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クラス対抗魔法合戦

 私は、マダドギ伯爵に、スタンピードを起こした魔物を廃除したことを報告し、帰宅した。


 帰宅すると、定例報告会の最中だったので、この度の顛末を報告した。


「スタンピードの原因は、幻影の魔女ジーニュアと真司たちでした。その詳細は…………です。たぶん本人は全く気にしてないと思います。かなりの範囲を焼いたので、マダドギ伯爵には復興のため、相当の金銭と人材の派遣をお願いします」


「そうだな。軍と復興相に連絡しておこう。ところでララちゃん、その子は?」


「クロードおじ様、この子はユキちゃんです。私の新しい専属メイドで、私と楓のお友達です」


「そうなのか? こんなかわいい子が短期間でよく見つかったな?」


「はい、いい子に出会えました。これから私と楓の世話は、お仕事を含めてユキちゃんがしますから、皆様もよろしくお願いします」


「そうか。ではユキちゃんの歓迎会を報告会の後でしよう。堅苦しい報告会が続いたからな」


「クロードおじ様、ありがとうございます。では報告会のまとめだけ教えていただけますか」




「それは私からしましょう」


 クロードおじ様の敏腕第一秘書シルス様が、細部まで簡潔にわかりやすく話してくれた。すばらしいです。ブラボーです。



 ガザール国とはいつ戦争になってもおかしくない状況とのこと。


「隣国ザバンチ王国でクーデターが発生し、難民が押し寄せている。それに伴い国境地帯では小競り合いが続いている。それに一時落ちついていたが、反王国活動を休止していた貴族の動きが激しくなって、王都内の貴族も割れている。その矛先が我らウラベル派閥に向いているようだ。万が一のことも考え、ここにいる中間将校を地方に転勤させることにする。もし我々上層部に万が一のことがあったら、他の将校の中心になって欲しい」


「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」



 報告会が終わり、ウラベル様の音頭でユキちゃんの歓迎会が開催された。

 最近宴会をやってなかったものね。毎日も困るけど、真面目一辺倒だと疲れるよね。将軍たちも小さくてかわいいユキちゃんにメロメロだ。



「私幸せです。ララ様、私をクソ野郎から自由にしていただき、本当にありがとうございした」


「ユキちゃんがいい子だからよ」


「そうよ。ユキちゃんがかわいいからよ。私もお姉ちゃんがもう一人できたみたいで嬉しい」


「ユキちゃん、お酒は飲めるの?」


「底なしです」


「すごいね。でも飲み過ぎはダメよ」


「クシュン!」


「あれ! どうしたの? ユキちゃん風邪をひいた?」


「いいえ。この近くで、サタン野郎の絞りカスのような気配がしたので……」


「えっ! それは大変」


「もう、気配はなくなりました。反応が弱かったので、まだ500年早いですし、今ならばやつの目が覚めても、以前の力の半分もありません。それに私の魔力は、創造神から直接天使に反転していただきましたから、私の長い人生の中でも、最高の魔力を得ることができました。それに表面魔力だけでなく、神々が持っているターボ魔力もいただいています。いざというときは、それを使えば一時的ですが、魔力が30%増しになります。クソ野郎固有のスキルが発現していなければ、いつでも対処できます」


「だったら、今はお酒を飲んで騒いで楽しみましょうよ」


「そうですね。ブランデーでイエーイ!!」


「楓は駄目よ。私はおつきあい程度の梅酒でイエーイ!!」


「楓はオレンジジュースでイエーイ!!」




△△△

 ~クラス対抗魔法合戦~


 私は本日開催されるクラス対抗魔法合戦に出られない。


 なぜなら審査員だからです。団体戦とクラス代表個人戦があり、団体戦は三年の特進クラスが優勝し、これから個人戦が始まる。これで私の特進クラスが3年連続優勝している。


 一年生は一般クラスで平民猟師出身のヤマト・サツマが優勝した。彼はたぶん日本人ね。髪も黒いし、目も黒い。


 二年生は特進クラスでミリモリム・グダラダ子爵の三女が優勝した。

 三年生は特進クラスのズルシ・ソンナ伯爵の四男が優勝した。


 ズルシ? 誰? 私知らないわ? 影が薄かった? そうなの? 確かに影が薄い。



 今から、総合優勝を争う総当たり戦が始まる。


 ちなみに、私は一年生のときに総合優勝した。二年生からは審査員だから出ていない。昨年は風紀委員のレナ・ラウリが優勝した。このときは彼女の妊娠に気づかなかった。



 さあ、始めるわね。誰が優勝するのかな? まあ彼だよね。どう考えても圧倒的実力差だね。わざとそう見せないようにしているけど、分かってしまう。



 あら、ミリモリムがズルシに氷結魔法を放ったわ。これを軽く(かわ)し、風邪魔法を放ってスカートを(まく)った。あら残念!短パンを履いていた。作戦失敗ね。



 ヤマト・サツマは暇そうだ。二人は彼のことを無視している。決着がついたら、いつでもヤマトに勝てると踏んで、先に決着をつける作戦だ。さてさてうまくいくかな?



