第5話 アラン君が弟子入りしてきた
「それで、何があったんだ?」
生徒指導室のような、そんな部屋で、俺とアリスとリナとアラン君の四人は座らされた。
「ダンがリヴァちゃんに手を出そうとしました」
「そしてそれをアラン君が止めようとしました」
「アラン君がやられたので私が仇をとりました」
「全部弱いくせに立ち向かう僕が招いた事です」
アリス、リナ、俺、アラン君の順に状況説明。
「そうか」
ルドルフさんが変な表情になる。
「まあ、ダンが悪いのは分かっていた。だが、お前達も悪い。特にリヴァ。何故仇をとろうとしたんだ?」
何故?
その質問に俺はふと考え込む。
そう言えば、どうしてだ?可哀想と思った。だからと言って今までの俺は助けたか?
自分の感情がよく分からないぞ。
「分かりません」
「まあ、良い。理性よりも先に感情が動いたのだろう。だがなやりすぎた」
「やりすぎた?」
「何故、ダンは震えていると思う」
そう。
ルドルフさんの隣にダンはいる。
そして何故か震えている。
「冷え性だから?」
空気を変えようと変なことを言ってみる。微妙な空気になる。
「違う。リヴァがやりすぎたからだ。昨日まで、ダンは騎士見習いの中で一番剣の才能があった。それなのにお前が一方的に圧倒的に倒したからだ」
「はあ」
「つまり、プライドが粉々になった」
「なるほど。では、またそのプライドを粉々にしたら、かえって元に戻るのではないでしょうか?」
「何故そうなる!?」
ルドルフさんが声を荒げる。
隣でダンがより一層震えた。
そこまでのことをしただろうか?プライドとかではなく、精神面がやばいことになってるぞ。
「Sなリヴァちゃん、良い気がする。リヴァちゃんなら」
隣でアリスがそんなことを言ったが、リナの突きに黙る。
「まあ、この一件はどちらも悪いとして片付けるしかない。リヴァが強いことはわかった。だが、だからと言って力を振り回すな」
「ですが」
「どうした?」
「テストで他の人たちと圧倒的な差を感じました。これも力の暴力では?」
「勉強しろ!」
最後にまた怒られた。
今日の午後の訓練は特別になしになった。
実技訓練。学問より楽しそうだったのに、残念だ。
「リヴァちゃん、強いんだね」
帰り道。
アラン君はどこかへ行き三人で帰る中、アリスが言った。
「格好良かった」
「そう、ありがと」
「リヴァちゃん、学問と、実技の差が、あるね」
「ふふふ。私を見くびってもらったら困る」
なんて会話をして、すると後ろからアラン君が走ってきた。
荒くなった呼吸が元に戻って。
「あの、リヴァさん」
「何でしょう、アラン君」
「さっきはありがとうございました」
「良いよ。ダンに絡まれた私が悪かったから」
そして、それが回避できないのだから、あれ。やっぱ一番悪いのはダンでは?
もう少しやり返しておけば良かった。
「謝るのは良いことだけども、私とリヴァちゃんの時間を邪魔しないで。シッシッ、ほら帰る」
アラン君にアリスが突っかかる。
「アリスちゃん?」
「ごめんなさい。何でもしますから許してください」
「アリスもリナもアラン君が困ってるよ」
よくよく考えたら、男子と女子には溝があるんだよな?
でもアラン君はあまり気にしていないみたいだ。
アラン君が微妙に顔を赤らめて言った。
「その!」
「はい、何でしょう」
「お礼とともにお願いがあります」
「お願い?」
その言葉に俺とリナが顔を見合わせて。
アリスが声を荒げる。
「まさか!あなたもリヴァちゃんに一目惚れしたの!ダメよ。私の方が先。先に告白したのだから!私がリヴァちゃんと付き合う権利がある!」
「アリスちゃん、誓約書」
「ごめんなさい。でもダメ!」
今日の朝見たら反省してるように感じたけども、アリスは何一つ反省していないのかもしれない。
いや、絶対にしていない。
「それで、お願いって」
俺は聞くことにした。
すると。
「僕を弟子にしてください!」
アラン君はそう言った。
俺はふむと考え込む。
「弟子?」
「弟子ってあの弟子?」
アリスとリナが顔を見合わせる。
「良いでしょう」
「良いの!?」
アリスが声を荒げる。
俺の言葉にアラン君が嬉しそうに頭を下げてきた。
「ありがとうございます!」
そんなこんなでアラン君が弟子になった。
キャラ紹介9
ヒロイン アラン
男の子。十二歳。年上に憧れるお年頃。
弟子入りした時点でリヴァのことが異性として好きだが、まだその気持ちに気付いていない。
努力しているが弱い。
でも正義感は立派な騎士のよう。
アラン君の恋は実らないから、リナあたりとくっつければ良いやと作者は適当に思ってる。
趣味は運動。特技は努力。
何故弱いアラン君が騎士見習いになれたのか、七不思議の一つだったりそうでなかったり。