出席番号4 カオリ
とりあえず、ここまで。思いつきで書いたので設定は固まってません。
私達調査隊は、日が暮れ出す頃、教室に帰ってきた。あの後、6匹のゴブリンに襲われたが、男性陣の活躍で何とかその場を切り抜けた。今回の調査では、森の外に出る事はなかった。10キロ程進んでみたが森は何処までも続いている。明日は別の方向を散策する必要がありそうだ。今回の戦利品は、錆びた剣が7本、曲がった鉄の杖が3本、治癒の指輪が一つ、浄化のネックレスが二つ、4匹のウサギと、3羽のウコッケイのような鳥、そしてユウコが中心になって採取した野草を採取した。そして何より大きかったのが小川の発見である。教室から2キロ程移動した場所に小川があり、水の確保も行えた。これだけあれば上出来だろう。
小宮に荷物持ちをさせようとしたが「めんどくせえ」といって何も持とうとしない。確かに彼の戦力は訳に立ったから、何も持たせなくて正解だったのかもしれないけど、でもあいつはむかつくから、苦労させてやりたかった。荷物もちにさせられた郷田はひいひいいっていたのが、面白くて何度も噴き出しそうになってしまった。最終的には加山が手伝って何とか荷物をはこんでたっけ。
こうして私達は大した怪我をする事もなく、多くの戦利品をもって帰還した。
教室に戻った京香たちが目にしたのは、人数が減った生徒達であった。30人いたはずの残留組の生徒達は、今では5人にまで減ってしまっていた。文芸部の佐藤、生物部の田中と鈴木、美術部のサリ、木工部の山崎である。生物部の田中と鈴木は縛られたままのファウストを取り囲み、何やら怪しい笑みを浮かべ盛り上がっている。他の三名は険しい顔を浮かべながら、話合いをしている様であった。
京香達が教室に入ると、文芸部の佐藤が駆け寄ってきた。
「小宮君!大変だよ。皆出ていっちゃった」
「へえ。そうか。やっぱりこっちに来て正解だったな。めんどくせえ事を避けられた
「もう!そんな事言っている場合じゃないよ!」
「お前らってそんな仲良かったっけ?」
加山が二人に聞く。
「うん。僕達同じ文芸部だから、仲は結構いい方だと思うよ。ね?小宮君!」
「めんどくせえ・・・」
ハムスターを思わせる可愛いしぐさの男子佐藤とだるそうにする小宮を見て調査隊の全員が驚く。
「「「「は!?小宮って文芸部だったの?」」」」
あれだけの戦闘力を持ちながら、何故こいつは武道部に入らなかったのだろう。剣道部、柔道部、空手部、弓道部の一同が疑問に思う。これが正常な世界にいたら、きっと彼を我が部に勧誘しただろうとだれもが思った。だが今は異常な世界だ。部活に勧誘などしている場合ではない。
「それで、佐藤君。いったい何があったのですか?・・・大体は想像できますけど・・・」
こめかみを指で押さえながら、京香は苦悶の表情を浮かべる。きっと、バスケット部の五十嵐と野球部の木村がらみの事件だろう。
「えっとですね、それが・・・。」
佐藤の話をまとめると以下のようになる。
まず調査隊が外へ出て行ったあと、野球部の木村が中心となって全員の所持品の調査が始まった。その中で、女子を中心に自分の持ち物を提出するのを嫌がる声が上がった事。そうして、それを説得しようとする木村を援護して他の野球部が参戦。男所帯の野球部が束になって女子に当たった結果、説得はいつしか高圧的な態度で強要するような形になってしまった。そこに女子が五十嵐を立てる。女子の見方として出張ってきた五十嵐と男子代表としての木村が対立、そこにバスケ部が五十嵐を応援すると、今度は野球部対バスケ部の対立に変化。ここまではまだ収集が付いたかも知れない。二つの部活の中で或る程度の収まりが見えてきたときに、ソフトテニス部男子が女子によく見られたい気持から五十嵐を応援し出すと、普段コートの陣取り合戦で対立していた公式テニス部男子が野球部を応援、これを発端にして男子が二つに分かれて再び対立は激化。そしてそこへ軽音部の女子が普段から好意を寄せていた五十嵐に付き、それを切っ掛けとしてクラス中の女子が好意を寄せる相手である、木村組と五十嵐組の二つに分かれ、収集が付かなくなってしまった。挙句の果てには、料理部や手芸部、木工部など生活必需技能を持った者の取り合いへと変わり、最終的に、彼らは二つのグループに分かれて教室を飛び出していってしまったという。文芸部の佐藤は小宮が帰ってくるまではと、教室に居残り、木工部の山崎はとにかく工作器具を守る事で精いっぱいとなり、両派閥から逃れる為に、大切な器具と共に逃走し先程戻ってきたという。美術部のサリは見慣れない外界に惹かれ目を輝かせ、外で写生に耽っていた間に抗争は終結。田中と鈴木の生物部は、これは生物部とは世をしのぶ仮の姿でファウストを中心としたオカルト研究が本当の姿であるが、外界を気にせずファウストときゃいきゃいはしゃいでいたそうだ。
京香はファウストを睨みつけ溜息を吐いた。やはり自分が残るべきだったかという後悔を覚えた京香であったが、いまさら後の祭りである。これからの事を考えなければならない。京香は残留品を確認しようと教室を見回し始めた。
小宮は教室の端で寝転んで鼾をかき始めている。その横で佐藤は必死に小宮に話かけている。須藤、吉沢は山崎と剣の手入れについて話し合い、美術部のサリは戦利品の整理を始めたユウコと話しながら、野草の写生をしている。筋トレを始めた郷田と加山をカオリが説教しており、そして生物部の田中と鈴木はファウストとまだ怪しい話をしていた。
京香はもう一度、全員に聞こえる程大きなため息をついたのであった。
次回投稿は一週間後になる予定です。