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孤影悄然のフレイムタン  作者: 海岸キメラ
2/2

■■ 01 (01)

お昼休みはさびしい。


高校に入ってからは生活が一変してしまった。


本来なら中学から一緒に陸上部をやっていた奴らと唐揚げ弁当をもしゃもしゃやってたのだろう。たまに笑い話で吹き出して米粒飛ばしたりなんだり。


実際が違うのだから本来っていうのもおかしな話だけど。


別に高校デビューしちゃって、取り返しのつかないテヘペロ展開を引き起こして孤影悚然としてる訳ではない。本当に。


話すと長くなる様な一言二言じゃとても上手く説明できないような事が重なって、重なって、とりあえず今がある。


無事、窓際最後尾の席で味もサイズも頼りない一パック二つ入りのおにぎりをもちゃもちゃやってる。


これでもまだ幸せな時間を過ごせてる。


窓から眺める風景はいつも変わりなく爽やかだ。雨の日は知らない。


ああ、SNS覗こう。みんな大好きツイッポ。陸上部のみんなとは今も仲良しだよ。俺の新鮮なリツイーポに陸上部のみんなもその他諸々の人達も星マークをつけてくれる。笑える話、笑える画像とか動画、かわいい女の子の絵、エッチでかわいい女の子の絵、エッチな女の人の絵、ニッチでエッチな絵。


俺自身も笑顔が自然とこぼれる。全くけしからんなあ。


教室の扉が開く音がする。滑らかにスーッとレールを駆け抜けた後に肉厚のゴムパッキンが壁に鈍くぶつかる音。ベッチン。中の空気が上げる悲鳴なのかもしれない。


この扉を開けるのにベッチンなんて音は普通させない。開ける人の心を上手く表しているんだと思う。ベッチンって。


カツカツと整然とした足音が近づいてくる。上履きでこんな音がするのだろうか。


それにこの教室に入るなら普通は前から入る。ここは最上階で最寄りの階段は黒板のある側からトイレを挟んでその先。なのに後ろの扉を選んでいる。


扉を開けたベッチンな人は用件が教室の後ろにあって、教室に少しでも長居をしたくないのだ。違うクラスに席がある。他所の教室の住人。


足音が俺のすぐ横で止まる。


見上げると銀の髪に色素の薄い白い肌。黒い目は茶色を濃くした黒では無く灰色を濃くした感じのなんて言うか混じりっけのない黒系統の黒というか、黒に失礼のない黒。


黒く澄んだ瞳が俺を見下ろす。


「屋上」


言頭の''お''が力強く殴りつけるようで圧がある。


「アッ、ハイ」


実際コワイ。




屋上は高いフェンスに囲まれている。天辺は反り返り有刺鉄線が張り巡らされている。


憧れの屋上開放の学校なのだ。


中学の時は屋上を溜まり場にすることを何度も妄想したけど、そういう奴は少数派だったのだろうか。昼休みの屋上はいつも人気がない。


俺も最初は教室が最上階なのもあり、屋上で過ごすお昼休みをやってみた。けれども確かに素敵なものじゃなかった。


地面が舞い上がった土なのか沈殿した排気ガスなのか黒くめちゃくちゃ汚い。ステンレスのフェンスもグラウンドから見ると太陽光を反射して張りのある銀色を称えているけど触ると汚い。


昼休みの間にワイシャツの背中を白と黒のストライプ染め上げたのが懐かしい。


ストライプ柄のワイシャツで二つの授業とバイト先までの徒歩15分を踏破して以来屋上でお昼休みを過ごそうという発想は浮かばなくなった。


本当はみんな屋上で過ごすお昼休みをやったんだ、そして等しくストライプ柄のワイシャツを生み出してやめたのだ。


みんな心の引き出しに屋上で過ごすお昼休みと背中だけストライプ柄のワイシャツをしまい込んでいるのだ。大人になった後で笑い話にしたり、お墓までしまい込んだままだったり。みんな。そのはず。


「ねえ」


銀髪の彼女が尋ねてくる。


憂鳴(ゆうな)くん昨日また能力を使ったでしょ」


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