この先にあるもの……
ラカユ帝国では出産ラッシュが続いている。ヘルシス宰相は男の子、リデア・ポミアン上級元帥は女の子、ピノ・バルセン上級元帥も女の子、メルトミ・ルドリフ上級元帥は男の子、セレス・マグレット女王専属第一秘書官は男の子、ソフィア・レイグラ女王専属第二秘書官は女の子、リゼ・コーク女王専属第三秘書官は妊娠中、アレナ・ストビア女王専属第四秘書官も妊娠中、ローザン・メナード女王専属第五秘書官も妊娠中という具合でめでたいのだが、ブルセルツ皇国教皇バレンシス・ラプチェトが私の子を産んだ。女の子だ。
ザンバ・イエルミンもアンナ、ミンチ、フェリス、セシリアと4人の奥さんが同時に2人目を懐妊した。なんでも、少将に昇格したので張り切ったらしい。それで私に会いに来た。
「女王様、失礼だとは思いましたが、あのときの約束を果たしていただきたく、ララ・ステンマに会わせて欲しいのです。女王特殊部隊で特殊暗号解読業務をしているということでしたが、会わせていただけますか?」
「そうね。約束だったものね。あのときは半分冗談だったのだけど、よくここまでのし上がってきました。会わせてあげます。だけど、絶対に他言してはなりませんよ」
「もちろんです。それに私には呪術が掛けてあるから、女王様の命令したことに逆らうことはできません」
「ララ・ステンマはもう来てますよ」
「えっ? どこにいますか?」
「あなたの前にいるでしょ?」
「女王様、ご冗談がきついですよ。『わたし、じつは、おんなで、らら・すてんま、なのよ』と言いたいのですか?」
「まあ、流石、短期間で少将まで上り詰めただけあるわね。よく分かったわね」
「もういいです。早く、本人に会わせてください」
「だから、わ・た・し、が、ララ・ステンマよ」
「まさか?」
「あなたがあのとき雄叫びの森へ行けと言ったから、今の私があるのよ。あなたには感謝しているわ」
「それは、私の身勝手から……」
「それでも、あれがあったから今があるのよ。だから、あなたにはこれからも頑張って欲しい」
「もちろんです」
「では、ザンバ・イエルミン少将、本日から女王親衛隊副隊長を命じます。これからはずっとわたしの側よ」
「あ、ありがとうございます」
△△
この世界に来て私は男とそういうことは致していないから私に子供はできない。しかも私は女だから種付けはできない。ところがバレンシスがどうしてもと望み、雪ちゃんにお願いした。子供はライラと名付けた。私の子だが、次の教皇になるようだ。ラカユ帝国女帝は最低でもサタンが復活するまでは私が生き続けるから、すぐには女帝の跡取りになれない。
雪ちゃんに言わせると、30万年前の人類は男を必要としなかった。細胞を変化させ、精子と同じ性質のものをつくり着床し妊娠させていた。ところが、その方法は年代を重ねるごとに細胞が劣化し、元々1,000年あった寿命を100年に縮めることになったことで、結局男性から精子を受ける現代の形に戻った。
100年あれば現在では十分だ。私は細胞を預けただけだが、血の繋がりがあると思うとかわいい。バレンシスちゃんも、もう23歳だからどこから見ても妖艶な美女になった。でも私は見た目は未だに15歳だ。少しずつ歳が離れていくようで寂しい。
私は女性との趣味はなかったが、自分が歳を取らないのに周りは老けていく。確かに私のいた世界のお母さんに比べたら、みんな若い。でもやはり、私は15歳なのに、楓さえもう18歳になり、綺麗になった。あれだけ子供が欲しいと言っていたのに、今は新しい魔法の取得に興味があり、そちらはどうでもいいようだ。
そう思うとバレンシスちゃんも、そのうち居なくなってしまう気がして、急に寂しくなり、ある夜彼女の好きなようにさせてからはそういう関係が続いていたが、彼女が私の子供を欲しがった。でも当然私たちでは子供ができない。ところが、それを聞いた雪ちゃんが太古の技術を魔道ショルダーから取り出し、メイド全員の魔力と加護も加えバレンシスちゃんの望みを叶えた。
