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分裂と併合

 首都であれば孤児は無料で寮に入ることができ、学校にも入れる。ただ、それは首都ウーベだけの話。それは国内を1日で歩いてぐるりと回れる時代だからできた。あの頃は人口が少なかったが、孤児も少なかった。



 あの頃に比べ、金銀鉱山の発見でお金はできた。開墾のおかげで食糧もある。だけどここまで2年弱だ。私ももうすぐ17歳になる。楓も12歳になった。あと半年ちょっとで念願の13歳だ。私も頑張りたいが、人材がいない。人はいるが、私の望む人がいない。


 支配する側にいた人々は貴族に限らず、法の抜け穴で生きている。彼等の言い分は『バレなければいい』という考えだから、2年程度で良くなるはずがない。


 旧ウマクラス子爵領だったころのラカユ国であれば孤児院の廃止もできた。だが急に大きくなったラカユ国では無理だった。教会の反対もある。私は対案を示すことができなかった。ウーベのことを語っても、これだけ広く内乱で荒れていると現実的に無理だ。


 金はあってもザバンチ王国の分裂で人が沢山死んだ。そして国境紛争でも死んだ。ブルザ王国との戦争でも沢山死んだ。人がいない。建物を建築する人がいない。材料を運ぶ人がいない。学校を建てても先生がいない。無料食堂を作ってもスタッフがいない。ないないづくしだ。


 人が足りないからと他国人を入れれば、スパイとテロで治安が悪化して、孤児が増える。成功したのは首都ウーベだけだ。あの頃は流入する人が多かったから人材が豊富だった。だから、時間がかかっても人材育成から始めることにした。


 高等専門学校を細分化し、伝統工芸科、鉱物探索科、刀剣科を新設し、農学科、窯業科、畜産科、洋裁科、理美容科、家政科の教室を増やした。要望があれば新しく学科を作ることにする。

 医学科、看護学科、については専門性を持たせ、軍部の所属とし別棟とした。

 防衛専門学部は、ラカユ国軍学校として独立した建物とし、その中に軍部、保安部、警察部を設けた。


 なんでもかんでも世界樹を使っていては医学が発達しない。竹のように花が咲いて竹林が全滅することがあるように、突然世界樹も全滅する可能性がある。それも考慮しなければならない。


 この世界には電気メスもレーザーメスもない。これまでは鉄製のメスだけだった。鉄製メスは剣の製作のついでに作られていたから、その練度は低かった。ミスリル製のメスもあるが高価であるため王族の手術のみしか使われていない。


 医学部で使うメスはミスリル製を使っている。日本刀には軽すぎるが、メスは軽くてよく切れる方がいい。医学部卒業医師にはミスリル製のメスを貸与している。軍部に属している医師は軍事訓練にも参加しているため、このことをよく理解している。だから誰も貸与されたものをネコババすることはない。


 医師が廃業若しくは死亡した場合は国に返納させる。売却したり、返納しないときは、どこまでも追いかけられ本人又は親族は処刑される。これは徹底される。




 私は新方針を出した。


 国外から留学生を受入れる。

 ヘルシス宰相は、いい案のように勘違いしますが、たぶん誰も来ないと断言した。だから、私は頑張った。少しはヘルシスをギャフンと言わせたい。


 留学生は、自国に帰ることは許されない。そのままラカユ国の留まることを強制される。スパイ防止のためなのだが、住居・食費・授業料は免除され、生活費も出る。

 日本が行った外国人に対する政策と似通っているが、決定的な違いがある。それは本国との繋がりを絶つことだ。国防動員法のある国のように、他国に来てまで動乱を起こしてもらっては困る。


 教師についても国外から招く。住居・食費は当然免除、給料は国内の教員と同額とする。帰国も自由だ。ただし、高等専門学校から外には出られない。

 帰国しないことを制約した教師には住居も一棟保証される。家族を呼ぶこともできる。



 名案と思ったが、結果は誰一人応募がなかった。


 ヘルシス宰相の私を見る目が痛い。それも分からなかったのかと訴えている。その目は失敗するのは分かっていたけど、やらせてみた。と言っている。



 留学生はたとえ望んでも他国がそれをさせなかった。教師については一人も来ることはなかった。たとえ国外出入り自由にしても誰一人来なかっただろう。



 それは……



「ラカユ国、それはどこにあるのだ」


「できたばかりの国?安く見られたものだな」


「孤児出身の女王だと? 穴の空いた服を着ているのか?」


「将校になったらミスリル10%の剣を支給されるだと? そこまで嘘をつかないと人も集められないのか?」


「金銀銅山を持っているだと? 姥捨山(うばすてやま)の間違いだろう?」


「女王警備は女だと? よほど人材不足なのだな?」


「三遍まわってワン、をされても行きたくないぞ」


「女王が転移魔法を使うと評判らしいぞ。何センチ移動するのか?」




 ラカユ国は最初から相手にされていなかった。

 世界からみると旧ザバンチ王国は下から数えたほうが早い小さな国だ。ラカユ国は大きくなったとはいえその旧ザバンチ王国の3分の1弱しかない極小国で、しかも新興国だからいつ消滅するかもわからない。そんな国に国外から誰も来るわけなかった。


