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異世界人召喚再び②

 ブルセルツ皇国では、異世界人真司に逃げられたため、カルロッタ・ベックス教皇により司祭の粛清が行われた。筆頭司祭はグレゼからすでに数えて5人目のヤコブとなっている。


 ヤコブは上の司祭が、次々と消えたので三段跳びで筆頭司祭となった。しかし当人のヤコブは焦っていた。グレゼは異世界人召喚を成功したが、言葉の壁を克服することができず、教皇に処刑されている。その後筆頭司祭になった者たちも、異世界人とコミュニケーションがとれずに投獄された。


 筆頭司祭グレゼは異世界人に逃げられてしまった。当然本人は処刑され、親族も鉱山奴隷にされた。ヤコブは25歳だ。これまでの筆頭司祭は皆50歳以上だったから異例の若さだ。


 カルロッタ教皇は58歳になり教皇として、絶対の権力を持っていた。筆頭司祭はどいつもこいつもカルロッタに、嘘の報告をしていた。カルロッタは、自分に本当のことを言ってくれる者の出現を待っていた。


 ヤコブはカルロッタが筆頭司祭に指名した。そのいきさつは、感謝祭だった。


 カルロッタが開国祭の閉会に際して、神の言葉を、代弁していたとき、『コトッ』と音がした。並んでいた司祭たちの顔は青くなった。彼らの目は一斉にヤコブに向いた。


 彼らは思った。ああ、あいつは死刑だな。カルロッタはヤコブの方をジロッと(にら)んだ。そして側近の司祭に、後でヤコブを連れてくるように告げた。




 謁見の間で、各国の要人と接見したカルロッタは、げんなりしていた。


「どいつもこいつも、嘘ばかり言いやがって!!」


 疲れがピークに達したカルロッタは、教皇の間で休憩をすることにした。


 部屋に入ると、若い司祭がオドオドして、頭を下げていた。



「私の部屋に勝手に入っている、この男は誰だ?」




 ヤコブの隣にいるロナ司祭長が、おどおどしながら話し始めた。


「先ほど教皇様が、感謝祭で連れてくるよう命令されたヤコブ司祭です。では私はこれにて失礼します」


「ロナ様置いていかないでください」


「この部屋には、教皇様が呼び出した者しか、長居することができない。グレゼ筆頭司祭ですら一人で受けていた。君もどんな指示があっても従うように。誰も助けに来ない。ここに護衛官はいないが、君を守る者もいない。君一人だ。あとは神に祈りなさい」



 ロナ司祭長が部屋を出ると、カルロッタは教皇服を脱ぎ始め、暑い暑いといいながら下着姿になった。毎日のように、すきなだけ肉を頬張っている体は、ブヨブヨ太っていた。ソファーに腰掛けたカルロッタは、ヤコブを睨み、言った。



「お前はなぜここにいるのだ?」



 えっ!!この人は……もしかしたら……適当に言っているだけで……何も覚えてない?


 ヤコブは何も考えていなかった。目前には下着姿の、ブクブク太った女がいる。ヤコブにとって、こんなシュチエーションは2度目だ。




 ……そう、あれはまだヤコブが学生だったころ……放課後、担任の教師に教室で待っているように言われた。


 担任の教師は50歳を少し超えた女性だった。彼女は突然服を脱ぎだした。そして下着姿の彼女はヤコブに『私綺麗?』と……。


 この女は何を言っている? 綺麗なわけがないだろ? 昔は綺麗だったかもしれないが、今は厚化粧で体はブヨブヨだぞ。


 きもい、俺に覆い被さるな――――。いやだ――――――。心で叫んでも、逆らえなかった。逆らったら、落第点をつけるというのだ。俺はこの教師がいつも色目を使ってくるから、下を向いて授業を聞いていなかった。だから、及第点を取れなかった。本当はこれから追試が行われるはずだった。


