一筋の光
今回は、サラ視点です
SARAside
あれから……三ヶ月が経ったのかしら……
毎日同じ場所に居て、
日付の感覚も完璧に失っている
私は、このトウタのアジトにいる間
トウタからの仕打ちが酷かったことしか記憶にない…
……それは、本当に酷かった…
私の1日の最初は水を掛けられて
起こされる事から始まる
バシャアーッ
私の身体に水が投げかけられる
ゆっくり目を開けるとそこには
仁王立ちをしているトウタが楽しそうに
ニコニコしながら私を見ていた
『よぅ……起きたかァ?』
私はそんなトウタにウンザリした様に答える
『えぇ……朝から、貴重な経験が出来たわ』
と、
皮肉を込めて、薄ら笑いで言ってやる
『そうか……なら、もっと良い経験が出来るぜェ?』
と言いながらトウタは、懐に収めていた小刀を構える
『なっ…何をする気?』
私は慌てて尋ねる
『なぁに…ホシの一族はァ、不老不死なんだろォ?
なら…
本当に不老不死かどうかァ…
試したくなったのさァ‼︎?』
と言いながらトウタは私の左腿辺りを小刀で刺した
ズブッ
『ッ…ゥくっ…』
不老不死とは言え痛みを感じない訳じゃない
私はその痛みから軽く呻き声を上げる
刺された箇所は最初こそ血が沢山出たが
次第に血が止まり傷口は完全に塞がった
『へぇ……不老不死ってのも、
便利なもんだなぁ?』
とトウタは笑いながら私に言う
『好きで…なった訳じゃないわ……』
私は目を伏せながら言った
こんな能力有ったって……なんの訳にも立たない
ううん、逆に生きてく上で……邪魔としか言えないわ
私が、そんな事を思っていると
『そうなのか?……まぁ良い
これからずっとお前は……俺のオモチャだ‼︎』
それからというもの 来る日も来る日も私は……
トウタに殺されていた……
最初は手や足……
でもそれだけじゃ、飽き足らなくて…
今度は胸や腹部を切り始める
最近では顔の一部を抉り出すという…
残酷極まりない事を仕出すようになる
前に、
自分の抉り出された心臓を見せられて
吐いた記憶がある
その時見た感想が、赤黒い塊で気持ち悪かった…
特にそれ以外印象に残ってる事がない……
自分の心臓をマジマジと見る趣味は
自分は持ち合わせていない
私は……自分の命の危険を感じていた…
いや、実際には不老不死だから死ぬ事はないけど…
心が崩壊する事はある そう…
私達ホシの一族にとって心とは、
命とも呼べる物なのだ…
だからこそ…
このトウタのアジトにいたら、心が壊れてしまう…
私はその事が凄く怖い…
ある日の朝、私は眠れなくて…ずっと起きていた
もう、身体は疲れてはいないが…
心が疲弊しきっていた…
今日も同じようにトウタに切り刻まれるのかと思った
当の本人トウタが私の前に現れる
トウタはいつもと違う小刀を手にしていた
私はその小刀を見て慄く
『っ…貴方っ…その小刀…どこで手に入れたの?』
私は恐る恐る聞く
『前に、ここより遠い村を襲った時に
戦利品として回収したんだ…
この武器知ってるのか?』
とトウタは興味なさ気に聞いてくる
『それは…人が持ってはいけない物よ‼︎‼︎』
私は捲し立てるようにトウタに言う
『おかしな事を言うな…武器は使う物だろう…
まぁ良い…暫く留守にする』
と言いながらトウタはこの洞窟を後にする
まずい…
まさか、あの武器がまだこの世に有ったなんて…
私は同様を隠せなかった
それから3日経った時だ
ついに…トウタの身体に異変が起きる
辺りは静まり返り夜が更けた時だ
『かっ…火事だアァァーーっっ!!!』
1人の男の声が聞こえる
トウタは外に居る仲間に
『全員で、火を消しに行け』と命令を出して、戻って来る
私はトウタに
『相変わらず、見事な手際ね…』と言う
別に褒めようと思った訳ではない
何か言っていないと 心が砕けそうだからこうやって
目に付いた物でもいいから喋って、
自分の意思を保とうとしているのだ
トウタは私を一瞥し
『当たり前だ…じゃなかったら、盗賊のリーダーなど務まらな……うっ』
とトウタはいきなり呻き声を上げ頭を抱える
『どっ…どうしたの?』と私が問うと
あの例の武器を握り締めながら言う
『彼奴が来る……』
といつものトウタとは違う口調を
聞いて私はハッとする
ヤバい……あの武器にトウタは乗っ取られたんだ
トウタの目をよく見ると
人とは思えない目の輝きを放っていた
金色の瞳に…猫のような縦目
そうなのだ……
トウタの持っていた小刀……
あれは、ホシの一族の負の感情が生み出した物……
あの武器を手にした物は、
その意思を乗っ取られ
手当たり次第に攻撃をする……少し厄介な代物だ
トウタ……いやホシの一族は、私を見て問う
『お前は…我等の同胞か?』
私はその言葉に頷く
『そうか……ならば』
と言いながら小刀を私に構える
『なっ…なんで?』と私は聞く
同胞なら斬る必要はないでしょう?
私はそう思っていたが…そんなに甘くは無かった
『神と悪魔の戦いに関わってる全てが憎い‼︎
同胞であれ……私は殺すことを辞さない‼︎‼︎』
と力強く言われる
私は甘く見ていた
ホシの一族の負の感情……
怨みの根本は…神と悪魔の戦いにある事を
私は言われるまで完璧に失念していた
ホシの一族は
私の元に一歩また一歩とゆったりと…
でも着実に私に近づいて来ていた
だが…その時だ
ダッダッダッダッ……
奥から走ってくる足音が聞こえる
ホシの一族が振り向いた瞬間
ホシの一族……
トウタは右方向に向かって勢い良く蹴り飛ばされる
私は驚いて目を見開いた
『どうして……なんでっ…ここに?』
私は狼狽する
だって…もう、諦めていたから…
誰も助けに来てくれないと思っていたから…
なのに…なんでっ?
1番来て欲しいけど来てくれる訳が無いって
思っていた人が、今…目の前に……裕司がいる
裕司は私に一瞥し
視線をトウタに戻して左腕を
トウタに向けて伸ばし人差し指を指して言う
『トウタっ‼︎……
サラを…取り戻させてもうぞっっ‼︎‼︎』
と力強くトウタを見据えながら
ハッキリとした口調で言い放つ
私はまたもや吃驚した
先ず、裕司が以前より強くなっている事だ
三ヶ月前は、トウタに深傷を負わされた筈なのに
二つ目……声音が出会った頃と違う…
上手く言えないけど、決意のような物を感じた
そして三つ目…口調だ
出会った頃はナヨナヨしてたのに今は…違う
ちゃんとハッキリと言っている
私はそんな裕司を見て、ふと思ったんだ
私を照らしてくれる一筋の光が現れたって……