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ウラベル派粛正

 ヤマトの魔力測定をしたら、使える魔法が増えていた。


 以前:重力魔法 解毒魔法

 追加:神聖魔法ヒール系 念話(人のみ・時間制限あり) 水魔法(生活系) 火炎魔法(生活系) 氷魔法(生活系) 料理スキル 洗濯スキル 掃除スキル 裁縫スキルプロ級 美容スキル 



 なぜか、女子系が多い。



 楓も魔法が増えていた。


 以前:特殊転移魔法 魔法窃取(せっしゅ) 幻影魔法、回復魔法 火炎魔法、水魔法、神聖魔法、闇魔法、空間魔法、風魔法、転移魔法(転移ポイント必要)、魔道カバン製作スキル 防御魔法 

 追加:雷魔法 土魔法 氷魔法 念話(人のみ・時間制限あり) 魔方陣描画(初級) 重力魔法


 私には限界値が上がった以外変化はないが、『者』が増えていた。念話については楓をコピーしたが、私には時間制限がなかった。ヤマトの女性系スキルはコピーしない。苦手意識があるから、スキルを取得しても、やる気もないし、ユキちゃんがいるから必要ない。


 種類 複写 所属 ?者の卵? 


 ユキちゃんに魔力値がどうなっているのか、家族なのだから見せて欲しいと、3人で甘えてみた。


「見ても面白くないですよ」


 そう言いながらも、6桁魔力測定器スマートフォンタイプを、半分手で隠して見せてくれた。


【氏名 ユキ 魔力値 ###### 】


 種類(魔法属性及び所属)は見せてくれない。


 そうね。確かに面白くないわ。でも私と同じ?

 私の#が増えたことで、なんとなく分かったことがある。7桁若しくは8桁魔力測定器であれば見ることができそうな気がする。だけど、それが作れるのはユキちゃんだけだ。



 魔力値が大きくなると、たとえば、火炎魔法の火力が魔力値によって大きくなる。ただ魔力値があっても、大きな火力は魔力消費が大きく、少ない魔力であれば一発で魔力ゼロになり死に至る可能性もある。そこで身体が自然に反応し、魔力の小さい者は大きくならないように、無意識に制限をかけている。


 むしろ攻撃魔法で大事なのは、大きくするのではなく、大きくしたものを圧縮して密度を濃くすることだ。そうすると小さくても威力のあるものが撃てる。


 私たち三人は、雨の日も風の日も、ユキちゃんから極悪非道なブートキャンプという訓練を受けている。


「ララ様、その程度の圧縮率では、このようにされてしまいます」


 私の放った超絶圧縮火炎砲を一握りで煙としてしまい、肉体戦では両足が折れているのに、容赦ない。


「ララ様、休んだら駄目ですよ。その間に殺されてしまいます。ハイハイヒールを常時掛けながら戦うのです。そうすれば怪我などない万全な状態で戦えます。楓様は転移までの時間がかかりすぎます。だからこうやって、相手に捕まってしまうのです」


「楓、大丈夫? 背中から血が吹き出ているよ。ははは、ユキちゃんが速効で治したけどね」


 ヤマトは重力魔法に磨きがかかり、重力値をゼロにすることで浮くこともできた。でも、風に流されるので使いものにならない。女系スキルを身につけてから、剣や攻撃魔法などの能力が伸びなくなった。


 お嬢様系スキルを身につけたヤマトは料理・洗濯・裁縫・掃除をユキちゃんと一緒にしている。そして、こちらについては腕をどんどんあげている。今日もユキちゃんから褒められていた?


「ヤマトさぁ、いつになったらきちんと掃除ができるの? はぁ~。そんなんで楓様のいい奥さんになれると思ってんの? 甘いんだよ」


 ユキちゃん、悪魔だった頃の素が出ているよ。ほんと私と楓以外には厳しいんだから。私からみるとヤマトくんの料理は、ウラベル家のシェフより美味しいし、洋裁店よりも上手にドレスを縫えているよ。下着なんかはもう専門の女性が縫ったのではないかというぐらい、フィットしているわ。13歳の男の子が、ユキちゃんに、鞭でしごかれながらブラを縫っている姿は……微笑ましい?


