王妃をはじめ、王家の仕事を書いたら、今度は「断罪まで何してたの?」と聞かれました
夜勤明けです。
今日は予告通り、ビールを飲んでおります。
その前に、飲むための勢い付けとして、
『色気がないと婚約破棄されましたので、殿下好みのドレスをやめました』
という短編を一本上げました。
飲む前に短編を一本上げることが、勢い付けとして正しいのかは分かりません。
ですが上げました。
そしてビールを飲み始め。
二本目の途中で、今日投稿したもう一本の短編、
『その断罪、ひとつずつ確認させていただきますわ』
の感想欄を見ました。
そこに、こうありました。
「でも大きな問題が残ってんだよね。──断罪劇の披露まで何やってたの王家?」
……はい。
ごもっともです。
そして私は思いました。
まだ500ml缶、二本目です。
いける。
ということで、これを書いています。
少し前に、
『王妃が仕事をしていたら、悪役令嬢ものは始まらない──全員まともなら普通の国家』
というエッセイを書きました。
そこで私は、
王太子がここまで育つまで、王家は何をしていたのか。
なぜ王妃は止めなかったのか。
なぜ国王は息子を放置していたのか。
なぜ側近も官僚も、令嬢一人へ仕事が集中する状況を見過ごしたのか。
そんなことを延々と考えました。
そして、その中でこう書きました。
分かっています。
私も、この国の業務分担はおかしいと思っています。
しかし全員が適切に仕事をした瞬間、この短編は消滅します。
だいたい、そんなところへ辿り着いたわけです。
そのあとも色々と考えました。
そして練ったあと、今日。
『その断罪、ひとつずつ確認させていただきますわ』
を投稿しました。
今回は、
なぜ王太子がああなったのか。
というところにも、それなりに理由を置いたつもりでした。
国王は、出来の悪い王太子へ補佐を増やした。
王妃は、繊細な息子が傷つかないよう、躓くものを取り除いた。
失敗しそうになれば誰かが助ける。
厳しい教師がいれば遠ざける。
足りなければ人を増やす。
そして最後には、
しっかりした婚約者を隣へ置いておけば、少しはまともになるだろう。
そう考えた結果。
王太子本人は、自分で立つ機会を失った。
その分を婚約者が支えることになった。
なぜ、こんな王太子が出来上がったのか。
そこについては、作中で一応の答えを置きました。
ところが。
感想欄で返ってきたのが、
「──断罪劇の披露まで何やってたの王家?」
でした。
……はい。
戻ってきました。
前のエッセイで書いた、
分かっています。
私も、この国の業務分担はおかしいと思っています。
しかし全員が適切に仕事をした瞬間、この短編は消滅します。
ここへ。
今日書いた短編を一周して、もう戻ってきました。
悪役令嬢ものを、なんだかんだと書き続け。
その周辺まで含めて、勝手に研究するようになってから。
こういう感想をいただいた時には、色々な思いがあります。
まず、
「あ、その視点か」と思います。
次に、「それはそう」と思います。
今回も、まさにそれでした。
そうなんです。
何をしていたんでしょうね、王家。
王太子が卒業夜会の会場で突然ひらめいて、
「そうだ。今から婚約者を断罪しよう」
となったわけではないでしょう。
ミレイアから話を聞いた。
ロザリンデが悪いと思った。
罪状らしきものを集めた。
婚約を破棄すると決めた。
それを卒業夜会で披露すると決めた。
そこまでには時間があります。
人もいます。
側近もいる。
侍従もいる。
学院もある。
おそらく王太子府だってある。
……誰か止めろよ。
それはそう。
ものすごく、そう。
ただ。
作者としては、その次にもう一つ思うのです。
でもなあ。
誰かが止めたら、始まらないんだよなあ。
では。
せっかくなので、そこにも理由を付けてみましょうか。
そうですね。
王太子付きの側近たちは、殿下へ強く意見できない者ばかりだった。
王妃が、息子へ厳しく接する者を遠ざけてきたから。
なるほど。
では、なぜ王妃はそこまで介入できたのでしょう。
国王が、王太子の教育を王妃へ任せていたから。
なるほど。
では、なぜ国王は任せていたのでしょう。
政務が忙しかった。
王妃の方が教育には向いていると思っていた。
自分も似たような形で育てられ、それが普通だと思っていた。
理由はいくらでも付けられます。
では。
王太子が、
「卒業夜会で婚約者を断罪する」
と言い出した時。
なぜ誰も止めなかったのでしょう。
側近は王太子へ逆らえなかった。
侍従は私的な恋愛問題だと思った。
文官には正式な命令が下りていなかった。
学院側には当日まで知らされていなかった。
なるほど。
では。
なぜ王太子が、公爵令嬢との婚約を破棄するほどの話をしているのに、誰も正式な案件として扱わなかったのでしょう。
……。
理由は付けられます。
たぶん、いくらでも。
ただ。
一つ理由を置くと、その後ろからもう一つ、
「なぜ?」
が出てきます。
王妃が甘やかした。
なぜ?
