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人口死設  作者: 山田モタ
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最終章 終幕

 やっと本格的に宇宙に関係ある!と思った方、すいません。宇宙は最後の方で語られることになります。すいません・・・。

 コレからどうなるのか、今のところ残酷性がないように思いますよね〜。

コレからですよ!お待たせしました!!

 第最終章 終幕、始まるよ!!

 中に入ると先ほどの部屋と同様で真っ白な空間だが、大した広さではない。

 「ここが人工死設です」

 視界の先に、人一人が入るには十分なサイズの透明な

 カプセルと、その隣に胡散臭い雰囲気が漂よう男が立っている。暗い表情で目が泳いでいる様子を見ると、先がかなり思いやられるようで心配な静流。

 服装は空間と同色の着物で、少々変わった首飾りをしている。首飾りの周りには、それぞれ異なった形の石の小さなカケラが飾られている。

 男は例の霊媒師である。石のカケラは、過去に訪問した依頼主たちの家の産物のカケラである。胡散臭いというか少し不気味だ。なんでも印象深い依頼主の家が過去に物体を産んだときの産物を身にまとうのが、彼のやり方らしい。ちゃんと了承の上だそうだ。依頼主にこれ以上、不幸が起こらないよう祈りを捧げるための、独特な価値観が生み出したやり方なのだそう。

 「こちらが国々を渡り数々の偉業を成し遂げた霊媒師の、道道院偉業どうどういん いぎょう様です。今回あなたが無事に臨死体験を遂げるため、色々としてくださる方です。ささ、参りましょう」

 なんだか嬉しそうな白星。自分の発明品を体験してもらえるのが嬉しくて仕方ないのだ。

 カプセルの前に立ち、静流は道道院に頭を下げる。

 「静流です」

 道道院も自己紹介をし、ゆっくりとお辞儀する。道道院から、後ろめたい何かを感じた静流は、君が悪く感じる。

 カプセルはガラスでできており人一人が寝そべるには十分なサイズだ。内部にはベットが一つある。枕とベット以外の布団の類は一切見当たらない。

 内ポケットに手を入れた白星は、手に収まるほどの小さなニモコンを取り出し、カプセルに向けてボタンを押す。

 するとカプセルが神々しい光を放ち、ベットだけを残し消滅する。

 「ええ!消えた!え!なんでなんで!?」

 大きく口を開けて驚愕する静流。白星の方に顔を向けて質問する。

 「あぁご心配なく。コレはこう言う仕様です。エンターテイメンツッ、てやつですよ」

 説明にならないことを自身ありげに言う。

 「カプセルは分子レベルに分解され、あの素材はもうこの世のどこにもありません」

 「え、なにやっとんすか・・・」

 分子レベルに分解して元の素材がなくなる。コレはあまりにも無意味で減る物資だけが増えるだけに思える。

 「安心してください。カプセルは分子で再構築して、カプセルの特殊な機能を、そっくりそのまま再現できるので問題はありません。ただし、オリジナルの存在そのものは消滅しますがね。

 そしてこの分子が消滅したらまた新しい分子を使わなければなりません。じゃぁ分子が減っていくばっかなんじゃないの?そう思いますよね。ノープロブレム。問題は無限エネルギー炉で解決します。分子そのものを大量生産することで、分子をどんなに無駄に消費しても消費の分を賄うほどの、本物と同じ性質が生み出されるのです」

 恐るべき科学の進歩。神の領域に立つ現代のテクノロジーに唖然とする。今時クローンや自分自身の能力覚醒薬が実現している社会だ。無限エネルギー炉は現実離れしているが、大した現代となった。

