勝利
各砦を接収した後、備蓄品を放出したが、どうしても食糧が足りない。8割はグリホセの本拠地に送っているから各砦に余分はない。そのせいもあり、兵士が盗賊行為をしていた。
「質素な生活をすれば食糧はあるのに、酒、女、贅沢な食事を求めるから盗賊行為をする者が現れるのよね」
「ララ様、やつらはその考えで動いていません。盗賊行為や強姦することが好きなのです。だから質素な生活などできません。それに十分な食事があったとしても、同様の行為をしていたでしょう。そんな屑の集まりでした」
そうか。そうだった。日本でも直接な暴力は使わないが、表で優しい顔をし、金に物を言わせて裏で操っているのは、地位や名声を持っている者たちだったわ。
私たちはエドモンド領と、クロード領の倉庫から食糧や生活品を頂戴した。もともとお二人の所有物だ。何の問題もない。
王都の軍人さんを助けるついでに、王都軍の倉庫からも、食糧を十分に頂いている。これは慰謝料代わりだ。
ただし、備蓄品はなるべく使わないようにしている。急速な人口増加に食糧の備蓄が間に合いそうにないからだ。人口といっても軍人と軍人の家族がほとんどだから食糧生産性がない。
豊だった旧ウマクラス子爵領の小麦畑は荒らされ、それを開墾する者まで徴兵されている。これを元通りにするには再開発に投入する労力が全く足りない。領民は痩せ細り、急な開墾要請という命令は死人に鞭打つようなものだ。
現地調達した魚、猪、野豚を食しているが、砦の備蓄品を地元民に放出したので、新たに増えた兵士分の食糧が全く足りない。
野菜は10階層を開墾したので、交代で軍人さんの奥さんが育てている。ここは不思議と野菜には虫がつかないから農薬もいらない。主にキャベツ、大根、にんじん、タマネギ、じゃがいも、サツマイモを育てている。年に4回生育。連作障害なし。現人口であれば野菜だけは足りている。あくまでも現時点足りているだけで、将来分までは保証できる数量ではない。
9階層の果実は種類によるが、少なくとも年2回実をつけるから、エルフの生活に支障の無い数量を頂く。エルフが必要な果実は、彼らが住んでいる8階層の奥に生っている果実で十分に足りているから、9階層に採りに来ることはほぼない。
残る問題は肉だ。砦は比較的中心街にあるため森がすぐ近くになかった。
こんなときは私たちも食べている魔獣の肉に頼る。中には美味しいものもある。生で食べなければ魔族病の心配はなく美味しくいただける。よく焼くことが必須だ。ミディアムなど、もってのほかで、ベリーウエルダン一択だ。近隣に生息する魔獣には大型種はいない。大型種は食糧と考えたときはタンパク源として優秀だが、大型種の狩りはS級冒険者でも命がけなのだ。
私、楓、ユキちゃんは、例の魔獣だらけの森に転移し、牛と豚に似た魔獣を狩る。血抜きと裁断は現地で行う。残り物は他の魔獣が始末してくれる。拠点にも配るため、大量に狩る。
これらはA級に属するため、私たちにとっては、ウサギを狩る程度の労力だが、A級冒険者数人で1日に1体狩ることができるほど大変だ。なにせ、図体が大きく、牛30頭分ある。
次はブルセルツ皇国の北方に行き、遡上中の鮭を楓が雷を放ち感電死させる。私とユキちゃんはセコセコと拾う。これらはユキちゃんの作った魔道カバンに入れる。ユキちゃんがササッと作った魔道カバンは日本の家が一軒入る。特製魔道ショルダーバッグには東京ドームが入るが、ユキちゃんのこだわりがあるからそこには入れない。この鮭も大型で1匹2メートルの大きさだ。
牛豚魔獣と鮭の共通点は、どちらも他国産だということ。