私は子供を作ることができない。子供ができると私の止まっている時間が動くらしい。だから子供は諦めていた。
ライラはすくすくと育った。ライラにはどういう訳か星読みの才能があった。バレンシスちゃんは、とても喜んだ。自分が死んだら三種の神器をライラに与えて欲しいと遺言した。
500年後、サタンが完全復活したが、私は勇者になっているから、サタンをサッサと片付けた。サタンは勇者となった私の敵ではなかった。雪ちゃんの言ったとおりだ。
でも、もうバレンシスちゃんもヘルシスもいない。ラカユ帝国はゴルデス大陸で一番大きな国となった。そうしたかった訳ではないが、そうせざるを得なかった。宰相はセシール・トマイルがやっているから安心している。もうヘルシス宰相の域を超えている。彼女の第三秘書官は、今年680倍の倍率を勝ち取ったヘルシス宰相の子孫だ。
私は15歳のまま、楓はエリツオが死んでからは12歳の容姿に戻り、そのまま止まっている。エリツオ・ホヒリエとの思い出の年齢らしい。500年経っても愛おしく思っていると思ったが、これまで結婚した相手は48名で、容姿は12歳のままで、これまで産んだ子供はたった3人。全員エリツオ・ホヒリエの子供だった。痛いのはもう嫌らしい。ブートキャンプでさんざん痛い思いをしているのに、陣痛はそんなもんじゃないと言った。
ラカユ帝国をここまで大きくしたのは、バレンシスちゃんが亡くなる直前に星読みで1,000年後までの未来を見たからだ。そこではブリメイス大陸からサタンと敵対していた第二魔族が、ブリメイス大陸で起こる世界大干ばつによる争いで、数百万の怨念に満ちた魂を拠り所に人間界に復活し、食糧に満ちたゴルデス大陸を目指して進軍するというのだ。
それが今年にあたる。
サタンや歩ちゃんレベルの悪魔が最少でも数百名、最大数万名やってくるのだから熾烈な争いになることは想像できる。それでもバレンシスちゃんの星読みがあったから私は準備ができた。
ジナイダ大帝国を滅ぼしてからは、周囲の国から併合を望まれれば、併合し、一番大きなギール帝国から喧嘩を売られたときも、受けて滅ぼした。そこまでしたのはゴルデス大陸に生まれる才能ある者、転生者、転移者を集めるためだ。
ただし、寿命を延ばすことはできない。それを使うにはまず最高難度幻影魔法が使えることが最低条件だ。だが誰一人現れなかった。だから、雪ちゃんにお願いし、50万年前の人類と宇宙人の間にできた種族が使っていた、生命保存技術を魔道具で再現してくれた。
才能のある者に理由を話し、承諾してくれた者に生命保存処理を施し、今年全員を目覚めさせた。そのおかげで勇者が30名、異世界転移者が21名、異世界転生者が65名、本日全員が目を醒ました。
特別庶務部にいた300人はラファエル一人を残し全員天使の里に帰った。元々ここにいる人材だけであったならば、天使300人がいたとしても間違いなくラカユ帝国は滅びる。ここが滅びるということは、ここの人類は絶滅し、ゴルデス大陸にある国はすべて滅び、悪魔の住む大陸となる。
300人の天使たちは最初の夫となった者が亡くなると、天使の里に戻らず、また親衛隊の若い子に手を出した。結局3度結婚し、3人の子供を産んだ。一人の男に対して一人の天使しかできないから夫一人から2人以上の子を生むことはできない。4度目がなかったのは、その子である天使たちが連絡要員としてラファエルを残し天使の里に追い出したからだ。彼女たちがいると真っ先に将来有望な若者に手を出し、子供たちにはまだ早いといって子を作ることを禁止したから、子供たちにとっては母ではあるが300人が邪魔だった。天使だって相手を選ぶ。
300人の天使たちの子は特別庶務部在籍している者は500名だが、秘書部に200名、医療部に200名、外交部に200名、そして首都警備隊に100名が従事している。特殊庶務部のうち300名は300人の天使が最後に生んだ子だから全員7歳ぐらいにしか見えない。本来の天使の姿となれるのは最初に生まれた子たちのみだ。子をなすことができるのもこの子たちだ。