 なぜ酸素や物体が減らないのかは、無限エネルギー炉があるからと静流は悟る。

 「す、すごいですね」

 回答はすごく単純な言葉だけで、この社会の恐ろしさがわかる。人類の科学は目覚ましい程に進歩しているが、1秒に一回と言わんばかりのスピードで発達している。

 「ではでは、話はここらへんにして。さぁ、ベットに横になってみてください」

 ベットに座ると、静流は妙に落ち着き、今から死ぬ体験をする人間とは思えないほどにリラックスしている。トロッとした顔になり、白星はご満悦である。

 「寝そべるともっと素敵な気分になりますよ」

 蕩けるような表情の静流は、ゆっくりとのんびりと仰向けに寝そべる。

 「ほぉ〜」

 日々の疲れがスルッと抜け出るような、不思議な感覚を味わう。

 「ここで寝てみたくはないですか?」

 「はい・・・・・・」

 彼の脳は蕩けている。実際蕩けているのだ。体験者はこのベットで臨死を体験するのだが、このように脳を蕩けさせる方が、臨死体験を良好に迎えることができるのだ。

 「ではいきますよ。死後の世界を存分に満喫して行ってください。良い死後を」

 静流はコクリと眠りにつく。

 すると、カプセルが再構築された、密閉された空間は酸素がなく、静流は苦しまず呼吸困難を起こす。死ぬ寸前に、ベットの床が下がり静流の体が徐々に沈んでいく。

 完全にベットに横たわる静流の姿がなくなり、カプセルが分子分解され、四角形に空いた穴は瞬きする暇もないほど早く塞がる。


 「行きましたねぇ。道道院さん」

 紐が緩んだかのように、肩の力を抜く道道院。

 「道道院さん、無愛想でしたよ。ダメじゃないですか。無作法というやつですよ」

 笑顔で道道院を叱る。

 「そんなの、無理じゃないですか・・・・・・。だって!だって・・・・・・」

 ブルブルと体を震わせる道道院。

 「死人に口無しってやつですよ。それに、死人は感情を持たない」

 「だから資源に使ってもいいってことですか・・・・・・!」

 道道院は怯えながらも自分の意見をぶつける。

 「おやおや、一丁前に怒ったように。捨て駒に使わないであげてるのを感謝してください。あんたらには膨大な金を積んでんだ。それ相応の働きを見せてくれないと困る。それに、消えた奴らは戻らない」

 笑顔に似つかわしくない声で、道道院をしつける。

 「あんた、本当に悪魔だ・・・・・・!」

 「科学の進歩には必ず、犠牲が必要なのです。つまらないことを気にしだすと、医学と科学の発展はあり得ないのです。在庫から資源を徴収しているだけに過ぎない。そう思ってくださると、マイナス面は一気になくなります。ポジティブに行きましょうよ」

 腹ワタが煮え繰り返るほど怒りに燃える道道院であったが、ここは静かに怒りを抑えることに徹する。

 「さぁ。静流さんが戻るには、そう時間はかかりませんよ。準備にかかりましょう」

 あんだけ怯えていた道道院が、何かのスイッチが入ったかのように業務に取り組む。その姿は必至そのものだ。



 気づくと、静流は昔の住宅街に立っていた。何千年も前の景色だ。

 石で作られたブロック屏と、木で建てられた家と、コンクリートの地面。

 不思議な感覚だが、どこか懐かしく思う静流。

 ガラスの窓を除いても、部屋の照明や人影が一切見当たらない。あるのは意味を持たない住宅街だけだ。

 コンクリートの道も何もかも不気味だ。

 電信柱もコンクリートで作られている。黒いシミが染み付いていて、なんだが汚い。

 全体的に薄暗い。空を見ると、空を覆うように包む雨雲が見える。

 ((((歩いて・・・・・・・・・))))

 心のどこかで、そう誰かに言われたような気がする。

 後ろを振り向いても誰もいない。

 とにかく歩くしかないようだ。直感で前進する。先が見えないほど長い道だ。暗さも相まって、余計に不安を募らせる。

 (ここが死後の世界?)