国王が任せていた。
なぜ?
側近が止めなかった。
なぜ?
学院が知らなかった。
なぜ?
公爵家へ話が行かなかった。
なぜ?
そういえば。
昔、『一休さん』というアニメがありました。
私は再放送で、夕方によく見ていたような気がします。
その中に、通称「どちて坊や」という子どもがいました。
何を説明しても、
「どちてですか?」
と聞いてくる。
答える。
「どちてですか?」
さらに答える。
「どちてですか?」
延々と続く。
子どもの頃は、
一休さんも大変だなあ。
と思って見ていました。
今なら分かります。
設定を考えている時の私が、だいたいこれです。
なぜ側近は止めなかったの?
どちて?
王妃が、息子へ厳しく接する者を遠ざけていたから。
どちて?
国王が教育を任せていたから。
どちて?
政務が忙しかったから。
どちて?
では、それほど忙しい国王を補佐する体制が、なぜ整っていなかったのですか?
どちて?
……待ってください。
このままでは建国神話まで遡ります。
もちろん。
「なぜ?」を重ねること自体は大事だと思っています。
一段掘るだけで、
この設定では少し無理があるな。
ここには説明が必要だな。
この人物には、こういう背景があった方が自然だな。
そういうものが見えてきます。
私自身、それを繰り返して悪役令嬢ものを書いてきました。
正面から断罪劇を見るだけではなく。
王妃から見る。
国王から見る。
官僚から見る。
婚約者がいなくなった翌日の予定表から見る。
一人の令嬢へ業務が集中した組織として見る。
角度を変えるたびに、
「あ、その視点か」
というものが出てくる。
自分で見つけることもあります。
感想欄で読者さんに見つけてもらうこともあります。
そのたびに、
「それはそう」
と思う。
でも。
「それはそう」を全部採用すると、今度は物語がなくなります。
王太子がミレイアの話を聞いた時点で、
「では学院へ正式に調査を依頼しましょう」と言う側近がいたら。
終わります。
ロザリンデを断罪すると言い出した時点で、
「公爵家との婚約について、殿下一人で決めることはできません」
と言う侍従がいたら。
終わります。
卒業夜会でやると言い出した時点で、
「それは夜会の進行に含まれておりません」
と止める人がいたら。
終わります。
王妃へ話が届いても。
国王へ報告が上がっても。
学院が把握しても。
公爵家が知っても。
かなりの確率で終わります。
ロザリンデが大広間の中央へ立つ前に。
「その断罪、ひとつずつ確認させていただきますわ」と言う前に。
物語が終わります。
ここが難しい。
理由を自然にしようとすればするほど、途中にまともな人が出てくるのです。
「正式に調査しましょう」
「公爵家へ確認を取りましょう」
「卒業夜会で行う話ではありません」
「陛下へ報告してください」
側近でも。
侍従でも。
学院の教師でも。
官僚でも。
誰でもいい。
一人くらいは、そう言う。
そして、その人が普通に仕事をした瞬間。
断罪劇は止まります。
まだ始まってもいないのに。
つまり。
全部の「なぜ?」へ、なるべく自然な答えを付けて。
登場人物を、それぞれの立場に応じてまともに動かして。
組織を普通に機能させた結果。
やっぱり。
公開断罪は始まりません。
……はい。
また戻ってきました。
分かっています。
私も、この国の業務分担はおかしいと思っています。
しかし全員が適切に仕事をした瞬間、この短編は消滅します。
どうやらこれは、理由を付ければ完全に解決する問題ではないようです。
むしろ理由をきちんと付けて。
その理由に沿って全員を自然に動かせば動かすほど。
物語の方が消えていく。
悪役令嬢ものに限った話でもないのでしょう。
物語には、何かが起きなければなりません。
誰かが判断を誤る。
