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第7章 departure【爪】

「おい!露木!待て!帰るけど!

何か知ってるのか!?」


足がもつれそうだ。とにかく露木のコントロールで走っている。


「おい!聞けよ!!」


校門まで出ると、門の前にはタクシーが1台停車していた。俺たちは流れるように乗車した。


「無事だ。お前のお母さん。美琴さんは」


「…名前なんで?」


「…」


忙しなくスマートフォンを触っている。

こいつ、肝心な事なんも言わねえ。

とにかく今はお母さんだ。


スマートフォンを取り出して、お母さんとのLINEトーク画面を出す。


「意味ないぞ。美琴さんは多分…」


なんだよ!多分って!

やっぱりこいつは信用ならない!

絆されてた俺が情けない。大切なものは家族だ。


タクシーがアパート前に停車すると、俺は飛び出して階段を駆け上がった。


お母さん!お母さん!

無事でいてくれ……!


「……っ!お母さん……!?」


ドアを勢いよく開けると、ふわりの醤油ベースの香りが鼻に入ってきた。

慣れ親しんだ、庶民の香り。


「あ!帰ってきた!」


お母さんのいつもの声が聞こえる。

靴を脱ぎ捨てて、ズカズカとリビングに上がると、狭いキッチンで母が何かを茹でていた。


そして…うちのダイニングテーブルに誰かいる。


座っているのに背が高いのがわかる。

白髪に、透き通る深い水色の瞳。

俺と目が合うと大きな口を開けた。


「よっ!星!」


…だ、だれ…。


俺の思考回路はショートした。

男の口からは鋭く光る歯が見えた。

八重歯なんかじゃない。

牙だ。


男は俺に見せつけるように、牙を舌でべろりと舐めた。


階段を駆け上がる音と同時に、勢いよく玄関のドアが開く。


「待て!秦野!」


「こら!あんたらそんなにバンバンドア開けたら、家が壊れるでしょうが!」


お母さんは怒りながら、鍋から茹でていた物を箸で掬い盛り付けている。

お母さんが…料理をしている…。

電子レンジ以外使えるのか…?


「美琴さん、すみません…。」


露木はお母さんに頭を下げると、白髪の男の前に立った。


「あずま〜いい加減帰らないから俺からきちゃったよ!星くんの脱皮はもう終わる頃だろ?」


「…えっ。だだだだだだだっぴ!!知ってるの!?」


おいおい、お母さんいるのにこいつ爆弾発言しやがった。勘弁してくれよ!


「星ちゃんの鱗、たしかに最近家で見なくなったね?」


しれっとお母さんは独り言のように呟いた。


そして、白髪男の向かい側に座ると自分もラーメンを食べ始める。

白髪男も当たり前の様にラーメンを啜っている。こいつは本当に誰なんだ。

でも…なんとなくわかる。


露木と同じ…人外だ。


「あーっ!人に作ってもらうインスタントラーメンってなんでこんな美味しいんだろ!個性が出るよね?チェーン店なのにちょっと違うみたいな。あ!京都の天一とか!」


「わっかる〜!私はインスタントにはわかめを入れる!むしろわかめしか入れたくない!」


得意げにお母さんが話すと露木がため息を吐いた。


「盛り上がってるとこ悪いが…最重要人物が怒りと混乱で睨んでいる」


「あ、ごめんね。星ちゃん」


お母さんはどういうテンションなんだ…。

さっきの震えた声はどうした。


「ごめん〜!許して!あ、俺はね、れつ。あずまからなんも聞いてないのかな」


「聞いてないし、お母さん。俺の身体の事知っててなんで何もいわなかった!!

 そんでこいつは誰だ。知り合いなのか?いい加減にしろ!!!」


俺は混乱でとにかく怒りの感情が我慢できない。

お母さんとは喧嘩という喧嘩は今までしたことがなかったが、この件については心からの怒りだ。


「・・・ごめんね。お母さんも雷くんに会うのは15年ぶりだったの。もちろん冽くんも」


いつもふざけている母とは思えない。優しい声色だがどこか悲し気にゆっくりと話す。


「さっき星くんに鬼気迫る雰囲気で電話したのは…ついにこの時が来ちゃったんだなぁって」


「この時…?」


露木を見ると頭から角を出して白龍の姿になっている。

そうか。お母さんは露木の龍の姿を知っているのか。

いやむしろ、白龍の露木と知り合いなのか。


「冽くん、ごめん。説明してくれる?私全部把握しているわけじゃないから」


白髪の男は立ち上がると俺の髪の毛を撫でた。

目を細め、大切な物を見つけ出した時のように。俺の全てを目から吸収しようと情報収集している。

そして満足気に微笑むと、頭から獣の耳がふわりと登場した。


「星よく聞け。いきなり全てを理解するのは無理だと思うが。だがお前は日本に今最も必要な人物だ。そして…神でもある」


頭を撫でている手をみると、白く光る毛で包まれていた。

指先は、太く鋭い爪で覆われている。その爪を見せつけるようにゆっくりと手は俺の頬に移動した。


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