 私もユキちゃんのおかげで、布きれを簡単に縫った胸当てから、ブラになったし、まるでパンツのような下着から、布地も麻のようなものから、綿と化繊のような資質のものに変った。デザインも前世の下着そのものだ。生地はゴルデス大陸では綿しか得られないため、どこか他の大陸から調達しているらしいが、詳細は教えてくれない。


「ユキちゃんによって、下着と服の文化が、一気に500年位進んだのだけど、ユキちゃんは、どうやって知ったの?」


「服飾関係は、ララ様と楓様の記憶から再現したのですが、ちょうど40万年前の人類が、そのような服装をしていましたので、その頃の知識を活用しただけです」


 私たちの服装は、昔に戻っていたの?


 ヤマトくんの生活は、魔法訓練より花嫁修業に忙しい。ユキちゃんに完全飼育されてしまった。学校から帰宅後は、すぐエプロンに着替えて、料理を作り始めている。もうユキちゃんも教えていない。


 食事の時間、ユキちゃんはメイドとして、私たちの後ろにはいない。一緒に食べている。後ろに控えているのはヤマトくんだ。


「おい、ヤマト、お前また塩の種類を間違ったな! このスープにはブルーノ産でないと、ジャガイモの味をより一層引き出さないだろうが!! それに面取りの角度が甘い。サボるな!!」


 でもね、塩の種類だけで300種類はあるのよ、それだけではなく他の調味料を入れたら2,000種類もあるのに、その味を覚えたヤマトくんはすごいと思うのだけど? それでも飽き足らず、ユキちゃんは毎日世界のどこかに出かけては、調味料を増やしている。




△△△

 そんな日常が一変した。エドモンド様の筆頭秘書『ザザ』様が血だらけで授業中の教室に来た。ここには他の生徒はいない。もう先生も他の生徒も私についていけないため、一人で自由研究をしている。


「ララ様、すぐお逃げください。エドモンド様、ウラベル様、クロード様、ピノ様が幽閉されました。私とシルス様は報告会の準備のため、遅い食事で近くの屋台にいて無事でした。ウラベル邸にはシルス様が行かれています。ここにも追っ手が迫っています。教室からすぐ出てください」


 危険を察知した私はザザ様にハイヒールをかけ教室を出ると、ヤマトくんの教室に迎えに行く。一年生の教室に行くとまだ授業中だったため、生徒会長の私は全生徒の注目の的だった。ヤマトくんを呼ぶと、何を勘違いしたか、ヒューヒューと男どもが騒ぎ出した。先生にはヤマトくんのお母さんが、危篤だからと言って連れ出した。ヤマトくんの両親はこの世界にいないが、先生も生徒会長が言うと信じるようね。


「ヤマトくん、とうとう軍がクーデターを起こして、大変なことになった。すぐ避難するよ」


「はい、僕はどこまでもララさんについて行きます」


「ララ様、どこに避難しましょうか?」


「ザザ様、『雄叫びの森』に行きましょうか」


「ララ様、あそこは一番危険です。たぶん包囲されているはずです」



 私は楓に念話を送った。


<:<今どこにいるの?>:>


<:<あ、お姉ちゃん、無事なのね。何度も連絡したのよ>:>


<:<ごめん、授業中だったから念話を遮断していたわ。でもザザ様から聞いたから。楓は今どこにいるの?>:>


<:<迷宮ダンジョン内のエルフたちのところにいるよ。それからクロードおじちゃんの奥さんたちも連れてきたよ。ただ、エドモンド様の使用人は連れてきてないよ。国王のスパイが紛れ込んでいるらしいの>:>



 私は事情がよくわからないけど、危険であることは分かった。

 ヤマトくんとザザ様を連れてエルフのいる迷宮ダンジョンに転移した。

 ユキちゃんには、楓が連絡したようで、調味料をたくさん抱えて待っていた。魔道カバンに入れる時間もなかったようだ。


「お屋敷の調味料はすべて回収させていただきました」



 ユキちゃんはこんなときも冷静だ。



 怪我をした者もいないようなので、エルフの族長にしばらくこの場所で、世話になると話すと、命の恩人の楓様の好きなように使って欲しいと、積極的にお願いされた。


 すでに楓の銅像? ミスリル像が建てられ、天使の代わりに楓が崇拝されていた。



 ここのミスリルは、鉱石の中に含有されている訳ではなく、石炭層のようにミスリルそのものがあるため、無尽蔵ではないと思うが、今のところ少々掘っても尽きそうな気配が無い。市場に出せば世界のミスリル価格が大暴落するほどの量だ。