 ミリモリムが火炎弾を放てば、風邪魔法で散らした。彼は風魔法が得意のようね。

 ミリモリムは、さらに土魔法でズルシの足下を盛り上げ、バランスを崩す戦法だ。


 うまくいったようだ。


 ズルシは尻餅をついたが、その場所からミリモリムの下半身に向けて、ウインドカッターを放った。スカートと下の短パンがズタズタになって、ミリモリムの下半身が見えそうで、見えない状態となっている。だが動くと見えそうだ。観客の男子生徒は、彼女の下半身に釘付けになっている。


 おーと、ここで、ミリモリムが棄権を宣言した。そしてズルシの反則を訴えている。生徒会長の判定となった。



 私は迷わず、反則はないと判断した。実践であれば服や下着がボロボロになり、裸同然で戦うことなどいくらでもあるのだ。甘い! ミリモリムが私を睨んだ。だけどね、この程度のこと乗り越えないと、命はいくつあっても足らないよ。



 ズルシは威嚇(いかく)しながら、ヤマトに向かってゆっくり歩き始めた。ところが、突然土下座をした。どういうこと。いきなりの土下座――――!!


 ヤマトがズルシに近寄り何か話しているが、ズルシはヤマトの方に顔を向け、「一年坊が黙れ!」と返答していた。



 ズルシとヤマトが沈黙したまま……土下座からもう2分近く……まだ続いている。これは……危険だ。


 私は会場に割って入った。


 「勝者ヤマト・サツマ!」


 勝利宣言をした後、すぐにズルシにハイハイヒールを掛ける。もう少し遅れていたら窒息死するところだった。


「ヤマトくん!! 重力魔法を使いましたね。でもあそこまでする必要はなかったですよね!」


「はい、すみません。負けを認めてください、と言ったのですが、嫌だと言われたので続けていました。返事がなくなったので、そろそろかなぁ~と思っていましたが、失神しているとは思いませんでした。迂闊(うかつ)でした。申し訳ありません」


「あとで生徒会の研究室に来なさい。話があります」


「何か、罰ですか?」



「ふふ、それもいいかもですよ。では表彰式に移りましょうか」


 今年度の魔法合戦は、王都魔法学園始まって以来初めて、平民出身者が総合優勝した。どうも貴族にとっては黒歴史になりそうなので、表彰式の前に爵位の授与があるらしいが、ヤマトが断ったようだ。



△△△

 ~研究室にて~

「会長、遅くなってすみません。祝勝会が始まってしまい、なかなか抜け出すことができませんでした」


「いいのよ。一般クラスから総合優勝が出たなんて、王都魔法学園創設以来初めてだし、失礼だけど、貴族しか優勝したことないのに、平民のあなたが優勝してしまったのだから、大騒ぎでしょうね」


「実は困っているのです。王族関係者から騎士爵を受け取るよう執拗(しつよう)に追いかけられ、二年生と三年生からは血統状が来ているのです」


「そうね。平民が優勝すると都合が悪いのでしょうね。王族もあなたを取り込みたいのでしょう。この世界では逃げられませんし、そのままでは学園でもやりにくいでしょう。私でよければお力になれますよ」


「どうしたらいいですか?」



<<<あなた日本人でしょ>>>


<<<<よくわかりましたね>>>>


<<<私はあなたと少し違うけど、日本人の転生者です>>>


<<<<3年ぶりに日本語を聞けました。嬉しいです>>>>


<<<どうやって来たの?>>>



<<<<シドル連邦で勇者召喚があったのですが、私もついでに召喚されてしまい、1年前の遠征に同行させられました。勇者様が亡くなられたので、何の能力もない私は放り出されました。それから王都近くの森で動物を捕獲して過ごしていました。

