侵入
レガスト山に入って5時間が経つ
俺は、レガスト山の中部を歩いていた
まだトウタは愚か…
トウタの手下にすら出くわしてはいない
俺は、5時間…
山の中を歩いていて少し、疲れはじめていた
目の前にはまだ続く険しい山道
これを休憩も無しで歩いたら、
敵と戦う体力はおそらく…残っていないだろう
少し、休憩を取ろう
俺はそう思い 近くの樹の幹に腰を掛ける
思ったより疲れていたんだろう…腰を掛けた瞬間
眠くなってくる……
俺は、眠気に勝てずに目を閉じて睡魔に誘われるままに……眠りに就く
(……ここは?……どこだ……)
気付いたら俺は、暗闇の中にいた
まぁ……ここは…夢の中だ……
この夢の中で俺は、また……
過去のトラウマを見る羽目になる
(……あれは?……かあ、さん…?)
俺はスグにおかしいと思った………
それは、そうだ だってこの手で、俺は…………
次の瞬間母親が後ろ姿で写っていた
だが…様子がおかしい
次の瞬間母親が背中から倒れる
そして、その奥にいたのは……包丁を持った俺………
その光景を見た瞬間、俺は目を覚ます
額に手をやるとじんわりと汗を掻いている
何でだ……なんで今更……あんな夢を見る
そう俺にとっては直ぐにでも忘れたい、
光景なのに……
俺は辺りを見回す
辺りはもう暗く…日中は鳥の声で
騒然としていたのに静まり返っている
だが…
山の上手に目を向けると灯りが灯っている…
明らかに人工的に付けられた灯りだった
ついに、トウタのアジトが見つけたかも知れない
俺は、直ぐに灯りのある場所に向けて歩いていく
幸い……
通り道はそんなに険しくなく灯りのある場所は、
ここからそこまで離れては居なかった
灯りのある場所に就くと盗賊と思われる集団が
周辺を巡回していた
十中八九ここが、トウタのアジトだろう
俺は、そう思った………
さて、如何しようか?
今出るのは流石に得策じゃない
周辺を見回すと8人が奥の洞窟を守っていた
その上で、後の二人が 洞窟周辺の警備
入り口に10人付けるとか、
内側の警備は皆無と見える
まぁ、洞窟の入り口は一つだから
こんな大胆な配置が出来るんだろう
だからこそ…厄介だ
今馬鹿正直に出てあの10人と戦って
無駄な体力を消費して、トウタに戦いを…
挑むのは正直言って厳しいと思った……
何か………考えないとと思い、俺は周りを見る
だが…使えるものと言ったら、
近くに落ちている小枝と落ち葉
これで焚き火をして煙を上げるくらい……
瞬間、俺は目を見開く
それなら、行けるんじゃないか?
一か八か…それに引っかかってくれる
馬鹿であれ…そう願うばかりだ
俺は直ぐに今来た道を戻る
俺が立ち止まった場所は、
休憩を取った場所だ
ここで、火を起こせば騒動が起きるはず
全員を誘き出すなら……此の手しかない
仮に少ない人数しか誘き出せなくてもいい
戦力を…一時的に減らす事に意味がある
決行するなら今が、好機だっ!!
俺は、
小学校の時に習った火の起こし方を試して見た
細長い枝で……木の板に突き刺し
枝を素早く回し……摩擦を起こす
この摩擦で擦られている木の部分に熱がこもる
そして、煙が起こって火種が出来る……
そしてその火種を葉っぱで繋ぎ合わせたもので包んで
それを手で勢い良く回しすと遠心力が、
掛かって火が起きる
ボッ
今だっ!!
俺は、勢い良くそれを自分の近くにある
木の葉っぱのある部分に向けて投げた
火は、葉っぱに当たって見事に引火する
火はあっと言う間に広がり
隣接する木にも飛び火する
我ながらナイスコントロールだ……さて、
俺は、直ぐに隠れて状況を見守る
すると直ぐに山の上の方から
『かっ…火事だアァァーーっっ!!』
1人の男が、火事に気付いて大袈裟に騒ぐ
まぁ、大袈裟と言っても……
もう15〜20本以上燃えている
数分しか、経っていないのに…
本当に木は燃えやすいな………
その知らせを受けて、
洞窟周辺の警備を…している計10名がこの場に出て来る
俺はそれを見届けて茂みの中を…
移動しながら洞窟に向かう
洞窟の入り口前に着くと警備の者もなく蛻の殻だった
(よしっ…待ってろよ、サラッ‼︎‼︎)
俺は、後ろを確認しながら洞窟の中を進んでいく