第二魔族のうち30名程度が羽属魔力無効スキルをもっているから、天使を沢山抱えていても、その能力を無効にされてしまう。羽属魔力無効化スキルが1対100に対して、羽属無効スキル無効スキル無効化は1対1での効果なので、29名の悪魔は天使や雪ちゃんたちの魔力を無効にしてしまう。
だから、勇者が30名いる。勇者には当然羽属魔力無効スキル無効化があるから雪ちゃんや天使は魔力を失わないで済む。それに転生者に制限付きだけどコピースキルがある者がいるから、羽属魔力無効スキル無効化の能力もコピーできる。
ただし、いつも1つしかコピーできない能力だから、その間はほかの魔力は使えない。しっかり護衛する必要がある。
私たちは1,000年かけて、魔族を閉じ込める建物を完成した。1,000年かかったのは、その建物には一定数の『魔力の実』が必要になるからだ。
悪魔を閉じ込めるから、悪魔たちは死ぬことができず、二度と悪魔界に戻れず、人間界にも出られず、死ぬことすらなく、その建物の中で過ごす。
悪魔は自殺できない。もし自殺すれば消滅する。それは悪魔界にも戻れないことを意味する。悪魔同士で殺し合えば悪魔界に戻れるが、そうして戻った者たちはいくら人間の憎しみに満ちた魂があろうと人間界には復活できない。
私はこの1,000年で10万年に一人現れる勇者にしかできない大魔法を覚えた。それを使うにはそれに見合う魔力が必要だ。私は10万年に一人現れる勇者ではないから、これを集めるのが難しい。だけどチャンスがきた。
ゴルデス大陸は全部がラカユ帝国だ。ラカユ国は1,000年前から全く大きくなっていないが、各国の自治を認めるラカユ帝国はゴルデス大陸全土に及んだ。私はどうしても第二魔族が到来しても誰も死んで欲しくなかった。
だからゴルデス大陸のどこに上陸しても、私にその情報が瞬時に来るようにする必要があった。現在ゴルデス大陸全土に転移陣が敷いてある。最南端であっても一瞬で私に情報がくるようにしている。能力を増したメドモス・クラシス軍務相談役のおかげだ。彼の子孫は今でもラカユ帝国の中枢で頑張っている。
△△△
~1週間後~
第二魔族は転移魔法が使えないから船団を使い移動する。やつらがゴルデス大陸最北端の海に現れた。3,000隻での襲来だ。だが、ゴルデス大陸の全海を支配したアサリ・ハマグリ女王が第二悪魔族の船を沈没させている。悪魔も深海に引っ張り込まれたら生きていけない。
羽のある幹部魔族だけは船からシドル海の陸に上陸したと連絡があった。あそこに行くと思った。というより、あそこに行くように策略した。あそこには『魔力の木』を移設している。1,000年前にメイドと特別庶務部の天使が魔力を振り絞ってやっと移動できた。
『あそこには魔力の木の果実を5個残している』残りはすべて魔族を閉じ込める建物の中にあるが密閉してあるからその所在は第二魔族には知られていない。
第二魔族は魔力の木の果実を争って食べた。それまでもかなりの魔力を有していたが、その魔力はいきなり数倍アップしていた。魔族と戦うのには魔力が増えない方がいいが、一カ所に集めたかった。
第二魔族は何が何やらわからず、300人程度の幹部は全員捕縛された。魔力を封じる手錠だから逃げることはできない。まさか天使とメイドが待っているとは思いもしなかったようだ。
第二魔族は魔力の木の果実が1,000年分積んである建物の中に投獄された。この建物は天使とメイドの魔力を1,000年分貯めて造っているからこの程度の魔族がいても壊れない。
閉じ込められた魔族は、魔力の木の果実が無造作に数百個積み上げられている状況を見て、人間は大馬鹿が多いと高笑いしていた。
第二魔族幹部たちは元々魔力が高い。その幹部たちがその果実を食べればどれだけ魔力が増えるか分からない。
外で待機している私たちにも建物の中にいる魔族の魔力が急激に大きくなっているのが分かる。もしかして建物が壊れるのではないかという不安さえよぎるくらいに大きな魔力だった。