一度に出しても腐るため、今晩必要なものだけを出す。おいしく炊き出しする者がいないため、文官と迷宮ダンジョンの奥様方に手伝ってもらう。料理は美味しい方がいい。その日は迷宮ダンジョンの子もこちらに来て、プチ宴会となった。
兵士は奥様方に服を剥ぎ取られ、石鹸の代わりとなる『石鹸草』で洗っている。兵士たちは乾くまで、大きな葉っぱで前後を隠している。何日も洗っていないと臭う。当然だが食事も臭いと、その臭いで廻りの者の食事は不味くなる。楓は水魔法全開で、シャワー代わりをしたから疲れたようだ。
元国境警備隊の兵士は、突然奥様方から服を脱がされるやら、子供たちが現れるやら、宴会が始まるやらで、目が点になっていた。
『姫様軍』の兵士たちは「あ~、あれ俺たちもやられたわ」と遠い目をしながら懐かしんでいる。
決戦前日、文官を除く軍人は総勢872名になった。国境地帯にウロウロしていたウラベル様を慕う脱走兵は、ほとんどが独身だった。今回、スパイは一人もいなかった。最高位でも中尉クラスまで、下士官もいるが一等兵などの一般兵が多かった。中尉2名、少尉6名、下士官18名、一般兵67名だった。
たぶん重要性な情報をもっていないから、彼等の中にスパイを潜らせることもなかったのだろう。それに貴族の反乱が続き、ミリトリア王国の雲行きも怪しくなっている。とてもスパイを送る余裕もなくなったようだ。
彼らは『ウラベル様命』がうたい文句だ。これに旧ウマクラス子爵軍の残兵が新たに加わり、兵数が膨れたことは喜ばしい。
私は、彼らの最先頭に立つようにしている。他の者からは危険すぎて馬鹿げている。と言われるが、これが私のやり方だから諦めて欲しい。
旧領都ヤーベは都市の周りを壁で囲み、その中にグリホセ・キニールの居城がある。後方には天然の要塞となるアルベスト山が聳え立つ。
私は総兵の3分の2を率いて、砦を囲む壁に一つだけある入場門の前に立つ。残りの3分の1の兵は、落とした各砦の警戒に当たっている。これでも兵士を精一杯連れてきた。
私は壁の入場門までの距離が、300メートル程度の位置に立っている。この距離だとこちらの弓は届かないが、相手の弓も届かない。この世界に和弓がなくてよかった。和弓だと飛距離はもっと長い。ただし、和弓であっても風の影響とかもあるから動く物体を300メートル離れた場所から狙い撃ちするのはほぼ無理だ。
私は合図を待っている。
やっと、楓から『アルベスト山登れ』と念話が送ってきた。
その後すぐに『普通に攻撃開始でいいよね?』と言われてしまった。
日本らしい暗号って雰囲気がいいじゃない。
私は例のポーズはしない。あれはこれから転移しますと、宣言するようなものだ。敵にも知られてしまう。もうしない宣言したら、ユキちゃんは残念そうだった。次のポーズも考えていたようだ。だが、今回は転移魔法を使わない。衆目の目に曝されてしまうと、次からやりにくい。
入場門前まで走り、初級火炎魔法と初級氷魔法を連続して放つ。そして300メートル手前に走って戻る。矢は200メートル手前で落下している。命がけだが、魔法障壁を張っている。敵から見れば、走って来て威力の無い魔法を放ち、すぐ逃げる大馬鹿に見えるはずだ。
徐々に距離を詰め、200メートル手前から同じ動作をする。疲れるがヒットエンドラン戦法だ。火と氷で鉄門を脆くして壊すという意図はない。結果はそうなるが、単に変化をつけて楽しんでいる。
何度か繰り返していると、見張り台の兵士たちが大声で笑い出した。
もう敵兵は弓矢も射ってこない。