 軍が分裂していることは、事前情報で知っていたが、こんなことになるとは思っていなかった。私たちは、まったく状況がわからないまま、その日はそのままゆっくり野宿?

 ここはダンジョンなので雨が降ることはなく、エルフが裸で過ごすほど適温なので家がなくても暮らせる。ただ、ここのエルフと違い、私たちにはプライバシーがあるので、9階層の果実と世界樹の森で寝ることにした。



 だって、未だにどこでも始めるのよ。生まれたときから、そんな状態を見て育った人たちだから、それが当然なのかもしれないけど……。私はジーニュアや真司で見慣れてはいるけど、楓はまだ乙女なのよ。


 この人たちはここでしか暮らせないが、それで幸せならば、それでいい。でもね、エルフといえど人としての節度は必要よ。今のままでは真司とジーニュアたちと同じただのエロ猿よ。



 夜が明けた。



 光石で24時間明るいから、体内時計で計ったわけではない。ユキちゃんに迷宮ダンジョンの外の状況を調べてもらった。



「迷宮ダンジョンの入口は槍を持った兵士が囲んでいて、このダンジョンは封鎖されています。ダンジョン前には、私たちの似顔絵が、張り出されており、懸賞金が付いています。

 ちなみに賞金が一番多いのはララ様ですよ。やっぱりララ様はすごいですね。楓様もなかなかでしたよ。ララ様には及びませんでしたが、それでもララ様の半額もありますよ。さすがララ様の妹君ですね。

 ヤマトはもっと、ララ様をミラ見習わないと駄目ですよ。パン1個買える賞金でしたからね」


「僕はまだまだだからそれでいいよ。で、ユキちゃんは?」


「私には懸賞金は付いていません。似顔絵のみです。人の見ている前で能力を使ったことがありませんから、その他多くのメイドたちの一人として、小さく描かれて手配されていただけです。でもあれでは見つけられないでしょう。私に全く似ておりませんでした。絵師に美的感覚が無かったようです」



 今日はヤマトとユキちゃんも、メイドたちに交ざって、朝食の手伝いをしている。大人数だから協力しないとね。調理道具はユキちゃんが、調味料と一緒に、ウラベル邸から持ち出していた。できるメイドだ。



 朝食を摂りながら、今後のことについて話し合う。

 クロード様の第一秘書で、第一夫人のシルス様と、ザザ様が進行役になって、これからのまとめと対策を提言した。ちなみにシルス様他4名の囲っていた女性は、クロード夫人となっている。


 なんでもモニカから真司と結婚できないから、クロード様に離婚してくれと手紙と離婚届が届いたそうだ。それにはマリアからの絶縁状もあり、『これからは親子と言わないで欲しい。真司様の妻となった私に、あなたのような間抜けが親であることは恥ずかしい』だそうだ。


 間抜けはマリアではなかろうか。あんな男に……。いや、もういい。彼女たちは過去の人だ。忘れよう。



 どうも国王が主体となって、動いたであろうことは推測できた。知恵袋は幻影の魔女ジーニュアだろう。だけど理由が見当たらない。確かにここ最近、貴族の反国王運動が激しくなっていた。だが、ウラベル派は彼等の争いには口を出さず静観していた。ここにいる者は異変が起きて、すぐ来た者ばかりだから、状況が分からず、考えてもいい案が出なかった。原因がわからないと対策のしようがない。


 そこで、ひとまず、ウラベル様たちの幽閉先を調べることになった。国王やその側近には私と楓は、転移魔法が使えることは知られている。楓のどこにでも転移も知られているから、それを警戒して、どこか私たちの知らない場所に幽閉しているはずだ。


最後まで見ていただきありがとうございました。

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