誰かが見落とす。
誰かが思い込む。
誰かが止められない。
何か一つ、正常な流れから外れるものがある。
それがなければ。
全員が正しく判断し。
正しく報告し。
正しく確認し。
正しく対処して。
何事もなく一日が終わります。
それは、暮らすにはとてもいい国だと思います。
ただ。
悪役令嬢ものの舞台としては、たいへん困ります。
とはいえ。
ここまで考えていると。
また別のことが気になってきました。
では。
本当に周囲が全員まともだったら、どうなるのでしょう。
国王もまとも。
王妃もまとも。
側近もまとも。
侍従もまとも。
学院もまとも。
公爵家もまとも。
官僚機構も普通に動いている。
正常な国家です。
ただし。
王太子だけは残しましょう。
バカな王太子です。
ここまで消すと、
「卒業夜会で婚約者を断罪したい」
という最初の火種すら生まれません。
さすがに研究対象がなくなります。
では、そのバカな王太子一人を正常な国家へ置いた場合。
公開断罪は、どこまで進めるのでしょう。
証拠が何もない場合。
一応、証拠らしきものがある場合。
被害申告が複数ある場合。
令嬢側にも本当に非がある場合。
婚約解消そのものには正当な理由がある場合。
誰にも知らせず、王太子が当日に強行した場合。
条件を少しずつ変えれば。
どの段階で、誰が止めるのか。
逆に、どこまでなら正式な手続きとして進むのか。
それぞれ違ってきそうです。
……これ。
ケーススタディにできるのでは?
悪役令嬢ものを正常な国家へ放り込み。
断罪条件だけを少しずつ変えてみる。
そして、どこで止まるのかを見る。
たぶんコメディになるでしょう。
正常な人たちが、
「殿下、それはできません」
「なぜだ!」
を延々と繰り返すことになりそうなので。
ですが。
ちょっと立案してみたくなっています。
こういうところです。
「あ、その視点か」
「それはそう」
「でもなあ、それを全部まともにしたら話が始まらないんだよなあ」
と考えていたはずなのに。
最後には、
「じゃあ、始まらない場合を書いてみるか」
という別の話が生えてくる。
悪役令嬢研究を重ねた結果、最近はだいたいこんなことになっています。
ちなみに。
これを書き始めた時には、
「まだ500ml缶、二本目です。いける」
と言っていました。
現在。
三本目です。
書いている間に入りました。
冷蔵庫に残っているのは、500ml缶があと一本。
あとは鏡月が、ほんのわずか。
たぶん。
これを投稿したあと。
私は散歩がてらコンビニへ行き、追加を買っていることでしょう。
未来が見えます。
悪役令嬢ものの国家構造より、こちらの方がよほど簡単に予測できます。
なお。
明日は早番です。
午前六時から勤務です。
しかも、自分のグループではありません。
他のグループのヘルプです。
……。
ここまで国家の業務分担について考えておいて。
明日の私は、別グループへ応援に行きます。
人生というものは、なかなかよくできています。
そして今。
頭の中から、
「どちて明日六時から仕事なのに飲んでるんですか?」
という声が聞こえてきました。
それについては。
答えないことにします。
今度こそ、ここで終わります。
たぶん。
もはや、飯より酒になっております。
16時間夜勤のあとに、8時間夜勤。
まあ、いつも通りです。
そんな勤務のあとで。
飲まない理由、あります?
いや、ない!
ということで、現在もしっかり飲んでおります。
だいぶ酒の勢いで書いておりますので、妙なところや、いつも以上に話が飛んでいるところがありましたらご容赦ください。
たぶん明日、素面の私が見て、
「なんでここまで書いた?」
となると思います。
でもまあ。
今の私は楽しいので、よしとします。
お読みいただき、ありがとうございました。