この門扉は厚い鉄製で、できていることは調べ済みだから、この攻撃が通用しないことは分かっている。そうこうするうちに、見物する兵士が増えてきた。30分繰り返すとさすがに相手も飽きたようだ。
「お嬢ちゃん!! 一生懸命なのは認めるが、もうお母ちゃんのところに帰りな! 俺らもお嬢ちゃんを相手する時間が惜しいし、矢がもったいない」
と言われてしまった。
作戦成功だ。
100メートル手前まで詰めて、魔法結界を展開しながら攻撃したので、弓は当たらないからいいが、走るのに疲れる。もし相手が同じことをしたら滑稽だと私も笑うだろう。
そろそろかなぁ? と思ったら、楓から『アルベスト山、下りろ』と念話がきた。
作戦は成功した。
味方に合図を送る。
私は手で大きく、丸を作った。
こちらの兵士からは雄叫びが上がる。
「「「「「「「「「「ウォ――――――――」」」」」」」」」」
正面を向いた私は、門から50メートルの位置まで近づき、最大効果を出すため、詠唱を始める。魔法障壁はかけているが、矢はもう飛んでこない。兵士は面白そうにこちらを見ている。
「天と地を織りなす精霊よ、智をもって探り、慈悲をもって癒やし、和をもって見守り、仁をもって思いやり、風のごとく早く、賢明なる主の創造したる聡明なる炎の力を、ここにララ・バルセンが礼を尽くして願う、完全なる炎を生み出せ。火炎魔法最終形態 『紅蓮の火炎弾改』
狙いは門扉の強度を弱めるためではなかったが、それを何度も繰り返したので急激な寒暖は扉を脆くしていた。
それで思ったより大きな被害が出てしまった。
入場門は溶け、その周りの壁、見張り台が吹き飛ぶ。
「あの程度の入場門だったら、最初から『紅蓮の火炎弾改』一度で、吹き飛ばすことができるのよね」
楓なら、きっとそう言うだろ。
だけど、それはできない。門の反対側で楓とユキちゃんが頑張っているから。なるべく兵士をこちらに集めるため、注意を引く必要がある。
△△△
「も~ぅ! 早く来なさいよ。私の肌が焼けるでしょ!」
「日傘から出ているのは楓ちゃんだよ」
「男がブーブー文句言わないの。ヤマト! 静かにしないと敵に見つかるわよ」
「ふぇっ。声が大きいのは楓ちゃんだよ~」
楓、ユキちゃん、ヤマトは正門の反対側の壁に向かっていた。後方の500メートル先にはアルベスト山の絶壁が聳えている。出口がない裏側の見張りは、普段でも数える程しかいない。アルベスト山側から攻める者などいないことが分りきっているで、人員を割く必要がない。私たちのような転移魔法使いでなければ、アルベスト山を人が超えることなどできない。
わたしは念話を送る。お姉ちゃんが要望した暗号だ。
あれは、確か『新高山登れ』だよね。アルベスト山は急すぎて登れないよ!
10歳の楓が知っているとは驚きだが、ヤマトが教えたことは内緒だ。
「お姉ちゃんが始めたようね。こちら側にいた敵兵も、お姉ちゃんを見学に行ったわ。これから、正面にある建物から人質を救い出すよ」
楓たちは打ち合わせ通り、人質が捕えられている家屋に向かう。
すでに人質の準備はできているようだ。
これが2回目の訪問だからね。
私たちの目前には壁がある。この壁の厚さは3メートルもある。
私だってできるのよ。『紅蓮の火炎弾改』、ブートキャンプでユキちゃん直伝だからね。足が折れても、手が千切れても頑張った甲斐があった。でも、これやったら、兵士がこちらに来てしまう。せっかくお姉ちゃんが、ピエロをやっているのだから無駄にできない。
「姉貴、おねげぇしやす」
「まかせな!」
ヤマトの発した言葉にユキちゃんが応える。
三文ヤクザ映画か?
