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文化祭

 壇上に上がった会長が魔道拡声器を片手に話し始めた。


「今日は天気に恵まれました。ご父兄の皆様もお子様の日頃の成果をご見学ください。今年は私の全面的な監修により、特に屋台が充実しています。美味しいものが沢山ありますから、最後まで楽しんでください。それではこれより王都魔法学園文化祭を開催します」


 会長の挨拶(あいさつ)が終わると同時に魔法花火が上がり、文化祭が始まった。


 たこ焼きと綿あめは絶好評だった。というか、午前中で(たこ)がなくなった。午後からは、肉入り、野菜入り、魚入りというありえない組み合わせだったが、それでも初めての味なのか、作れば売れるで、もう腕が上がらないほどヘロヘロになった。


 真司が夜通しで作ったことになっている特製タレがきいたみたいだ。本当は真司が夜食にたこ焼きを焼いて、私の作った特製タレを勝手に使って食べたから、徹夜で作らせたのだけど、とても不味くて食べられたものではなかった。


 結局私とメイドが総出で、朝食もとらず、特製タレを作って間に合わせた。真司は(ろく)なことをしない。それでもお母様は、真司が徹夜で作ったと言ったものだから……そういうことになった。


 たこ焼きは、文化祭2日目も売れまくり、蛸は余るほど準備したが、それでも前日買えなかった生徒が朝一で並び、開始1時間で蛸がなくなった。急(きょ)、私と楓は隠れてシドル連邦の海まで行き、漁師から今朝採れた蛸を買い付けてきた。だというのに15時には蛸がなくなった。会長は終始お金ざくざくでニコニコしていたわ。


 利益の半分を打ち上げに使うらしい。


 普通は売上から経費を控除したものが利益だけど、今回は、売上=利益、だよね。だって道具と材料は全部我家で提供しているのだから。小さいことは言わないけど……。かなりの金額になるけど、残金は会長お得意のネコババ?



 さすがに3日目になると、たこ焼きに飽きると思ったのだけど、またもシドル連邦の漁師から、直接蛸を買うことになったわ。どんだけ好きなのよ。それに女生徒の動向が一カ所に集中している。よく観察すると、たこ焼きの出店は3つも出しているのに、真司のまわりだけ女生徒が群がっているのよね。あの顔はこの世界では超イケメンらしい。


 シドル連邦とミリトリア王国とは、一触即発の関係なのだけど……私はシドル連邦の漁師とは、顔なじみになった。私としては仲良くしたのだけど……。

 ミリトリア王国は一部海にも接しているが、ここは内地だから新鮮な海産物がない。だけど、ミリトリア王国の海には行かない。


 貴族の中には、私たちの顔を知っている者もいる。転移魔法が知られるかも知れない。シドル連邦には、私と楓のことなど知られていないからいいけど、敵国から買っているのは少し複雑な気分だ。




「会長、おひさしぶりです」


「あら~。モモンガくん、国に帰ったのでは?」


「一度帰国したのですが、また学びたくて来ました。ただ、再入学が断られました。だから今日は文化祭ということで、会長に会いにきました」


「そう、それは、嬉しいわ。でもどうして再入学を断るのかなぁ? モモンガくんは成績も優秀だったし……」


「そうですよね。ほんと、この国は僕の優秀さが分からないようです」


「そ、そう?」


「そうですよ。だから、お土産(みやげ)を沢山置いてきました」




 ド――――――ン。ドカ――――ン。ド――――――ン。


 ドガガガガ――――――――――ン。




「どうしたの?」




「ふっえっへへへへ、王都の町並みは警戒が厳しくて、どうにもならなかった。だから生徒会室と実験棟を爆破させていただきました。僕がブルセルツ皇国のスパイだと、バレちゃいまして、逃げていたのですよ。


 重要施設の爆破が目的だったのですが、毎年文化祭があることを思い出してやってきました。

 魔法学園は重要施設ではありませんが、有名ですからね。一応、本国に帰る前に爪痕を残さないと、出世できませんから。


 それにこうして正体を現さないと、僕が今回のミッションをやったことが証明できないでしょ。僕が犯人だと大々的に発表してもらわないとね。


 では、もう会うことはないでしょうが、また会長に出会える日を楽しみにしています。そのときミリトリア王国は、ブルセルツ皇国から攻められて、会長は死体になっているかもしれませんけどね。もし会長が生きていたら、あなたも私の(しもべ)にしてあげますよ」




 モモンガは、ゆっくり、下がると、混乱している校庭から姿を消した。



「真司、また(うず)いてきた。して欲しい」


「また? さっきしたばかりだ。ノルマの5回は済んだぞ」


「ダメ。もう5回では、この疼きが止められない」


「しょうがないなぁ。まあ、俺はかまわなが……」


「そこの、校庭裏の木陰で早くして。これ以上押さえられない」


「はい、はい」


(ああ、まずい。魔族化が急速に進んでいる。『疼き』とごまかしているが、この突き上げる悪魔の誘惑に心が奪われそうだ。このままだと、魔族になってしまう。もう妊娠して子供に魔族素を流すしか手は残されていない)



△△△

 ~数分後~



「あ! 会長、この人、魔道爆弾を仕掛けていたので、泳がしていたのですが、捕獲しました。この人誰ですか?」


「ララさん、その子は……、そうね、誰でもないわ。ブルセルツ皇国のスパイです。警備隊に渡してください。ところで被害はどの程度ですか?」



「ありませんよ」


「でも、すごい音がしましたよ」


「あれは、お母様が結界の中で爆破させました」


「さすが、幻影の魔女ですね。参りましたわ」


「そうでもないですよ。打ち上げの宴会を楽しみにしています。では、この人を警備隊に預けてきますね」


 本当は私がやったのだけど、私のことは知られたくないから、全部みんなが納得する幻影の魔女がしたことにしている。だって幻影の魔女は、校舎裏の木陰で真司と真っ最中だから、そんな暇はないようだ。