 死後の世界は案外人間社会の文明と変わりなく、それにずっと疑問を持つ静流。アニメや教科書で見る世界が、どうして死後の世界なのか。

 静流はただ無心で歩き続ける。辺りの景色は全く変わらない。まるで全ての物が特徴を持たない、ただあるだけの存在のようだ。静流は全く変わらない光景に君悪がってしまう。

 (なんだよここ・・・・・・死後なのか?気持ち悪いなぁ・・・・・・)

 得体の知れない気持ち悪さが彼を襲う。

 (走ろ・・・・・・)

 同じ景色を見るのに飽きてしまった静流は、スピードを保って走る。これ以上いると、退屈で死にそうだからだ。

 しかし、随分と長い時間が流れても、実際にあるのかわからない不確かな場所に到着することはない。

 圧倒的孤独。視覚的楽しみもない。

 しかし静流は精神を保っている。

 薄気味悪い道と、生物の気配がない空間で、孤独感に苛まれ、誰しもが精神に異常をきたすものだ。静流の精神はいつもと同じものではないことがわかる。

 全てが虚無で空いほどなにもない。

 スピードをもっと早めてそのままのスピードでキープしても、全く笑えるほど何も変化が訪れない。ただ静流は平常心のままだ。

 そして、さらに時間が進む。すると当然、変化が起こる。なんと、カラスとハトの鳴き声が聞こえたのだ。

 驚いて声の方向に目をやると、電線に止まっているカラスとハトの姿が見える。限りなく遠い先の電線の上にも鳥の姿が確認できる。

 今まで変わり映えのしなかった世界が、とても魅力的に思える静流。


 しばらく走っていると、何かに躓きそのまま転倒する。前に転んだ勢いで筋に何か、ゴワゴワとした感触を感じる。一度立ち上がりソレを見る。その物体を見た瞬間、背筋が凍る。

 それは、カラスの遺体だ。小蝿がわき、汚らしい羽。不潔をここまで表現できるのはゴミための山とカラスだけだろう。静流はカラスの遺体の上に乗っかってしまったのだ。

 虚無の空間も相まって、彼は正気を保つのが困難になっていく。身震いで鳥肌が止まらない。遺体の上に乗った事実が不快に思う。

 「え、なななに?え、いやいや、え?僕も死ぬの・・・・・・」

 臨死体験しているはずが、生命の危機を感じてしまう。霊体であるはずなのに。

 その場から逃げるように先に進む。

 足をどんだけ動かしても動悸がしない。早くあそこから逃れたい。その一心で足は動く。

 電線に立っていた鳥たちが続々と落ちゆく。首が折れ目が飛び出す鳥たち。精神は尚も正常である。

 虚無だったはずが、その情景は蒸気を逸している狂気へと変わり果てる。静流は決して気持ち悪いや恐怖などを感じたりしない。

 無心で走り続ける。その間意識ははっきりとしていて、眠ることもできない。ただこの地獄を淡々と味わうだけだ。変化を祈ったことを後悔した静流である。


そのまま数日が過ぎたであろうか。静流は永遠に思える時間を恐怖で過ごしていた。

すると、道の行き止まりに到着する。ブロック塀の行き止まりと、今目の前にあるのは“黒い球体”だ。

しかしなぜあの球体があるのか?静流は不思議に思っていると、球体に文字と数字が浮かぶ。

[鳥1257000匹]

数秒が経つとまた別の文字が浮かぶ。

[精神異常者8482名]


[障害者5840人]


[園児9684名]


[患者4182名]


[自殺志願者10001名]


[老人32057名]


[無理心中5053]


 「なんだ?これ・・・・・・」

 次々と綴られる物騒な言葉に、思わず声が出る。

 アニメや小説で馴染みのある言葉だ。それは2000年代の頃の作品、もしくは2000年代が舞台の作品でしか見たことがない。園児以外は全員存在しない。

 球体に何か因果関係がありそうだが、球体に紐ずく何かが思いつかない静流。

 (なんで死後の世界にこんな物があんの?)

