りたいと思います!」

 気づけば、ただの舎弟のようだ。

 まあ、いつか考えよう。

「あの!リヴァさん」

「どうかした?」

「もう少し女性らしく、そのような格好で外に出るのは、どうかと」

 そうアラン君に言われて、俺は自身の服を見る。

 うむ。

 ただの寝間着だ。

「そんな気になるものかな」

「気にするべきです!」

 アラン君が微妙に赤くなる。

 それもそうだな。

 今の俺は女性なのだから。

「分かった」

「それと」

「…………ん?」

「今日、リヴァさんは何をするつもりですか?」

「今日は街を散策するつもり」

「そうですか」

 どうしたのだろか?


 自室で服を着替える。

 アリスはいなかった。

 リナとどこに行ったのかは気にしない。気にしない。

 自前の青い服を着て、さあ初めての街だ。

 この街に来たのに、すぐに騎士見習いになって街がどんなのか見てないからな。

 楽しみだ。

 俺は自室の机の中からお金の入った袋を取り出す。

 この世界のお金は銅貨、銀貨、金貨。それぞれに小、中、大の三種の大きさがあり、計九種類がある。

 小が五枚で中が一枚、中が二枚で大が一枚、大銅貨十枚で小銀貨一枚、大銀貨十枚で小金貨一枚である。

 騎士見習いに給料は大金貨一枚。

 その一割、小金貨一枚か前払いとして貰えた。

 さあ、このお金を使って、街で豪遊しようじゃないか。

 はっはっは!


 なんて笑ったのは意味がなかった。

 ブーをアレットさんに預けようと持って行ったら、沢山の兵が女子寮の前に集まっていた。そして一つ、見慣れた馬車が。

「リヴァ」

「アレットさん。これは何が?」

「リヴァに会いたいと」

「リヴァさん!」

 馬車の中かはダリアさんが出て来た。

 ダリアさん?

 どうして、ダリアさんが?

「リヴァさん、今日のご予定はお暇ですか?もし良かったら、今日の開催しますお茶会に来られませんか?」

「お茶会?」

 お茶会か。

 行きたくないな。

 でも、ここで断るとしよう。

 どうなるだろうか。

「喜んでお受けします!」

 それに笑顔が眩しいダリアさんの招待を断れるわけがなかった。

 さらば、俺の休日。

キャラ紹介10

モブ ルドルフ

男の騎士。騎士見習い養成施設の教官も務めている。歳は三十二歳。妻子持ち。

過去に計17人ほど騎士として育て上げた。

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