 最近王都に来て、ここを受験したら合格しました。試験問題が簡単だったので。

 重力魔法は入学してから使えるようになったのですが、まだ加減がうまくできなくて……>>>>


<<<私の妹も日本人で転移者ですよ。うちに来ませんか? そうすれば誰も近づきませんよ。食事も美味しいですよ。それに学費が大変でしょ。妹の家庭教師と日本語での話し相手という、いいアルバイトがありまよ>>>


<<<<いいのですか? 学費と食事に苦労していたので、嬉しいです>>>>


<<<ところで、日本では何歳でしたか?>>>


<<<<はは、やっぱり分かりましたか? 高三でしたが、転移時になぜか縮んで小学生になっていました>>>>


「そろそろ生徒会のメンバーが生徒会室に集まりますので、1時間後ここに来てください。一緒に帰りましょう」


「はい、よろしくお願いします」



 ヤマトは、憧れのララ・バルセン会長と日本語で話したことで、すっかり会長のことを人として好きになってしまった。帰り道、同じ高校生だったこともあり、『謎の転校生』の話になったが、微妙に話しがかみ合わない。ストーリも少し違っているが、主演女優の話になり、愕然とした。


<<<<僕は、主演女優の〇〇〇が好きで、高三のときサイン会にも行きましたよ。その帰りにこの世界に召喚されました>>>>


 ララは?と思った。


<<<私は9歳のときにテレビでみたけど?あの〇〇〇はありえないわ。だってさすがに40歳を超えて高校生役は無理があるわ>>>


 ヤマトは昭和56年生まれ、ララは平成19年生まれだ。初めて時間軸の違いに気づいた。


 自宅というウラベル様宅に帰宅したララは妹を呼んだ。


「楓、お友達を連れてきたわよ」


<<<<初めまして。薩摩大和と言います>>>>



 ガビ――――――ン。わ、わたしのストライクゾーンぴったりのイケメンだわ。



<<<私は、鹿野楓、今はカエデ・バルセンです>>>


「僕は、森から学校に通っていたから住む場所もなくて、会長にカエデちゃんの家庭教師兼話し相手のアルバイトに雇われたのだけど、僕でいいかな?」


「い、いい、いいよ。住むとこがないなら、ここはいっぱい部屋があるから、ここに住んだら? ねえ、お姉ちゃんいいでしょ?」


「そのつもりよ。一緒に魔法も学べるといいよね」


 ユキちゃんを紹介してから、ウラベル様にも許可を頂き、ヤマトくんと一緒に住むことになった。彼の魔法特性は重力魔法だけではなく、浄化魔法も使えどんな毒も無毒化できた。

 毒を盛られた経験から、当然コピーさせていただいた。


 シドル連邦の一般魔力測定器では魔力値ゼロだったので、重要人物とされていなかったから放逐された。

 それに入学時はまだ能力に目覚めていなかったが、最新5桁魔力測定器で測ってみると2,247と表示された。


 ちなみに最新5桁魔力測定器はユキちゃんが製作した。しかも水晶球ではなく、スマホタイプだ。私が小さくできないかと、スマホをヒントに絵に描いたら、そのままスマホタイプにして、5桁まで測定できるようにした。


 ユキちゃんによれば、6桁でも、7桁でも作れるが、6桁は人間では見たことないので不要ということだった。私が言いたいのは『6桁の魔力値を持つ者がいるんかい!』 そんなのが出たら私では全く歯が立たないわ。どうしよう。私の魔力値#####(限界魔力値50,478)から伸びてないのよね。それに種類も?卵のままだ。楓も15,376から変化していない。


 ユキちゃんの魔力値を聞いたけど、教えてくれない。もじもじしている。あ~迷わず5桁魔力測定器を作ったから、きっと6桁以上だ。いや7桁の可能性大だ。ターボ魔力を使ったら8桁になる? 私に遠慮しているんだ。ごめんね。私がんばる。


 楓はヤマトくんに首ったけだ。私の耳元でコソッと(ささや)くのだもの。


「お姉ちゃんが真司くんで失敗したらといって、ヤマトくんにちょっかいを出したら、月に代わってお仕置きだからね」


 どこかで聞いた台詞だ。


「はい、はい。真司とはみせかけの婚約者だったし、私にとっては悪寒が走る相手だった。みせかけとはいえ婚約者だったから、失敗したことは確かね。ヤマトくんとは時代感が合わなかったから好きになることはないわ。それに私は真面目な人より顔は並でいいから、面白い人に()かれるみたいなのよね。真司のように顔が良くても不誠実な人はありえない」


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