黒の聖女
これは、現代要素無しの、複数異世界トリップものです。
聖女ものですね。
女主人公。
人外有り。
恋愛展開予定有り。
鬱展開多し。
大まかなあらすじ有り。
◉キャラクター◉
・【聖女】…『黒の聖女』…『銀の恵』…『幸福の支配者』
・高位神官…カダージュ…男
・王城警備隊隊長…アンジ…男
・筆頭魔術師…ラウラ…女
・神官長…男
・国王…男
・貴族…パスパ子爵…男…『聖女の僕』…依り代ーカトロフ…『七黒』
・【銀の者】…カトロフ…【銀の者】の長…『銀の柱』の一柱…赤色
・【銀の者】…ベントゥス…『銀の柱』の二柱…橙色
・【銀の者】…アーロン…『銀の柱』の三柱…黄色
・【銀の者】…プレイ…『銀の柱』の四柱…緑色
・【銀の者】…『銀の柱』の五柱…青色
・【銀の者】…『銀の柱』の六柱…藍色
・【銀の者】…『銀の柱』の七柱…紫色
・孤児…カロン…男…『聖女の僕』…依り代ーベントゥス…『七黒』
・孤児…リラ…女…『聖女の僕』…依り代ーアーロン…『七黒』
◉ストーリー◉
01 : 真っ暗な空間。上下も左右もない空間に、銀色の巨大な柱が浮いている。柱の中央には、白い布で包まれた、人のようなものが柱に巻きついていた。
幾重にも巻かれていた細い白い布が、唐突に真ん中から裂け始めた。頭、首、胸、腹、腰、そして足先へと。音もなく裂け続け、その中から、黒髪に黒衣を着た少女が姿を見せた。
瞳を閉ざした少女は、ふらりと頭から前傾に倒れ、そして落ちていった。
銀色の柱の遥か下で、ぽちゃりと闇に沈んだ。闇はまるで水のように形を持ち、少女はどんどん沈んでいく。
やがて少女は落下方向に体の前面を向けて、水平に落ち始めた。そして、またぽちゃりと闇の水底を抜け、姿を消した。
黒の空間に残った柱は、しばらくしてゆっくりと倒れた。
ばっしゃあああと、飛沫をあげて闇に沈み込んだ柱は、急速に落ち続ける。
やがて、またも派手に音をたてながら、水底を抜け銀色の柱も消えた。
1 : 白の国がある大陸は、急速にエネルギーを失っていた。植物が枯れ、動物達が死に、魔物が増え、国は滅びへ向かっていた。
ある日、神殿で人々が祈っていると、神を象徴する円環の中心に、黒髪に黒衣を着た少女が忽然と現れた。白の国では、白が聖なる神の色で、黒は死を象徴する禁忌の色だった。なので、人々は凶兆だと恐れ慄いたが、少女は目を閉じたまま、ピクリとも動かなかった。
あらゆる武器や魔術で攻撃してみるも、神の円環から半球状に結界が出現し、少女を護ったので、人々は少女をどうにかする事いったん諦めた。
少女が現れてから、世界はだんだんとエネルギーを取り戻し始めた。数年も経つと、人々はそれに気がつき、神の円環が少女を護る事・少女が神殿に現れた事・そして人々が祈っていた時に現れた事から、少女は神が遣わされた【聖女】なのだと信じ始めた。
少女が現れてから五年が過ぎ、その頃には【聖女】は『黒の聖女』と呼ばれ、信仰の対象になり、黒は【聖女】を象徴する色として、白の次に尊い色とされていた。
【聖女】は五年間、いっさいの動きを見せなかった。
02 : 銀色の柱が、原初の森に落ちる。
2 : 【聖女】が現れて六年目に入り、人々がいつものように祈っていると、神の円環にふわりと浮いていた【聖女】が突然動き出し、祭壇の前に降り立つと、初めてその目を開いた。【聖女】は、その瞳もまた、黒かった。
ーー五年間、いっさい動きを見せなかった【聖女】が目を覚ましたーー
人々は驚きのあまりしばし呆然とし、ハッと気がつくと、次々と【聖女】に押しかけた。
【聖女】は神殿の最深部に招かれ、神官長と対談した。そして、驚くべき事が発覚した。
まず、【聖女】は話す事ができなかった。なので、神官長は慌てて文字を書く魔術具を取りに行かせた。
【聖女】の話を聞いていくと、白の国の端にある原初の森に、銀色の柱が落ちたはずだという。それは七つに分かれ、人に似た形をとる。それらは【銀の者】と言い、【聖女】からエネルギーを得ていたため、【聖女】が離れた今、エネルギーを得るために大陸中に散らばって破壊を始めるというのだ。それを防ぐために、【聖女】は目覚めたのだという。その事はすぐに国王に伝えられた。
【聖女】は神の遣わした者として、神殿に最上の部屋を用意された。世話役として、高位の神官もつけられた。神殿においては、聖なる白い色を持つ者ほど神に祝福されているとして、高い地位についていた。その神官は、歴代でも群を抜いて白い髪を持つ者だった。
【銀の者】は、結界に封じられている。結界が解けるのは、長くても一月。しかし、王都から原初の森へは、短くても一月半はかかる。なので、【聖女】は今すぐにでも旅立ちたい。
しかし、【聖女】は身を守る術を持たないため、警護の者を必要とした。よって、神殿からは高位神官カダージュ。国王からは、王都警備隊隊長アンジと、筆頭魔術師ラウラが派遣された。
四人が出発したのは、【聖女】が目覚めてから、五日目の事だった。