ユキちゃんが土魔法で壁を削っていくと三人が横に並べる大きさの穴が開く。
人質だった兵士の家族が穴から外に出ると、ユキちゃんが穴を塞いでいく。これはわたしには無理だ。たぶんお姉ちゃんも無理だ。穴を開けるのに1分、砂塵は魔道袋に収納している。それから塞ぐのに1分だもの。砂が舞ったとおもったら壁が塞がれている。どこに穴を開けたのかまったく分からない。仕上げに壁の表面に古色を施して境目がない。
壁から矢を放たれては困るので、絶壁のアルベスト山に向かって全員で歩く。人質は全員で約200人だった。思ったより少ない。
下士官と一般兵は人質を取られていなかった。そして略奪行為、殺害、強姦などの悪事をしていた将校の家族は人質に取られていない。彼らはグリホセに忠誠を誓っていたから好き放題していた。
人質を捕られていたのは、グリホセと距離を置いていた将校だった。人質となっていたのは子供と奥さん。グリホセは敵ながら効率よく考えている。確実なのは全員を収容することだが、それにはここは狭すぎる。人質に提供する食事も少なくて済む。悪党というのはそういうことには頭を使う。
下士官と一般兵は将校の命令に逆らえない。というか上官に逆らえないのか軍人だ。各部隊を構成する将校を押さえておけば一般兵はどうとでもなる。
それにしても、もう少し食事をいいものにして欲しかった。生かさず殺さず、毎日堅パン一つと水だけは酷いと思う。人質解放後に、痩せ細っていた家族を見た将校たちは、怒り狂っていたもの。
そりゃあ、怒るよね。
「食べて楽しんで観光をしてもらう。国王即位の観衆の『さくら』として参加だ。アルバイトだから給料も出るし、子供には小遣いも出るぞ。食事は最高級品が支給される。奥さんと子供たちもきっと喜ぶぞ」
そう話して、グリホセは将校の家族を呼び集めた。
100メート歩くと深い森が続き、その先にはアルベスト山の絶壁がある。あの絶壁を超えたら私たちの拠点がある。
ここを落城させたたら、お姉ちゃんは重大発表をするらしい。何を考えているのだろうか。何回も聞いたけど、「ひ・み・つ」らしい。
砦の壁から300メートル離れたから、もう弓矢は届かない距離だ。
ちょっと狭いけど、円形の壁を作ったので、その中で待機してもらう。出入り口は内側から鍵がかかるようにしている。中は真っ暗になるが、光石で照らしている。ユキちゃんは、きちんと空気抜きも作っているし、建物全体を魔法障壁で囲んでいる。魔道カバンから炊きたての食事と焼きたてのパン、地下水、果実を出す。迷宮ダンジョンに避難中の奥様方が、徹夜で作ったものだ。
お姉ちゃんに念話を送る。あの暗号……。これは日本語でなければいけない。
<・<アスベスト山、下りろ>・>
さあ、わたしたちも、お姉ちゃんの所に行き、暴れまくるよ!!
△△△
楓、ユキちゃん、ヤマトが戻って来たから、ヤマトを除く三人で空中からそれぞれ好き放題に適当に魔法をぶっ放す。一応私も覆面をしている。
私は久しぶりの闇魔法で黒騎士を出した。
最近は呼ぶことがなかったから、ランクアップして、手に入れた魔剣を大喜びで振り回している。
楓は得意のレーザービーム弾と火炎弾を交互に放っている。
ユキちゃんはこれまで見たことのない魔法を使った。
「天羽創世乱舞剣」
天空に数百本の白い羽が現れたが、羽軸が長く羽柄は鋭く尖っていた。それらが一斉に敵兵に降り注いだ。
さすがユキちゃんだ。なるべく殺さないようにして欲しい。とお願いしたから急所を外して刺している。
黒騎士は久しぶりの登場だからルンルンだ。
「キェッヘヘヘ、シネシネシネ――――――――。殺したら怒られるから、峰打ちだけど、シネシネシネ――――――!!」
入場門近辺に配置されている兵士を三人で片付け、残りの敵兵は姫様軍に任せる。私たちは文官たちが控えるテントで休憩した。
テントには警護兵が数名と文官が60名待機している。
戦後処理では文官が活躍する。私の側には女性秘書官3名が直立し双眼鏡で戦況を観察している。
女性秘書官は、それぞれ出身母体が違う。セレス・マグレットは国境警備隊の文官で主に税徴収を担当していた。リゼ・コークは旧ウマクラス子爵の第二秘書官、ソフィア・レイグラはウラベル様の第三秘書だった。彼女たちはユキちゃんがいるときは、絶対にお茶汲みをしない。
それをするとユキちゃんの顔が般若になる。
ただし、ユキちゃんがいないときにお茶汲みをしていないと、私を放置していたとして凍り漬けにされる。
私たちは椅子に座り、おやつを食べながら双眼鏡を覗いている。双眼鏡はユキちゃんが13万年前の人類が、使っていたものを、魔道バッグから出した。
いったい何個持っているのかな?