 すると、今度は今までと違い、命令文が浮かぶ。

 [後ろを振り向け]

 命令に従い後ろを向く。

 静流の目の前には大勢の人が立っている。

 ランドセルを背負ったオーバーオールの女の子。口が限りなく開き涎を垂らす、車椅子に座っている患者服姿の女。園児服の女児。ゆったりとした服装の老人など。苦悩の表情を浮かべる者たちが全員、静流の方を向いている。

 静流はコレらが死者で、自分を黄泉の国へと連れ去って行く気なのでは、と思っていたのだが、どれだけ時間が経っても全く何も起こらない。この状況でただ黙って何かが起こるのを待つ静流ではない。目の前の大勢の亡霊を目 の当たりにして、体が不自然に硬直したから何もできないのだ。

 体を力ずくで動かしてみても微動だにせず、生気が抜けた集団に凝視されながらの沈黙。静流の恐怖を余計に引き立てる。

 震えることさえできないこの状況が気持ち悪い。

 すると、集団は一斉に目から血を流す。

 血はボト・・・ボト・・・ボト・・・と立てて落ちているのだが、不自然に重い音で落ちている。静流はとても悲しい気持ちになる。なぜそう思ったのか、静流自身わかっていない。亡霊たちの悲しみが、音として伝わってきたとでも言うのか。

 たまらず拳を固く握る。そのとき身体が初めて動いたことに初めて気づく。

 「どうしたらいい・・・・・・?」

 どう見たって自分を襲いにきた、ヤバめな雰囲気の亡霊の力になろうと言っている。どう考えても常軌を逸している。これは霊体である静流の冷静さからくるものではない。元々感情の強いタイプなのだ。自分が正しいと思えば、あらゆる状況に問わらず実行してしまう。それが静流なのだ。

 周りからはそれを鬱陶しく思われている。なぜなら間違ったことも正しいと言って聞かない、ただの頑固者だからだ。逆に正しいことも正しいと言えるのが彼の良いところなのかもしれない。

 亡霊たちは静流を一斉に指差し[くれ]と、一言だけ言い、静流はフッと意識を失う



 カプセルのガラスが分子分解しベットは静かに元の位置に戻る。目覚めた静流は、すぐに上半身を起こし白星を睨む。

 道道院は静流を見た瞬間、背筋に電流が流れ怯え、後ろに倒れる。自体を重く受け取り、白星が動きだす

 「おや?物騒な顔つきですね。まるで悪霊に取り憑かれたような顔をして」

 白星は静流の顔つきが気に入らない。

 「悪霊だと・・・・・・?」

 嫌悪感が満ち満ちと込み上げる静流。

 「なるほど、見たのですね。断片を」

 目つきが変わる白星。

 静流は断片だけを見た。口にするだけでも躊躇われる、非道の所業を。


 2000年代の色んな人が様々な事情を抱え苦しんでいた。そんな中、SNSで[自殺志願者はこちらのリンクを押してください]という投稿を見つけ、苦しむ人たちはリンクを押した。

 すると、交換した覚えのないLINEアカウントからメッセージが届いた。白星からのLINEだ。

 客は皆、疑いはしなかった。

 そして、会う流れになると、客の家に行き、白星は研究所に招待する。

 白星は研究場で相談を聞いて優しく客を抱きしめる。コレを聞いて、非道の要素が全くないように思える。客のように丁寧に接する姿は、まさに暖かくて親切な医者だ。

 だが、その相談はとんでもないものだった。その内容は、死にたい、楽にして、というものだった。静流は「今から楽になるからね。大丈夫だよ。コレまでよく頑張ったね」優しく抱きしめながら頭を撫でる。静流は初め、この言葉を聞いてゾッとした。それに、優しく抱いている最中、客の見えていないところで、不敵な笑みを浮かべながらのセリフ。

