出席番号2 須藤
俺達調査隊は険しい森の中を進んでいた。よくわからない世界に飛ばされて、何があるか分からない森の中を進むというのはかなり精神をすり減らす。だが、この場所に同じ部活の吉沢がいてくれて助かった。心を許した存在がいると云うのはとてもいいものだなと思う。恥ずかしいから吉沢には言わないが。
このグループには武道部が俺以外に4人もいる。剣道部の吉沢と柔道部の郷田、空手部の加山、そして女性ではあるが弓道部のカオリ、これだけいれば何があっても対処ができるだろう。心配なのは園芸部のユウコと京香先生だ。彼女達はカオリと違って防衛手段を持たない女性だ。もし彼女達に危険があったら俺達が命に代えても守りとうそう。そう決意し、その意志を吉沢にアイコンタクトでおくる。吉沢は俺の意を解してうなずいた。すると、後ろから、郷田が俺の肩をたたいてきた。振り向くと郷田と加山も俺達と同じ意志を持っている事がわかった俺達は互いに決意を固め確かめある様にうなずき合った。
もう一人・・・まあ、小宮に関してはよくわからない奴だが、自分で何とかしてもらおう。あいつも男だ、危なくなったら逃げるぐらいはするだろう。
しばらく進むと、突然前方で生い茂った草むらがかさかさと動きだした。先頭を進む俺と吉沢は脚を止め、後ろに向かって警戒を強めるように声を出す。ユウコが今にも泣き出しそうに震えている。カオリは弓に矢を番える。京香先生は石を拾い、震えるユウコをかばうように位置をとる。小宮は・・・ぼーっとしているようだ。
いきなり草むらから3匹の生物が飛び出してきた。体調150センチ程の猿の様な体に人間の様な顔、とても醜いこぶだらけの顔だ。これはよくゲームでみるゴブリンのようなみためだ。ゴブリンはボロボロの布を体にまき、かろうじて陰部が隠れる様な格好に、右手にはさびて刃こぼれした直剣を持っている。
俺と吉沢は型稽古ようの木刀を構える。後ろの加山と郷田も構えをとった様だ。醜悪なゴブリンが俺たちに近寄ってくる。やつらが放つ敵意に恐怖を感じ、下半身が硬くなるのを感じる。俺は息を大きく吐き出し、硬くなった膝を緩めた。そうして、皆に指示を出した。
「カオリ!真ん中のゴブリンにむかって牽制の為に弓をうってくれ。当たらなくてもいい。あいつらを分断するんだ」
「りょ・・了解!行くよ!」
カオリは震える手で弓を放つ。弓は真ん中のゴブリンの中枢線は外したが、奴の右ひざに当たった。ゴブリンは倒れ込み痛みに悶えている。左右のゴブリンがこちらに身かって走り出す。
「俺が左をやる。吉沢は右を頼む!俺達で奴の手を叩いて武器をおとさせるから、郷田と加山はその後に奴らに攻撃をしてくれ」
「よ・・・よし!まかせろ」
「わかった!」
吉沢は無言でうなずき、右のゴブリンへと駆けだした。郷田が叫ぶ。それに続いて加山も叫んだ。俺も左のゴブリンへ向かい距離を詰めて行く。
いくら相手の剣がぼろぼろとはいえ、切り結んだら俺の木刀がまけるだろう。やたらめったに剣を振り回すゴブリンとの距離を計算しながら、俺は奴の手首を叩いた。敵の武器の使い方は素人そのままだ。うん、これならば吉沢も問題ないだろう。敵が剣をおとすと無防備になった敵に加山が詰め寄り、膝に回し蹴りをくらわす、膝を崩したゴブリンの顔に向かって、続けざまに後ろ回し蹴りがたたき込まれた。グチャという嫌な音が響き、ゴブリンの頭が垂れ下がる。しかし、ゴブリンは動きを止めることなく腕を懸命にふりまわして攻撃してくる。俺は落ちている剣を広い、ゴブリンの頭をたたき潰した。鉄臭い赤色の液体が俺と加山に飛び散り、ようやくゴブリンは動きを止めた。念の為に、俺はゴブリンの胸を貫き、そうして、矢を受けて悶えているゴブリンに駆けよった。そいつの頭を砕き、胸を刺してから、仲間の様子を確認する。吉沢はさびた剣を血で濡らして佇んでいた。地面に倒れたゴブリンの腕が、おかしな方向に曲がっているのは、郷田の関節技の仕業だろう。奴らも問題なく倒せたようだ。これでひと安心だろう。女性陣を安心させる為に、俺は笑顔をつくり彼女達に呼びかけようとした。
其の時、俺は信じられない光景を目にした。何故考慮に入れなかった?どうして奴らが三匹死か居ないと決めつけてしまったんだろう。俺、吉沢、加山、郷田はゴブリンと戦う為に、あまりに後衛と距離をつくりすぎて仕舞っていた。俺達と彼女達の間に二匹のゴブ
リンがたち、錆びた鉄の褐色の光をづ上に振り上げていた。
「クソ!間に会え!」
俺達は駆けだした。次の瞬間、一匹のゴブリンが倒れたかと思うと、もう一匹のゴブリンの首が切断された。その場には二つのゴブリンの死体と、面倒くさそうに欠伸をする小宮の姿があった。小宮の手には赤く染められた剣が握られていた。