ユキちゃんは、魔道バッグの中は絶対に見せてくれない。
私は知っているのよ。あの中には、私に見せられない物も入っている。秘書三人がユキちゃんには絶対に逆らわないのは、ユキちゃんが鞭だけでなく、飴も用意しているからだ。
私は裏の取引のほんの一部を見てしまった。
「いいこと、ララ様には絶対内緒だからね。もし、約束を破ったら、次回から渡さないわよ」
「もちろんです。ありがとうございます。前回の分は、とてもよかったです」
「ふふっ、ララ様にはまだ早いですからね」
実物はチラリとしか見えなかったが、商品タグが見えた。
『魔道おもちゃ』
あれは、子供の使うものではない。
ヤマトはメイド服に着替え、楓の世話をしている。せめて執事服にしてあげたらと思うが、最近は本人も気に入っているようで、肩のフリルを自分で二重にしている。メイド補助から正規のメイドになりたいと常々話している。もう男としての常識を突き抜けたようだ。きっといいお嫁さんになれるだろう。
私の背後にいるユキちゃんも、双眼鏡で戦いの様子を見ている。
「時間がかかっていますね。私がサクッと全員殺してきましょうか?」
「ユキちゃん、それやめて! 戦後処理に困るから」
なるべく殺さないように魔法を加減したので、敵兵が降伏するまで時間がかかる。砦の中には一般人も暮らしている。だからチマチマ攻めているのよ。そこを理解して!
破壊された入場門から警備兵に守られながら、堂々と出ようとしている馬車があった。それを見ていた秘書のセレスが、捨て台詞のように呆れた口調で言った。
「あら~? 豚腹グリホセが出てきました。楓様と同じくらいの一般民の女の子5人を縛って、馬車に乗せて砦を出ようとしています。部下は命を懸けて戦っているのに、子供を攫って、一人だけ助かるつもりなんだ。それにしても幼児趣味が! 反吐が出る」
「この期に及んでクズ野郎ね。ユキちゃん、やつの首をひっ捕まえてくれない?」
謎の少女ユキちゃんは、グリホセの首を持ってきた。
首だけを捕まえたのね。グリホセは生かす気がないから、確かに首だけでいいけど、血が垂れてるよ。
幼女は楓が文官に預けていた。幼女たちも楓が、自分と同じ年齢の女の子だったから安心したようだ。早く親に返してあげたい。
砦の兵は、怒濤のごとく押し寄せる姫様軍の侵攻に、精一杯反撃をしていた。私が覆面を外し、グリホセの首を下げて砦の前に立つ。もう大魔法は使っていないので、城壁を攻撃したときと同じように覆面はしない。それを見た敵兵は反撃を止めた。
私の左右は楓とユキちゃんが周囲を警戒し、護衛している。当然ユキちゃんと楓は覆面をしている『謎の少女』だ。ユキちゃんはいつも白いメイド服だから、時には変えてみてはと、言ってみたが、「名前とマッチしません」とスッパリ断られた。
覆面をした楓の側にはヤマトがいるし、二人はいつも一緒におやつを食べているから、味方にはもうバレてるよね。……でも誰もそこは言わない。大人だから。
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