「ララ様、もういい頃だと思いますよ。これでまた楽しい日々がきますね」
「そうね。これでまた一から出直せるわ」
「そうですね。完成したものは、もう楽しくありませんからね」
「そう言ってくれると安心するわ。カルロッタの星読みによれば、『20年後にブリメイス大陸で天界への扉が開き、天界を追放された堕神バールがブリメイス大陸で暗躍した後、魔力の木を求めて世界を征服しようとする』魔力の木は外界から守るためウーベ宮殿に再移設したから、これから1,000年間はもう移設できない。
もし私が失敗すればライラの身が危険だ。カルロッタは堕神バールの落ちてくる確定した位置までは星読みしなかった。あまりにも先のことなので読まなかったのかもしれない。分かっているのはゴルデス大陸並の広さの範囲と、必要な人材を集めなければならないから、その範囲を早く統一しなければいけない。デリメイス大陸で生活している人たちも全員バールの信徒に殺されてしまう。
とにかくカルロッタの輪廻転生者を探して堕神バールの落ちてくる場所さえ分かれば、そこに強固な封印の罠をしかければいい。魔力の木の果実を食べていない堕神したばかりのバールであればこのメンバーが10年掛ければ永遠に封印できる。そのためにも早く行ってカルロッタを見つけ出さなければいけない。その後のこともあるからヘルシスもリデアもメルトミも必要なのよ。ちょっと内容は違うし8人じゃないけど『南総里見八犬伝』みたいに捜さなければならない」
「彼女たちは少なくとも2度は転生しています。きっとラカユ国の記憶がありませんよ。星読みもできるどうかもわかりません」
「魂が一緒だから大丈夫よ。それに記憶がないほうが一から始めて楽しいじゃない」
1,000年で身につけた物体のコピー能力もあるから、ライラから拝借して三種の神器もコピーしてあるし心の準備も物の準備も整った。準備は結構大変だった。一度ライラを仮死状態にして、三種の神器に能力が戻るようにし、コピーした後ライラにもう一度戻すという作業だったのだけど、ライラの時が進んでしまい、小町ちゃんに世話になった。
「ではもう大丈夫ですね。楓様、世界樹は何本用意されましたか?」
「ああそれね。2本よ。でもこいつらイカレポンチの突然変異だから、交尾するのよ。しかも実をつけ、その実がすごく美味しい。早く行って植え直してやらないと、こいつらは魔道バッグの中でも時間が止まらないから、交尾しまくって子供をいっぱい生んで世界樹だらけになって魔道バッグから出てしまう」
「その世界樹は、新天地に行ったときは、増えすぎないように、一定数確保したら離して、必要になるまでそれぞれ隔離しましょう」
「ララ様、では用意しましょうか」
「そうね。ゴルデス大陸は、ライラとセシール・トマイル宰相に任せればいい。定期報告はセシールがしてくれるから、たまに遊びに来る程度にしましょう。雪ちゃん、歩ちゃん、小町ちゃん、華ちゃん、まりちゃん、みちるちゃん、ステンノーちゃん、つばさちゃん、メドモス、みんなまた一からやり直しだけどいいかな」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」
「はっ!」
『さくら』は1,000年経ったのにまだ5歳程度だから置いていくつもりだったけど、昨日から私の側を離れなかった。きっと分かったのね。これから国づくりだから不便だけど一緒に連れて行くことにした。
「さくら、早く来なさい」
「うん」
「それじゃ~やるよ」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」
「勇者大魔法その1、魔力転送」
建物の煙突から膨れ上がった魔力が直径10メートルの白い塊になり浮かんだ。建物の中の魔族はガリガリに痩せているはずだ。きっと普通の建物さえ破壊できないだろう。この建物は神でも破壊できないほどのものだ。やつらは何万年も何千万年もこの中に閉じ込められる。
