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混沌の欠片



こんな夢を見た。





何らかの因子によって、でたらめな世界になってしまっているある町で、その因子を取り除くことで正常な状態に戻すという使命を持った少女の夢。


その因子はイメージ的には隕石の欠片の様なもので、分布範囲や密度によってでたらめ加減が違うのだけれど、取り除いて完全に正常になるまで、何個その地域にあるのかわからないという厄介なもの。落ちている場所は特定しずらいけど、でたらめ度が強い地域の、さらにその中で一番イカレテいる場所に潜んでいることが多い。


イカレタ地域のイカレ具合は、郊外の住宅地の空き地に、黄金色のアラブの宮殿が建っていて、王様が后達と池でボート遊びに興じていて、その池には七色の鱗を持つ極彩色の魚が泳いでいたり…ニューヨークのスラム街の様な所の一角にフェンスで囲まれた空き地があり、貯水池のようなプールの中にワニが居たり…でたらめな形をしたアパートが建っていて、そのアパートの中は階段が縦横無尽に張り巡らされていて、住人はわずかなスペースに居住している…などなど。


でたらめな世界だから、少女もすんなり昔からそこに住んでいたかのように住人に受け入れられ、生活にとけ込みながら慎重に因子を探し、取り除いていく。


因子が取り除かれ、徐々に正常に戻っていく地域。


そして、正常に戻っていくにつれ、少女を知っている住人が減っていく。


でたらめな世界で会った少女は、修正された世界では会ったことも無い人になってしまうのだ。


最初は顔見知りから忘れていく…徐々に言葉を軽く交わした人、バイト先の店長、バイト仲間…


少女は寂しさを感じつつも、一つ一つ因子を取り除き、次は誰に忘れられているのだろうと、ぼんやり考えながらアパートに戻る。


最後まで覚えていてくれたのは、少女がなんとなく好意を持っていた少年とその弟。一番自分を思っていてくれた人が彼らであることに、少女は喜びを感じつつ、彼らが忘れていないということは、まだ完全に因子を取り除いていないということに気づく。


翌日、小さなでたらめの場所を探し出し、因子を取り除き、アパートに戻ると…


もう、少女を知るものは誰も居なかった。


むしろ、いつからいたのかもわからない少女に奇妙な違和感を感じ、冷たい探るような視線を向けてくるものさえ居た。


そんな少女に、微笑みかけて「初対面の挨拶」をしてきたのは、あの少年と弟だった。


記憶を無くしてまで優しく接してきた兄弟に、泣き笑いのような表情で少女は、


「もう、行かなくちゃ」


とつぶやいて、アパートを、この街を後にする。


街外れの一角に、小さな空き地がに小さな貯水池があって、小さな小さなワニが少女を見上げてた。


「君を見落としていたね」


少女が、この街での最後の使命を果たし、その地域は完全に正常に戻った。





…という、夢を見た。



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