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都会のすずめ  作者: わた
少女と少年のお話
17/64

戦う決意

少年は、何もない空間にいた。


いや、何かありはするのかもしれない。ただ、少年には見えていないだけで。


不思議な声が聞こえた。


「お前は、怯えているね」


男の声とも女の声とも、若い声とも老いた声とも取れなかった。


「怯えているくせに、誰かを助けたいと思っているね」


実に不愉快な声だった。


少年は、はっきりと答えた。


「僕は日菜を灯たちのもとへ返す。ここはどこだ?僕は元の世界へ行きたいんだ」

「それは許されない。お前はまだ追われたまま」


怪物へのおぞましい恐怖が甦り、少年の体に鳥肌が走る。


「助けたければ戦うんだ。あの少女はお前のために勇気を見せた。お前はそれに見合えるかい?」


戦う、怪物と。

考えただけで頭がくらくらし、倒れそうになる。恐怖が身体中を支配して、縛り付けられる。

ああ、この恐怖もまた、一種の怪物なのだ。


「お前を追うものはお前が背負わなくてはならない罪。あの少女はお前の生きた証を見つけに行った。お前は生きていたことから目をそらしちゃあいけない」


たとえ記憶がなくとも、生きていたのだから。その結果、怪物に追われることになったのだから。ただ怯えて、逃げていてはいけない。


少年は敢えて笑顔をつくった。


「わかったよ。戦う。日菜を救うことができるならね」


突如目映い光が、少年を包み込んだ。


気がつけばそこは、あかり荘の門の前だった。


「……な……?」


何かおかしい。いつものあかり荘のはずなのに。

音が何一つ聞こえない。それに、晴れているのに辺りは薄暗く、空が灰色だ。

自分の体を見回してみて、気がついた。

色がない。肌も服も。地面も木も空も、あかり荘も。


あの不愉快な声が、少年の頭の中で響いた。


「そこは、喜びが足りない世界。そこで、お前の罪を探せ。罪もまた、お前を探している」


罪。


罪とは何か。元の世界で、自分は何をしたのか。

その罪が怪物となったのなら、自分は償わなくてはならない。


少年は少しも迷わなかった。


戦うんだ。

日菜は、自分のために世界まで飛び越えてくれたのだから。


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