「先生何をするんですか!!」


 そう思っても女性の肌に触れたことも初めてのヤコブは声が出せなかった。


「追試だから、私に任せればいいのよ。あなたは何もしなくていい。合格点欲しいでしょ?」


「はい。でも試験を始めてください」


「これが試験よ。私の言うことを聞けば、これからあなたの点に下駄を履かせて、追試をしないこともできるのよ。だから私に任せなさい」


「先生、それはだめです。それを掴むのは……あ~何をするんですか!」


「ふふっ、かわいい」


 嫌がっても若い体は無情にも反応してしまった。


 ……すべてが終わった。


 それから三度続けて果てるまで搾り取られた。


「どう、よかったでしょ。私はもう子供ができる年齢ではないから、妊娠を気にしなくていいでしょ。あなたは私とやり放題よ。よかったわね」


 満足した教師は服を着ながらヤコブを見つめ、微笑みながら言った。



「ヤコブくんは私のことが好きだったのね。私もあなたが好きよ。若い体はいいわ。これから毎日ここで会ってあげる。明日も放課後待っていてね」


 そう言ったのに、服を着たまま、もう一度俺にまたいで、そのまま、開始されてしまった。俺は嫌がっているのに、体は無情にもまた反応してしまった。

 それが終わったのに、更にもう一度搾り取られてしまった。


 この女は何度満足しても、更に満足するまで止めてくれない。こんな女から毎日搾り取られるのはごめんだ。逆らうこともできない。末端貴族とはいえ、落第したら父に責められる。この女から逃げ、父にも責められない方法は一つしかない。


 その日逃げるようにヤコブは教会に入った。教師の家は上級貴族だった。誰にも相談できず、ヤコブは悪魔のような教師から離れるには教会が一番だと思った。





「あなた!!  何ボーとしているの?」



 ヤコブは我に返った。



「はい、カルロッタ様があまりにも美しく、失礼ですが、私の好みの女性そのものだったので、見とれて、あのときは感謝祭だということを忘れるほど感激してしまい、魔法杖を落としてしまいました。でも、近くで見るカルロッタ様は遠くで見るのと違い、天使のように美しい人で、今も見とれてしまって動けず、ボーとしてしまいました」


 ヤコブが動けないのは本当だったが、処刑されるかもしれない恐怖で動けなかった。


 カルロッタはしばらく固まった。初めて自分に対して、本当のことを言う者に出会えたと直感した。



「そうなの。あなたは他の司祭と違って、事実を言うのね。気に入ったわ。次の筆頭司祭はあなたにするね。何段飛びになるのかしら? すごい出世よ」


 そう言うとカルロッタは下着を脱ぎ、ヤコブに覆い被さった。そして、それを掴んでからは……。


 ヤコブはもう諦めた。でも今度は絶対になれない、と思っていた筆頭司祭になれる。ヤコブは自分から進んで、毎日のように、教皇の間を訪問するようになった。教皇は何度もヤコブに乗ったが、教師のときと違い、野望に目覚めたヤコブは、自分から受入れた。何度求められようとも、嫌がらずに教皇が満足するまで尽くした。


 教皇の間は、この日から『密会の間』となった。



 ヤコブは筆頭司祭になったが、教皇から異世界人召喚を急ぐように言われていた。だが召喚のための魔道具が、すべて魔力を失ってしまったため、次の魔道具製作には、時間がかかってしまう。今はかわいがられているが、いつ飽きられるかもしれない。彼はいつもビクビクしていた。



「魔道具を他国の商人から購入していたが、一つも入らなくなった。自主製作するしかない。それでは時間がかかる。もう手詰まりだ。ああ、俺はどうしたらいいのだ」


 そんなときシドル連邦から、異世界人召喚に、必要な魔道具を無償で、渡すので軍事同盟を交わさないかと提案があった。


 ヤコブ一人では判断ができず、教皇の機嫌の一番いいとき、つまり三度目のあれを終わって満足しているときに、話してみた。


「シドル連邦から、異世界人召喚の魔道具ついて、条件付ですが、軍事同盟と引換えに無償で譲渡してくれると言っていますが、どうしましょうか?」


「そう。今は気怠いから……あなたの好きなようにしなさい。幻影の魔女から、三種の神器の奪還も、もう異世界人召喚もしなくてもいいわよ。私はあなたがいれば何もいらないわ。でも、あなたが世界の王になりたいのなら、それでもいいわ」


