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合従軍①

「サラ様、合従軍はダグラス神聖ヨウム国を、現在グラン大公国を進行中です。

 このままでは数日中にゲルス騎士国を抜け、小さなザバンチ王国はすぐに越えられますから、まもなく我国に到達します。周辺国は合従軍が市街を通らず、目立たない森を抜けていることと、遠征先が我国だと知り、静観しています。


 合従軍はその数15万人です。我国は幻影の魔女がいるため徴兵制度を採用していませんから、予備役の者を集めても5万人しかいません。敵は3倍の軍勢です。異世界人一人で2千人の軍隊に相当するのに、勇者までいるため、我軍は不利な戦いを負うものと思われます。


 強制徴兵すれば、我が国の人口から考えても、一月(ひとつき)あれば70万人を集めることもできますが、なにせ訓練する時間がありません。いくら烏合の衆が集まっても役に立ちません。至急作戦会議にて指示してくださいませ」


「ボーン・ワシント大佐、心配するな。確かに異世界人は脅威だ。よく知っている。その能力は途方もない。だが、我国には『幻影の魔女』とその仲間がいる」



「サラ様、それ、誰ですか?」


「ひ・み・つ」


「秘密ですか?」


「秘密だ。今から報告に行く。あ、そうそう、夕食はいらないから、私の分はお前にやる。お前好きだよな? 豚の丸焼き。お前そっくりだものな。いくら伝令将校といっても、もう少し()せた方がいいぞ。もし来月まで10キロ減量できなかったら、大佐から中佐に降格するからな。ミリアム・ヘウト上等兵、よく見張っておけ」



「え――――――――今更無理ですよ。だって、最近はずっとサラ様が、夕食を私に食わせるからですよ。残したら降格、痩せないと降格、もうどうすればいいのですか――――――。なぁ、私の見張り役のミリアム・ヘウト上等兵、今日は全部食べたことにしてくれないか?」


「駄目です。私はサラ様の気まぐれで、執拗(しつよう)なペシペシが怖いです」




△△△

「サラで~す。今晩わ~。今日は特別な報告があって来ました!」


「サラ様、いつものメンバーは揃っていますよ。今日はサラ様の好きな(さば)の塩焼きです。サラ様が昨日、白ブドウのワインも欲しいなぁ~。とボソッと仰っていたので、30年ものをお母様が取り寄せています。サラ様はお母様に愛されていますね」


「そう。そうね。たぶん……自分が飲みたかっただけでは……」



「今日は、私サラが、ブルセルツ皇国・シドル連邦合従軍の動向を説明します」




「…………作戦検討中………」




「それでは、そのようにいたしましょう。王都軍は王城の護衛に特化します。合従軍との直接の対決は地方軍に任せ、その総指揮はウラベル従姉(ねえ)さんが行うということですね。あとは打ち合わせ通りということで、では、このまま宴会に入りたいと思います」


「いえ~い。サラももっと飲め。作戦はバッチリだ。きっと成功する。いや成功しないとミリトリア王国は滅亡する」


「クロードはいつも脳天気でいいですね。30年物をそんなにガブガブ飲むのは止めてください。珍しくお母様が私のために買ったのですからね。あーもうあと一杯分しかないわ」


「儂も1週間後は最前線だ。お前より早く死ぬかもしれん。儂らが負ければ、王都はサラたちが頑張っても守れないだろうが。それでもあの暢気(のんき)なママ好きの国王の命を数日は伸ばせるだろう」




 ◇◇◇合従軍◇◇◇

「おい! 軍務大臣! ブルセルツ皇国の教皇は、何をイチャイチャしているのだ。それも若い男と。あの豚女は(いん)乱か? あんなやつと組んで大丈夫か?」


「はっ! ですがブルセルツ皇国の軍隊は、洗練されておりますから問題ありません」


 俺は失敗したような気がする? 待て待て、ひとまず、ミリトリア王国を落としたら、もらえるものはすべて頂戴(ちょうだい)し、それから西側を頂いたら、東一帯となったブルセルツ皇国を攻め落とし、七大帝国を滅ぼせば、残りは小さな国々だから、ゴルデス大陸統一も夢ではない。