 最近、私は発見したことがある。最近はメイドが片付けているから、散乱したお母様の下着を見ることはなくなったが、メイドたちが面白い話をしていた。これまでは真司が求めない限り、下着は5枚だったらしい。6枚目はないようだ。どうも真司の1日のノルマは5回のようだった。それさえ済めば、その後に真司が誰と、どのようなことをしようが、お母様は興味なかったようで、まるで真司には全く興味がないようなそぶりだったのに、私と同じ年齢にし始めてから6枚で固定されているらしい。


 私は、これまで若年齢化したことで、欲望が抑えられずに、そういう行為をしていると思っていた。確信はないが25歳から20歳、それから13歳と変る度に、枚数が増えていた。それを考えると、異世界人真司の体液がないと、なんらかの弊害があるのかもしれない?





 学園長がたこ焼きを必死で焼いている会長の側に来て、話しかけた。


「あなたも変ったわね。ハチマキして汗いっぱいで、たこ焼きを焼くなんてね~」



「私は、無知でした。化け物の集会という宴会を知りましたから」


「そうね。確かに。それでね、モモンガくんは、随分前からスパイだと分かっていたのだけど……なかなか尻尾を出さなくて……泳がしていたのよね。ごめんね。ブルセルツ皇国との関係は複雑だからね。でも、あなたも、毎日食事に来るのはどうかと思うよ」



「だったら学園長もいくら親族とはいえ、毎日あの家で食事をするのはどうかと思いますよ」


「私はサラお母様の秘書も兼任しているからいいのです」


「あら、だったら、私も父が浮気しないか監視ですよ」


「監視しなくても、もう幻影の魔女に懸想しているから、監視は無駄でしょ。そうですね。もう諦めました。でも、食事は美味しいですし、真司さんもいますし……」




「駄目よ。真司さんは一応ララさんの婚約者よ」


「まだ、結婚したわけではありません。それに第二夫人という手もあります」


「そうね、それならいいかもね。だったら私も第三夫人に立候補しようかしら?」


「ちょっと年齢差がある……と思いますけど……」


「大丈夫よ、愛に歳の差はないわ」



「まあ、私の邪魔はしないでくださいね」


 結局、その日のうちに会長と学園長は既成事実で迫って、真司と婚約した。




 ~数週間後~

「リリア学園長いいですか?」


「ララさん、何ですか?」



「私はまだ13歳だから未成年です。成人まであと3年あります。ミリトリア王国では、一夫多妻はあたりまえなので理解しています。


 それでもリリア学園長は32歳なので、年齢を考えたら、最後のチャンスとして、結婚ができるかもしれないから、体で真司に迫るのはわかりますが、私は未成年ですよ。激しい声が聞こえていますよ。分かっていますよね。


 学園長の後ろに隠れている会長もいいですか? 猿のように迫るのをやめていただけませんか。真司は確かに猿なので、何人でもOKみたいですが、私はよくても楓はまだ8歳ですからね。


 会長は我慢できないのでしょうが、学園長と同じで声が大きすぎます。女の私ですら恥ずかしいです。会長まで猿とは思いませんでしたよ」




「あら、猿とは、最高の()め言葉ですわ。でも、ごめんね。私、懐妊しましたのよ」


「あらあら、あなたも? 実は私も懐妊したのよ」




「ああ、そういえば真司は昔から猿だったわ。私の認識が甘かった。猿は猿でもエロ猿だわ。世の中には節度というものがあるのよ」




△△△

 モモンガは現ブルセルツ皇国の内情を自慢するように、ペラペラ喋った。もう大陸を支配したと勘違いしている。自分を逃がしてくれたら、私を愛玩奴隷にしてくれるらしい。



 異世界人ジョゼフは、火炎魔法と重力魔法に磨きが掛かり、ブルセルツ皇国親衛隊長をしているらしい。いわゆる破壊魔で、人殺しが好きなようだ。前世界では傭兵をしていた。まさに戦う殺人鬼だ。シドル連邦の兵がブルセルツ皇国に集結していて、早ければ今年中に、一番目障りなミリトリア王国に、一斉攻撃を仕掛けるようだ。



 私はジョゼフ対策として、重力魔法を極限まで高める必要も出てきた。



 シドル連邦の最高指導者は山田五郎という。シドル連邦の勇者でもある。推定年齢50歳の日本人だった。前世界では裁判官だったらしい。それが今ではただの人殺しだからね。


 準備ができ次第ミリトリア王国には、ブルセルツ皇国・シドル連邦合従軍で侵略すること。捕虜は設けず、すべて殺害すること。女子供は奴隷として、好きにしていいこと。略奪し放題、ミリトリア王国の国民は、どのような理由で殺そうと、軍法会議の対象にならないこと。誰であろうと殺した人数の数で昇進すること。



 とても、元とはいえ日本人の考えとは思えない。



 きっと今日も報告会という宴会が始まるのだろうな。

 でもね、私も、楓も、真剣にこの国のために話し合っているのに、猿どもは……。



「あ、悪い、結果だけを教えてくれる?」


「あ、ごめん。私、胎教をしなければならないから、報告会に出られないわ。結果だけ教えて。どのみちこの身体だと、戦争に参加しても邪魔になるから」



「あ、ごめん。私……また、疼いて……」



 もういい。猿たちは無視してみんなで話し合う。



「ねえ、お姉ちゃん、『疼くって……何?』」


「そうね、楓と私には必要ないわ。人間から猿に落ちた人たちがかかる病気よ」


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