 このことがあってヤコブの焦りは消えた。あとは何をしても許される。いや、いつかは俺が世界の王になってもいい。いやなれる。この女を俺の肥やしにしてやる。




「ふふふ、ふふふ」


「あら、楽しそうね。そんなに私がいいの?」


「ああ、カルロッタより顔も心も美しい人はいない。君が一番だ」


「嬉しい」




 シドル連邦の、異世界人召喚のための魔道具は、ブルセルツ皇国のものより優れていた。今回は一度に2名召喚された。一人は西洋人で一人は日本人だった。西洋人はヤコブの話す言葉が理解できたようで、ヤコブと握手をし、『OK』 と言っている。


 日本人は小さな少女だった。召喚されてから一言も話さず、泣き始め、いまだに泣いている。


 ヤコブは呆れて、投獄するよう命令した。翌日も泣き止まず、どうすることもできなかった。ヤコブは看守に、食事を出さないよう指示した。食事を出なければ泣き止み、ヤコブの話を聞くと思ったからだ。



 食事を抜いて2日目の夜、その日は少女に体力をつけてやるため、肉の丸焼き出してやり、ヤコブがそろそろ諦めただろうと、牢屋を訪ねたが、少女の姿はなかった。しかも鍵は掛かったままだった。


 幸い教皇は二人召喚出来たことを知らない。ヤコブは異世界に戻ったのだと判断した。逃げた様子もないし、意思疎通のできる異世界人を、一人は確保できている。それが誰も不幸にならない結論だ。




 △△△

『楓』は一人で墓参りに来ていた。姉が亡くなったその日に、両親も交通事故で亡くなった。


 ドライブレコーダーは、トラックと衝突したときに、車内に父と母が同乗していたのを映していたが、破損した車の中には、父の死体しかなかった。ペシャンコになった車輌の状況と母の血液も付着していたため、死亡は確実だと判断され、母の死体がないまま葬式をした。


 児童養護施設に入所することになった『楓』は環境に馴染めず、毎日墓を訪れては泣いていた。


 ……そして突然異世界召喚された。



 周囲には喜色満面で、気持ち悪い格好をした男たちが、訳のわからないことを話している。


 言葉は理解できたが、話している意味がわからない。『楓』は牢屋に投獄された。食事を出されても喉を通らない。それにこんな狼一匹丸焼きなんて、へんなものいらない。もう死んでもいい。


<<<お姉ちゃん! お父さん!なんでいなくなったの!!楓一人になっちゃったよ!!>>>




 △△△

 ララは第3回報告会でクタクタだった。結局いつものように宴会になった。明日は半魔の調査なのに……みんなはお酒を飲んで騒いでいる。私は明日のために早く寝よう。



「どうも果実水を飲み過ぎたみたいね。近いわ。これで夜中に起きるのは3度目よ。年取った人の気持ちが分かったわ。中途半端に起きるから眠いのに、寝られない」



 ララは3度目のトイレのために起きたが、布団に誰かいる。もしかして真司が潜り込んだの? だったら殺してもいいよね。でも最近は母さんの布団に、潜り込んでいるから違うわね。



 だけど、この臭いは酒ではないわ。臭い。異臭がする。



 布団を捲ると、薄暗い部屋に普段着の小さい少女がいた。この服には覚えがある。私とお揃いで買ったものにそっくりだ。



 灯りを点けると、そこにはララがよく知っている者がいた。




<<<えっ? 楓、どうして?>>>


<<<誰?>>>


<<<私よ。あなたのお姉ちゃんの鹿野詩よ>>>


<<<お姉ちゃん?>>>


<<<でも? この人はお姉ちゃんとは、見た目がまったく違うし、年齢も違う? だけど私の名前を知っている。お姉ちゃん?>>>


<<<姿が違う理由は、また話すけど、私は鹿野詩よ。楓のお姉ちゃんの詩よ。その洋服は銀座四越であんたが寝そべって、どうしても欲しいとワガママ言ったから、結局私の貯金を全部はたいてお揃いで買ったよね>>>


<<<やっぱりおねえちゃんなの? お姉ちゃん!!!!!>>>


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