 コレは全てヒュドロの資源で使うモノであり、客を上手く誘き寄せて唆している。

 以上が静流のみたい断片だ。


 「最低だ・・・・・・人の気持ちに漬け込んで・・・・・・なんでそんなことを・・・・・・」

 険しい目つきで白星を睨む。声を震わせながら、自分の気持ちを言語化する。

 「ふーん。なるほど。ここに来る間、あなたはずっと腹が立っていた。そのイライラを他人にぶつける人はそういない。感情が昂りやすいのが原因なのか」

 白星は静流の中にいるヒュドロに気づいている。ヒュドロに憑依された人間の目つき顔つき共に、変化が訪れることがある。静流の目つきや顔つきは、死人のものと言って間違いない。ヒュドロの密集率が異常だ。

しかし、取り除けば静流に影響はない。だが重視するべき点は、大勢製薬に害を及ぼす要因が目の前にいるということだ。ヒュドロの取り除き作業が必要だ。

「道道院さん、いつまで腰抜かしているのですか?例のアレを持ってきなさい」

道道院に命令を下す。道道院は命令に従い奥の部屋へ走り去る。

 「静流さん、良いですか?私たちには必ず、優先順位があります。これ以上科学を発展させるためには、道徳やモラルなどは、優先順位には入らないのです。固定概念に縛られると、実行しようと思ったことができない。全ての物事にはアップデートが必要です。こまめにゲームデータをセーブするのと一緒です。不必要な物を思い出だからと残してちゃ、何か実行する時に足元が邪魔で実行できなくなる。モラルや道徳など、無用の長物なのですよ」

白星が喋っている内に、ジュラルミンケースが山積みに積まれている、台車を引く道道院がこちらに向かってくる。

「ご苦労様です」

道道院は二人のもとに行き、台車を白星の隣に置く。

ジュラルミンケースを持った白星は、ケースを開け静流に見せる。そこにはケースに埋め尽くされている大量の万札が入っている。

「このケースに一億円が入っています。台車に積まれているケースと同様です。えーと、ひーふーみーよー・・・・・・全部で20億円ほどあります。10世紀は遊んで暮らせますね」

金に目が眩む静流。しかし受け取ればまた別の霊が自由を徹底的に奪われてしまう。そして、あの悲しみを教えてくれた、救いを求めた亡霊を裏切ることになる。だが、目の前には千年賭けてようやく得ることのできる大金がある。一瞬で幸せになれる。

 「どうです?夢が広がるでしょ。固定概念を持ち続けるのは良いですが、大切にしすぎるとチャンスを蔑ろにしてしまいます。捨てられない大切な想いなどは、科学の世界でじゃ邪魔なものです。必ず人生には切り離さなければならない事柄がある。大切な想いはまさにこの期を持って絶たなければならない。私たちはそうしてきました。あなたの想いと夢を天秤にかければ、想いなど夢と比較したらとても軽い。この科学の世界において、一度その大切な想いを手放すことが肝心です。しかし、こんな条件でも即答できないとは・・・。わかりました。

 ではあなたに選択肢を与えます。自分の気持ちを大切にするか、想いを諦め、大金と言う夢を取るのか。決まりましたら、お声掛けお願いします」

 白星は静流に考える時間を与え、その場から姿を消した。静流は自分の気持ちが目の前の夢に勝るものなのかを、今一度考えることにする。


 モラルや道徳は人として厳守すべき概念で、人との繋がりが左右される。だが、医学や科学において不必要だと白星は語る。静流、彼はどこか納得してしまう点があるが、やはり腑に落ちない。

 例えば、実験動物はよく死亡している。毎年に256兆匹も死んでいるのだ。だがそれは人類にとって必要な死であって、無駄に動物を殺したりしない、コレは人類のためだと言ってるが、コレはどう考えても道理を超えた行為だ。幽霊の場合は道徳のある人間のその後の姿で、本来死者の自由は何にも縛られず、浮遊することだけができる。それを人類の科学のために縛り付けられる。人生に苦しんで限界を迎えた者に対する行いではない。だが、その屈辱を実験動物が抱かないはずがない。