 ゴルデス大陸全土に、新しい裁判の仕組みを導入するのが私の使命だ。この世界の者は頭が悪い、だから法律は簡単でなければならない。そのためにはバカでも理解できる法律にしなければならない。


 それに外国人が問題を起こしても、日本のときのように検察が不起訴にしたら、裁判官の出番はなくなる。私はあんな理不尽は許さない。それにボンクラ裁判官が、どこの国の出身者だと疑いたくなるような判決を出している。それもこれも裁判官の心証に頼るからだ。


 昨日まで外国人だった者が帰化し、日本人となった途端に、検察官や裁判官、はたまた国会議員や地方議員になれるなんてありえない。国籍条項は少なくとも三代前まで、日本人でなければならない。俺はそう考える。


 下級裁判所は最高裁の判例に拘束され、新しい判決ができない。判例は法律ではないぞ。裁判員裁判で死刑を出しても、高裁でひっくり返したら、何のために裁判員裁判をしているのか意味がわからない。裁判官よりもよほど一般人のほうに常識がある。


 だから私がゴルデス大陸を統一しなければならない。簡単な法律、それがすべてだ。『国家反逆罪は当然即日死刑。人を殺したら正当防衛でない限り死刑。不正蓄財は金額によるが基本死刑。未成年に対する淫行罪は、顔に罪状を入れ墨のうえ生涯鉱山奴隷。盗賊は生涯極寒地での鉱山奴隷、詐欺は釈放のない無期懲役のうえ鉱山奴隷、暴行は釈放のない無期懲役のうえ、成人に対する淫行罪は釈放のない無期懲役、賄賂を渡した者も受け取った者も生涯懲役、強迫は生涯懲役、不法入国及び偽装難民は生涯強制労働、それ以外は無作為で選んだ一審制の裁判員たちの常識で判断し、多数決により懲役1年から懲役20年を決定する。これでも多いくらいだ。わかりやすさ、シンプルイズベスト。シドル連邦はおかげで平和だ。あ~私の裁判官生活は、このためにあったのだ。



 むむ、待てよ、これだけあるとシンプルではないぞ。多すぎる。殺人、盗賊、詐欺、未成年に対する淫行は全部死刑。不法入国、偽装難民、暴行は鉱山奴隷。それ以外は当初のとおりでいい。


 これでスッキリした。


 ああ、ちょっと考えている間に、目線が教皇の方を向いていた。よく見るとグロイ女だ。



「ねえヤコブ、私、あのおっさん嫌だわ。私を見ては色目を使ってくるのよ。合従軍だから一緒に戦うのは分かるのだけど、せめてあの勇者とかいうおっさんとは、別々にしてくれない? いいえ、絶対に嫌だから別にしてちょうだい」


「カルロッタ・ベックス教皇様、相手は勇者です。どうかご辛抱(しんぼう)ください」


「嫌よ! どうしてもというなら、もういいわ。私、筆頭司祭になりたい他の子を捜してくる。きっと私のことを気に入ってくれるはずよ」


「えっ、え――――――――それは駄目ですよ。カルロッタ教皇様の美しさが分かるのは私だけですよ。わかりました。ザバンチ王国に入りましたら、最高指導者様に連絡して、我軍とシドル連邦を二手に分け、王都を攻めましょう。その方が効率いいかもですね。さすがカルロッタ様です」


「ほほほほ、私の言うことはいつも正しいのですよ。私にわざと意見したように見せたのでしょうけど、お見通しですよ。あなたが私に意見などするわけがないのですもの」


「もちろんですよ。私の愛は、カルロッタ様の仰せの通りに従うことです」


「知っているわ。あなたは真実しか言わないものね」



 この女、危ね~。もう少しで首が飛ぶところだったぜ。もう逆らうのはやめだ。違う方法でいこう。王都はシドル連邦に攻撃させて、ミリトリア王国が降伏したら周辺国を滅ぼし……。


 はぁ~ほんと、危なかった~。シスターたちとやりまくっているのは、バレないようにしないと……だって、年増だし、満足するまで容赦ないし、ブヨブヨだし……俺だって息抜きしたい。


最後まで見ていただきありがとうございました。

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