 忘れていた。日本が同じことをして大失敗している。海外からたくさん人が来たが、それは出稼ぎにきているのであって日本のために来たわけではない。それに不法滞在や偽装難民が増え果実や野菜が盗まれたり、電線が銅でできているから切断され盗まれていた。それだけでなく法律を守らないため治安も悪化した。お隣の共産国から来日直後に生活保護を申請して48名中32名の生活保護の支給が決定されるということもあった。土地を買い占め、帰化してもアイデンティティーは元の国な人間が増えてしまった。


 ラカユ国がそんなことになっては本末転倒だ。私は日本のバカな政治家と同じ一歩を踏み出そうとしていた。失敗して良かった。




 反省した私は、教師は現役を引退した教員・医師・看護師・軍人・職人を採用した。彼等は喜んで教師をやってくれた。給料は現役教師と同額だ。定年は設けない。80歳でも元気で聡明な人は沢山居る。


 将来を考え、教員養成学校も設立した。


 最初からこうすればよかった。

 最初からヘルシス宰相の考えたこの案に従えば良かった。


「失敗を経験するのもいい勉強になりますよ」


 そうですね……何も言い返せません。



 何をやってもうまくいかなかったものが、順調に回り始めた。優秀な教員が集まれば、優秀な生徒が育った。ラカユ国を守りたいとする意識が目覚め、軍人を目指す者も増え、総兵力は6万人となった。ラカユ国は第一位のヘブリス王国の6万人に並んだ。


 この頃から、ヘブリス王国との国境沿いで小競り合いが起こるようになった。


 メイルソン・バミクス大将は開戦にならないよう、慎重に対処したが、ヘブリス王国は手を緩めなかった。主な理由が許可無く国境を越えたというものだ。ヘブリス王国が国境線を勝手に広げ、国境警護巡回中の兵士を拘束した。


 明らかな嫌がらせだったが、このままでは戦争になりかねない。苦渋の決断だったが、お金で解決した。兵士一人金貨200枚が12人分で、金貨2,400枚(2,400万円)と多大な出費となった。それからも同じようなことをしてきた。これまで支払った金貨は5万4千枚、それでも止まない。どんどん国境線をこちら側に寄せ、要求する金貨の枚数も著しく増えた。それでもメイルソン・バミクス大将が対策をたてていたからこの程度の被害で済んでいた。



「雪ちゃん、小町ちゃん、華ちゃん、国境沿いのヘブリス王国の兵士を300名(さら)ってくれないかな。このままではきりがないわ」



 私はヘブリス王国に金貨6万枚を請求した。



 思った通り、全く返事はない。

 拘束したヘブリス王国国境警備隊から国王の居場所を聞き出した。さらに追加で大勢のラカユ国兵士を攫う段取りのため、ヘブリス国王は国境沿いのヤカチリ村に来ていた。300人に対して新たに500人を攫えば金貨を支払うどころか、金貨4万枚の儲けになる。捕らぬ狸のために国王自ら出向いた訳だ。ラカユ国は完全に嘗められていた。



「ふぇっへへ、おつむの弱い女王は計算もできんようだの。これでまた儲けが出る。あの国を滅ぼすには派兵は必要ない。頭を使うんだよ。頭の弱い女王を主にすると国は滅ぶ。儂にとってはただのカモだ。このゲームもそろそろ詰みだな。あと一手でチェックメイトだ」



 ヤカチリ村には、『雪ちゃん』と『つばさちゃん』、『セラーヌ』を連れてきた。二人は専属護衛官だから、どんな場所であっても私と一緒にいる。『雪ちゃん』はじゃんけんに勝ったからここにいる。じゃんけんを提案したのは、『雪ちゃん』だ。元悪魔だから心理戦は得意だ。



「私はグーを出すからね」


 あ~とても嫌な先制攻撃だ。


『つばさちゃん』には通用しないが、純天使の『小町ちゃん』と『華ちゃん』はコロッと騙され、パーを出した。



 ヘブリス国王は母親と食事中だと知った。ヘブリス国王は食事を毎日2人でする。護衛もメイドもいない。食事中護衛は中には入れない。護衛たちは二人が何をしているか知っているが、絶対に言わない。命が惜しい。極秘事項だ。



