地下セラーのレストラン
作者お気に入りの、とあるバンドのPVを延々と視聴した夜に見た夢。
黄昏時の薄暮の中、廃線になってそれほど経っていないであろう線路の上を、5人の男たちが疾走していた。
それと並走する映画用カメラ。
周りを木々に囲まれた少し開けた草原の、線路から少し引いた位置にも設置されている撮影機。
その横にはカメラと同じ目線の高さを確保した椅子に座る男性と、背後を取り囲む数人の立ち働く人々、と私。
機器類の動作チェックだったのか、座した男性から『カット』の掛け声もないのに5人の男たちは速度を緩め、羽織っていたコートを脱ぎ出した。
私は慌てて彼らの元へ駆けつけ、「お疲れ様です」と声掛けながらそれらを受け取り腕に掛け、その腕に始めから提げていたトートバッグからペットボトルとタオルを取り出してそれぞれへと手渡す。
口々に礼を言う彼らを改めて見る。
皆、身長は高く一様に細身で、髪は背を覆うほど長かったり短かったりすごく短かったり、黒だったり茶色だったり金色だったり、サラサラストレートだったりウェービーだったりふんわりカーリーだったりと個性豊かで。顔立ちもそれぞれ個性的だけれど、等しく整った容貌を強調するような化粧が施されていた。
顔を軽く押さえ首筋と胸元を拭ったタオルは、私へと返される。
ペットボトルも、一口含んだだけで戻されたので受け取る。
軽く一息を吐いてから、それぞれに魅力的な男たちは気だるげにダラダラと、スタイリスト達が待つスタート地点へ引き返して行った。
「アクション!」
の合図と共に駆け出したのは、楽しげにじゃれあう精悍な獣達。
先程までの必死な『駆けっこ』とも、だらしなく歩く姿とも違う、カリスマとでも言うべき輝きを放っていた。
満足そうな監督の「カァット!」の声を合図に、現場に立ちこめていた緊張感が霧散する。
脱力しながらロケバスの方へ歩いてゆく男達にコートを渡そうと駆け寄ろうとしたら、5人の中の一人、黒髪を短く刈り込んだ男に遮られるように話しかけられた。
彼の脇越しに他の男たちを見やったが、振り返ることなく仲間内で雑談しながら遠ざかってゆく。
まあ、あれだけ走り込まされていたので、汗さえきちんと拭ってロケバスで着替えれば、風邪をひくこともないだろう。
短髪の彼へ視線を戻しコートを差し出したけれど、案の定「暑い」と断られた。さもありなん。
そんなことをぼんやり考えながら話を聞き流していたら、私を他のメンバーから引き離した彼の趣旨は「メシを食いに行こう」だった。
皆と合流するのかと聞いたら、挙動不審に目を逸らし歯切れ悪く「そんなところ」と言った。
別々に行く理由が分からないが、「雰囲気が良くて美味い店」の言葉に頭の片隅にあった猜疑心はあっさりと払拭され、道中聞かされたお勧めメニューなどに心はすっかり占められていた。
案内されたのは地下にあるお店。
煉瓦造りの地下倉庫と言った雰囲気で地下一階はテーブル席が設えられており、さらに階下へ連れられてゆく。
階段を降りてすぐにカウンターがあり、その奥はどうやら厨房やセラーのようだ。
「いらっしゃいませ」
落ち着いた笑顔と声に促され、カウンターに着く。
「本日のお勧めシャンパンはこちらです。単価は少々高めですが、酸味と甘みのバランスも良く、フレッシュでフルーティな香りが楽しめます。きめ細やかな泡をご覧いただければ、ご納得いただける価格だと思います」
「じゃあ、それをグラスで」
「ありがとうございます」
シュボッ。
目の前で開栓され、スリムで優美な曲線を描くフルートグラスに注がれる、淡黄色に輝く微発泡な液体。
軽くグラスを合わせて口を付けようとした所で――――目が覚めた。
目が覚めた瞬間に思ったのは「飲み損ねた!!」<(゜ロ゜;)>
その次に「何故にお相手がドラマー(短髪Ver)?」σ( ̄、 ̄=)?
でした。
お粗末さまです。