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プロローグ 光の消えた日
今日ママが死んだ。
ママが倒れたのは、静かな夜だった。
香の匂いが強すぎた。
部屋の空気が、重かった。
第二王妃アンナ=ウィングスは床に倒れていた。
指先がわずかに震えている。
「ママ……?」
返事はなかった。
医師たちが呼ばれた。
侍女たちは泣き崩れた。
誰もが突然の死だと言った。
けれど私は見ていた。
ママの唇の色。
不自然な冷たさ。
窓の外に立つ第一王妃の姿。
その顔は、笑っていた。
ママが死んだ後、
お父様は変わってしまった。
王カルディウス=ウィングスは寝台から起きなくなり、政務は全て第一王妃キャサリン=ウィングスに移った。
そして、次に変わったのは
私の世界だった。
「貴女を守るため」
そう言われて与えられた部屋には、
何もなかった。
光も、温もりも届かない。
私はそこで生きることになった。
――あの日から、
私の世界から光が消えた。
そして数年後
私は処刑を待つ牢獄にいた。




