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第7章 departure【神様】

「……星ちゃん。行っておいで。お母さん待ってるから。」


お母さんは、俺に近づいて肩をたたいた。

わざとらしく明るい声出すなよ。


「学校は?受験はどうすんだよ」


「お前、青龍なのに人間の大学に行きたいのか?」


冽は伸びをして大きな口を開けてふぁーあと欠伸をした。ビヨーンと伸びる姿は、虎というより猫のようだ。


「当たり前だろ。俺は人間だ。これからも人間としていきていく」


露木が俺の顔を覗き込む。見慣れてはきたが、

瞳の中の電流は相変わらず俺を捕らえてくる。


「…星様。気になっているんでしょう」


…図星だ。

俺はこの数週間の出来事に腹を立てつつも、逃げようとは思えない。あんなに苦しかった柏木への判断も、見届けていきたいと思えた。


そして何より自分の事を知りたい。


脱皮?と言われる自分の身体の変化が終わったらどうなるのだろうか。


自分の力で人の人生が豊かになるのだろうか。

悲しみを抱える人がいるならば、俺が救えるなら救いたい。


「いいんですよ。難しい事は追々で。今はただ、自分の事を理解したい本能に従うべきです」


露木は俺の手をぎゅっと握った。

暖かい。握り返したいが恥ずかしいのでやめておく。


「そんなうかうかしてらんねーよ。」


「冽様。お気持ちはわかりますが、星様に無礼な口の利き方をするのは…私は許しておけません」


露木が、冽を睨みつける。

いや、お前も普段は大分無礼な口の利き方じゃないか?


「俺も神だ。ったく…龍が1番偉いってのは誰がきめたんだ?どいつもこいつも龍が好きで参るなぁ。白虎のビジュが1番いいだろ」


「たしかに。冽くんのビジュは天下一品よね」


うんうんとお母さんが頷いている。

15年振りとか言ってたけど、こいつらの関係性はなんなんだ。


「…うかうかしてらんないってのは、柏木の時みたいになんかあるわけ」


「はい。申し上げにくいのですが。」


露木は俺の手をずっとにぎにぎと触っている。


「京にご帰還いただき、探していただきたい方がいらっしゃいます」


「はぁ…それ俺じゃなきゃだめなの?」


「はい!私たちが見つけられたとしても…」


「しても?」


「ただ見つけるだけで、暴走を生み、京都は壊滅の道を辿るでしょう。むしろ見つけた事が引き金となり、暴走を生む。…星様、身勝手なのは承知で、青龍を頼るしか…」


露木は手を離して、俺の頭を撫でる。

こいつは言いづらい事があると身体を触るのか?無神経なのか、優しいのかよくわからないやつだ。


「壊滅っつーのはな、街が破壊されるとか事件が起きるとかじゃねーんだよ」


冽が口を挟むと露木は嫌な顔をしたが、反抗はしなかった。きっと白虎の方が力関係が上なんだろう。


露木がテレビに近づき、指を向けて画面を映し出した。嫌な予感しかしないぞ…。


《本日は日本茶道学会、裏千家濱本家家元の濱本澄(すみ)さんの朝ごはんにお邪魔しています〜!》


テレビにはYouTubeの【働くイケメンの朝ごはん】というチャンネルが映し出された。


なんか見た事あるな。このチャンネル。

バイト先の女の子に休憩中に見させられたぞ。


画面には、つややかな黒髪を真ん中分けにした男性が映し出されている。

まさに、Japanese美男子って感じで白色の鎖骨は灰色の着物がとても馴染んでいた。


「この方の…片割れである神が京の街を結界を崩そうとしています」


「は?神様なのに?」


「…神なのか…物怪なのか…己でも理解出来ていないのでしょう」


露木は指をパチンと鳴らしチャンネルを変えた。今度はテレビらしい。


《現在、京都府庁にはデモ団体が押しかけています!特定の宗教団体から行われていた、多額の献金に家族を蝕まれたという方々の訴えがここに集まっています!!》


金返せー!カルト宗教団体ーー!!

京都府知事やめろーー!!!


興奮したデモ参加者が声を荒らげている。


「星様。この方の奥様は、マンション購入の頭金を無断で宗教団体に献金しました。旦那様は別れずに必死に洗脳を解こうと尽くしましたが…」


露木が首を振った。

死んでしまった?


「薬漬けにされ、宗教団体の言うなりに働いているという事です」


「薬漬けにされちまえば、命は短えだろうな?身体を売って食い尽くされて、死なねえうちに臓器を売られるのが関の山だ」


冽は爪ヤスリで呑気に爪を研ぎながら俺をニヤリと見つめる。

指先に生える鋭い爪を見せつける。

悪趣味だ。


「救えるのはお前だけだったら?」


冽のしっぽが揺れている。その姿は興奮を抑えられていない発情した猫のようだ。


俺は自分の中に湧き上がる感情を鎮めようと深呼吸したが、鼓動は高鳴っていく。

鼓動を抑えようと、胸を触ると手の甲は深い青い鱗に覆われていた。

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