 実験動物との違いは、命を欲しているかだ。生物が生存意欲を持つことは当たり前だ。生への渇望があるのに実験台としてその生涯を遂げる。だが、実は人間以外にも確実に霊になる。実験動物は死後、他の霊と一緒で、何も気にせず浮遊できるというのだ。

 対してヒュドロとして生者に使われる霊は、本来の自由な霊とは異なる。彼は亡霊たちの気持ちを知っている。あの地獄のような虚無を体験させてくれた。アレを彼らは永遠とも思える時間よりも永遠に感じながら、今は存在しない2000年代の住宅地に縛られ、屈辱を噛み締めている。

 話は戻るが、夢と自分の想い。これは彼にとって、耐え難いほどに決断の難しい選択だ。彼は昔から選択が苦手だ。その選択で良いのか?という疑問が頭を巡る。そして手探りで探していき、ようやく決断した選択を誰かに「バカだなぁ、〇〇を選択したら優位になるのにぃ」と、いつも言われてしまう。

 亡霊たちを救い、手に入れた力で大勢製薬を壊滅すること。それが彼に課せられた使命なのに、どうしても夢という大金がチラついてしまう。

 自分の夢と他人の自由・・・・・・。自分にとって何が大切なのか。

 他人の苦しみなんて、自分の今後の人生には関係ない。ただ亡霊たちを救える力がありながら、救わないと言う決断を取ったら、罪悪感に苛まれるに違いない。

 しかし、目の前に幸せが置かれている。コレに手を伸ばせば、もっと長生きでき、たくさん楽しい想 思い美味しい思いを味わうだろう。

 そして彼は、夢欲しさに、甘い考えがよぎる。それは、大金を手にして元の部屋に帰されたら、このことを全世界に言いふらす、と言うものだ。

 大勢製薬白星がなんの対策もしないわけがない。そういう発想が今の彼にはできない。


 「白星さん、決まりました」

 白星と道道院がまた突然、先ほどまでいた位置に現れる。

 「それはそれは。では、聞かせください」

 白星の瞳はギラギラしている。まるで何かの勝利を収めたかのように。道道院は静流の目に絶望視する。期待していた展開に裏切られた気分だ。

 「はい。えっと、夢!夢をください・・・!夢!!」

 気づくと静流は、興奮して前のめりになりながら言っていた。それを見てニヤリと笑う白星。頭を抱え涙を流す道道院。

 「わかりました・・・・・・では、受け取ってください」

 ジュラルミンケースを静流に渡す。静流はケースを受け取り、ケースを開けて目についた札束を取り出す。

 「ハハ・・・ハハハハ・・・ハハハハハハハ!!敵に塩を送るとは、偉人さんも大したことないなぁ白星さんよぉ!!」

 野望に燃える闘志がメラメラと熱くなる。殺意と勝利を確信した感動の眼差しが白星に向けられる。

 「ハハ・・・ハ・・・・・・アレ・・・・・・?」

 すると、意識が飛び、そのまま倒れる。ジュラルミンケースの取手に、触れると即眠りにつく麻酔が塗られている。白星は透明手袋をつけているので、麻酔が通ることはない。

 「意識、飛びましたか。では、始めますか」

 白星は後ろに手を組み、道道院にそう言う。

 「あぁ・・・・・・はい・・・・・・」

 道道院はかつてなかった希望に想いを馳せていたが、それも見事に失敗し絶望し、膝から落ちる。

 「あ、そうそう。この人の体のヒュドロをあなたの体内に移した場合すぐバレますからね。もししたら、あなたを消すことになります」

 不敵な笑みで道道院に釘を刺す。

 「そそ、そんなことしない!!いや!!!絶対にしない!!」

 「図星ですか。まぁ、良いでしょう。すれば消すだけ」

 動揺する道道院。

 「では、改竄しますか。ふふ」



 気がつくと、静流は届いた部屋に帰っていた。日付と時間は転送日と同時刻、ということは時間が止まっていたと言うことになる。