 私たちの今回の服装は、黒服忍者で目だけを出している。雪ちゃんは嫌だと言って白服忍者だ。




 これは、セラーヌの提案だ。


「まさか、そのまま行くつもりですか?」


「冗談よ。みんな謎の少女に変身ですよ」


「それだけですか? 冗談はもう終わりましょうよ」


「?」


「国内ではないのですよ。ララ様と雪様と知っていても誰も言いませんが、国外ですと、さすがに不味いですよ。他国の王が理由もなく自国の王を殺したことを見られたら、即全面戦争になりますよ。準備もできていないのに、国民を戦火に遭わせる気ですか?」


「すみません。思慮不足でした」




 △△△

 涎掛(よだれか)けをしたヘブリス国王は、60歳くらいの女に食事を食べさせてもらっていたが、食事が終わると、女は(しお)れた胸を出し、


「あ~ん。ヘブちゃん。もっとお口を大きく開けないと、飲めないでちゅよ」


「びょく、他の女のはもう飲めないよ。びょくにはママのお乳がいちばんだよん」


「ぼくちゃんは甘えん坊でちゅね」


「ママ、早くお乳がほちいよ~」


「はいはい、いつまでたっても、ぼくちゃんは甘えん坊なんだから」


<チュウチュウ>


「ママおいちいよ」



 40歳を過ぎた男と母親なのであろう女が、目前で気持ち悪いことをしている。どうみても、毎日こうしているのだろう。小太りおやじが小太り婆さんの……ああ、言いたくない。……吸っている。


 お前は何歳か? 小学生でも乳離れしているぞ。私たち四人はしばらく呆然と眺めていた。食卓の側に私たちが立っているのに、いまだ止めようとしない。母親は幸せそうだ。この親子はどこかで歪んでしまったのだろう。私たちが側に立っていることすら気づいていない。


 この母親は自分の影を踏んだ者の首を容赦なく()ねるように命令した。この国王は少しでも自分に意見をする者は投獄するか処刑していた。そんな悪魔のような親子だった。目の前で二人が行っている行為からは考えもつかない。



「もういい……目が腐る」


 セラーヌはそう言うと、母親の首を落とした。


「姫様に気持ち悪いものを見せた罪を償うがいい」


 セラーヌと同時に『つばさちゃん』はヘブリス国王の脳天に向けて剣を刺した。


「気色の悪いやつらめ。ララ様の情操教育に悪いであろうが」




 執事が来たようだ。


「お食事下げてよろしいでしょうか?」



『雪ちゃん』は全員に転移魔法を掛け、女王の部屋に戻る。




 △△△

 2日後、ヘブリス国王逝去の報が流された。ヘブリスには子がいなかったため、家臣たちによる国盗り合戦が起きた。それから1週間後ヘブリス王国は3つに分裂した。ヘブリスの後継者を名乗る宰相がそのままヘブリスⅡ世となった。

 南部を中心とするキリガ・フェノル宰相秘書官の設立したバルトラ国は、彼の出身都市のバルトラをそのまま国家とした。

 近衛隊長のハルトン・ソーイック中将がクーデターで乗っ取った王都を中心に設立したハルトン王国の3つだが、その国土は小さい。


 なぜなら北に位置するケトン王国が南下しヘブリスⅡ世のヘブリス王国をかすめ取ったからだ。ケトン王国は名実ともにヘブリス王国よりも面積は大きく、兵力も7万人と大国となった。


 ケトン王国はヘブリス王国とラカユ国が国境紛争で揉めている間に、北から南下して侵攻する準備を進めていたようだった。ヘブリス国王の死を知ったケトン国王は、絶対的権力者の国王が死亡して内乱が起きていたヘブリス王国に、南下を指示した。



 これは他の4国に衝撃を与えた。他国の捕食を虎視眈々(こしたんたん)(ねら)っていたヘブリス王国が実は捕食される側だった。このままでは4国はケトン王国に捕食される。仲の悪かった将軍たちは軍事同盟を発展させ、連邦国家とした。


 それぞれの国は独立しているが、戦争が起きた場合には1つの国として行動する。大統領は毎年交代で就任するが、戦争が起こったときは、そのときの大統領が4国を代表する。


 4位 トステラ王国(面積5位 兵力4位 兵士25,000人)

 6位 ホリステット王国(面積8位 兵力6位 兵士10,000人)

 7位 ギスア王国(面積7位 兵力 7位 兵士8,000人)

 8位 アセト王国(面積6位 兵力8位 兵士6,000人)

 は、トホギア連邦として生まれ変わった、

 面積3位、兵士49,000人 


 5つの国ができた。


【統合後の各国勢力】

 1位 ケトン王国 面積1位 兵士7万人(国王 ケトン・ベイチェク)

 2位 ラカユ国 面積2位 兵士6万人(女王 鹿野ララ)

 3位 トホギア連邦 面積3位 兵士49,000人(大統領 トステラ・ビールセン)

 4位 ハルトン王国 面積5位 兵士6,000人(国王 ハルトン・ソーイック)

 5位 バルトラ国 面積6位 兵士 4,000人(国王 キリガ・フェノル)


最後まで見ていただきありがとうございました。

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