☆番外編☆YUKUMI
星が青龍になった日。
雷は星に陶酔していた。雷が星に執着する理由は…
俺たちは幼なじみだった。
白虎の小虎の俺。
青龍の小竜の天。
青龍に仕える一族、白龍の小竜の雷。
幼い時からずっと一緒だった。
皆親が忙しいのもあったし、神の子として扱われるのにウンザリしていた俺と天は、雷を入れて俺たちだけの文化を作り上げていた気がする。
いつか本当の神になる日が来ても俺たちは変わらないし、変わる気がなかった。
なのに…
神にしてはかなり若くして亡くなった、青龍の天。天が支配をする日本はこれからという時で、皆動揺し、悲しみに明け暮れた。
こいつは神としてのスキルもあれば、外見がとにかく美しかった。
嫉妬するレベルに値しないのだ。
龍と虎で種類が違うからでは無い。
天は全てを持っていた。皆を惹きつける力、治める力、遊び心、優しさ。
幼い青龍は鱗が黒く、正直汚ねえ鯉のような尾っぽをしている。脱皮し、神に近づく過程で自然から取り入れた、空気、雨、風、雷、湿気、乾燥、日本にあるものから美を身体に組み込んでいく。
天の黒い鱗は青龍一族の子とは違い、歩く度に光り輝いた。
晴れの日には太陽を取り込み、雨の日には雨水を纏い皆を引き付けた。
赤子の頃から一緒にいた俺でさえ、何気なく微笑む姿、汗を拭う姿には息を飲んだ。
さらに幼なじみの白龍が遊び役としていつも隣にいたのだ。こいつは違った雰囲気だが、輝く白い鱗に似合う優しい顔立ちは、一緒にいれば2人の美しさを倍増させていた。
「雷!冽!」
俺たちは、人間界でいう20年ほど前に神庁を抜け出す遊びを覚えた。
神庁は京の街と隣接していて、年頃な俺達には京都の若者はとても魅力的だった。
力もなく、金もない。
短い命をただ生きているだけなのに。
「今日もまた、あの犬小屋に行くのかー?俺はいかねー」
天蓋ベッドで横になりくわっと欠伸をする俺に天が近づき、腕を組んで見下ろしている。
「はは、たしかに小さいよな、人間の家は。俺たちみたいに自由に空間をいじれない。だが、それがいいんだよ。あるもので過ごしやすくするなんて、愛おしいじゃないか」
「たしかに…戦後の日本人の知恵は怖いほど成長をとげています」
「なあ?ほら行こうぜ、渚と今日はたこ焼きをやるんだ」
渚は、祇園が抱える医者の娘で俺たちと交流が許されている。
……一定の距離感を守れば。
悪くはないが、別に飛び抜けて美しくもない普通の女だ。
「それは素晴らしいですね!たこ焼き。食べたいです」
雷が目を輝かせている。まあ、たこ焼きは食いたいし行ってやらんでもないか。
しかし、渚、渚って…そんな人間の女がいいか?
すぐ死んじまうし、病気にはなるし…俺は興味ねーな。
「渚様のお食事は最高ですもんね!天様!」
天と雷は、角と尾をしまい、人間が着ている服に着替え楽しそうに消えていった。
「ちょっと待てよ!」
俺はたこ焼きにありつく為、2人を追いかけた。
***
「雷…星は大丈夫なのか?」
星の尾が出て、青龍になった日。
雷は、壊れ物を扱うように星を抱え置屋につれて入った。
道中、ゆっくりゆっくりと歩いたのは星を気遣ってか?
いや…この龍は自分のものだと皆に見せつけるためにだ。
「大丈夫です。結界の香りに酔われたのもあるでしょう。私がお世話いたします」
白い湯に、星を浸からせて雷は俺の顔を見ず淡々と返事をした。
ったく。こいつ、見せねえってか?
星は俺にとっても大切な親友の子供だ…!
「俺も手伝う、ほら洗うタオル」
雷の背後から近づき、薄い布を手渡そうとした瞬間。
「触るな!!!!!!」
雷の叫び声だった。
顔は見ていねえが、想像はつく。
「……アホ。なんもしねーよ、悪かった。悪かった」
俺が下がると、雷は振り向かないまま頭を下げた。
「なぁ、お前…渚の事を愛していたのか?」
「…」
「渚の子だから、執着すんのか?」
「…」
無視だ。答える気がない。
「…白龍は、青龍に仕えるのが使命です。神に手伝わせる訳にはいきませんので」
早く出ていけと言わんばかりに早口で、雷が言い切る。
俺は湯殿から退散し、長い廊下を歩いた。
雷…何故そこまで執着する?
渚か?渚を好きだったからなのか?
使命?使命でわざわざ人間に化けてまで…
雷…
お前が本当に愛していたのは…