 「うわぁ、すごかったなぁ〜。あんな体験、初めてしたよ」

 両手を上げて伸びをする。

 「くぅ〜、疲れました!」

 静流の記憶は改竄され、住宅街を走る記憶までは残され、臨死体験が終わるとなぜか20億を渡され、自然な形で返された、と、大幅に記憶をいじられた。

 「どうしよっかなぁ、20億円なんて使いきれないよぉ〜」

 助けを求めた亡霊たちのことなんて、綺麗さっぱり忘れている。それよりも今後、この有り余る金で何をしようかと、今後の未来に想いを馳せる。

 「うーん・・・一旦テレビ見よ〜」

 しかし中々決まらず、彼はまたバラエティ番組を見始める。



 人々は想像し、幅広い分野で想像を糧に、それに適した物を作る。人類は神にとって美学そのものだ。

 宇宙の存在に気づいたのは紀元前500年頃。そこから宇宙理学が進歩し、観測可能な宇宙が今や、465億光年と想像を絶する距離にまで進歩した。しかし宇宙の果ての観測には至らない。

 膨張は時代と共に変化し、約50億年前には膨張のスピードが加速していたのだが、最近は膨張スピードが低下していると、科学者の中で囁かれている。

 これは私的な解釈であるのだが、少子化の原因で膨張スピードが低下しているのだと思う。

 いきなりこんなことを言って、

 「コイツ何言ってんの?」

 と思った方も多いだろう。まず話を最後まで聞いて欲しい。

 前に見た資料で、人の脳と観測可能な宇宙の構造があまりにも類似している、というのを見つけた。宇宙の構造とただただ類似しているだけとは到底思えない。なぜなら、宇宙の構造とあまりにも類似点が多すぎるからだ。

 人類のニューロンの構造が宇宙の構造に類似していることから、人類が知的生命体であることの証明ができる。

 物書きや様々な分野で活躍するクリエイターには独自の世界観がある。それらを創造することで独自の宇宙が誕生する。宇宙の膨張が減速するのは生まれてくる子供が減じているからだ。子供は他の大人と比べて想像力が豊かだ。宇宙の膨張は彼らが大半をしきっている。

 このまま少子化が続いていくと、宇宙はそのままの形を維持してしまう。

 しまった。少子化問題を題材に話を進めていないにも関わらず、私がその問題の方に話を進めている。当初の計画が台無しだ。いかんいかん、話を戻さなければ。

 要は人類の中に宇宙の力があり、人類はその力の可能性に気づかずに生活している、ということだ。

 人類は創造主の力を知らないし、力の出し方も知らない。人類の凄まじい探究心が創造主に近づく道であることにも知らない。

 そして創造主になれない要因はもう一つある。それは、道理やモラルなどを遵守しているからだ。それらを遵守することで、手にするはずだった高みがさらに遠のいてしまう。

 だが人類にとって、それがいいのかもしれない。宇宙は人類が思考をやめない限り膨張は止まらない。

 未来の世界では恒河沙光年という、エゲツない距離まで広がっている。それが私の願いだ。

 コレからまた新たな宇宙が誕生する。

 ここまで見ていただきありがとうござます!

 幽霊の中には宇宙が広がってるんですよねぇ。

 幽霊は生者よりも創造主寄りの存在なんですけど、独自の世界は作れないんですよ。だってですね、彼らスピってる存在じゃないですか。(膨張の減速の理由探しで必死なんですが・・・)

 改めて、コレまでと最後を含めて、

 [コイツ最後まで何言ってんの?]

 って思われた方は多分ほとんどだと思ったかもしれません。ご指摘をもしお時間があればしていただけると幸いです。

 これにて!人工死設、完結です!!ご愛読ありがとうございました!!ご愛読!!!

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