次にサタンが復活してもこの中に閉じ込めることにする。それは私ではなく、ライラとセシール・トマイル宰相の役目だし、それに天使の子が協力するだろう。
これだけの魔力があれば全員大丈夫だろう。
「勇者大魔法、輪廻転生」
青い空が真っ暗になり、七色の虹がかかった。
成功だ。
バレンシスちゃんも、ヘルシスもリデアもメルトミもピノもエリツオも母さんもウラベル母さんもみんなの魂がブリメイス大陸に向かって天界から降り注いだ。
「楓、食べてばかりいると太るわよ。これからエリツオを探してまた子供を作るのでしょ。行くわよ」
「分かったわ。待ってよ」
「みんな用意はできた?」
「ララ様、もうゴルデス大陸周辺の海はわくわくするものがありません。あそこは子供に任せますから、私も新天地に連れて行ってください」
「あんたも、苦労好きね。ブリメイス大陸はゴルデス大陸の10倍の大きさがある。海も大きいから苦労するわよ」
「苦労は楽しいですよ」
「雪ちゃん、小町ちゃん、華ちゃん、つばさちゃん、歩ちゃん、まりちゃん、みちるちゃん、ステンノーちゃん、メドモス、また苦労かけるけどよろしくね――――――――」
「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」
「はっ!!!」
堕神バールは神としての力を取り上げられ、天界から落雷と一緒に落とされながらも、ララたちを見ていた。
「そうはさせない……」
△△△
目前に大草原が広がっている。さすがブリメイス大陸は広い。大草原の出口が見当たらない。
「ねぇ、雪ちゃん、これからどうしようか?」
「……」
「ん?」
「雪ちゃん、どうしたの? まだ現れない。それに楓も、小町ちゃん、華ちゃん、つばさちゃん、歩ちゃん、まりちゃん、みちるちゃん、ステンノーちゃん、メドモス? みんななぜ現れないの? 転移魔法失敗したの? 私……ひとりぽっち? 嫌だ――――――――――!!!!!」
△△△
「ララ様、大丈夫ですか?」
「あ、雪ちゃん、なんでもっと早く現れてくれないの?」
「私は、ずっとララ様の側にいましたよ」
「嘘だ――――だって? ここはどこ?」
「第三宮殿の女王の間ですよ。おととい第二宮殿で祝勝パーティーを行い、昨日第三宮殿で戦勝記念があり、飲めないお酒を飲まれて、そのまま気絶されたので、ここに運びました」
「戦勝記念? どこと?」
「ジナイダ大帝国軍とですが?」
「勝ったのよね?」
「はい勿論です」
「私はゴルデス大陸を統一し、1,000年後堕神バールに対抗するため、ブリメイス大陸にみんなで転移したら、私だけ転移し、雪ちゃんたちは来なかった」
「ララ様は、ずいぶん魘されていましたが、私は片時も離れておりません」
「それにしては、1,000年間がリアルだったわ」
「もしかしたら、ララ様は堕神バールから、サタンの時と同じように、違う世界線を見せられたか、ララ様の魂が違う世界線に迷いこんだのかもしれません。どちらにしても、私の知る限り、ブリメイス大陸はありません。近い名前の大陸はありますが……」
「それ? なんて言うの?」
「プリメイラ大陸です」
「もしかして、ゴルデス大陸の10倍の大きさがある?」
「いいえ、30倍の大きさがあります。大陸では上から8番目に広い大陸です」
「そ、そうなの? だったら違うわね。夢がリアルすぎて、しばらく混乱しそうだわ」
「では、1,000年を100年ごとにまとめて語ることができますか?」
「そうね。できるわよ。500年後にサタンが? あれ? 途中のことが思い出せない。1,000年後は覚えているのに?」
「原因が分かりました。やはり堕神バールから見せられたのです。ですが、違うのは私たちが一緒ではなかったという事実です。きっとララ様にプリメイラ大陸に行って欲しくないのでしょう。それまでは夢に従った行動をしましょう。ただし、リアルな夢を見させたということは、バールは1,000年後どころか、すでにプリメイラ大陸に堕神しています。このままですと、夢と同じ結果になりますから、ヘルシス宰相たちがいる間にサッサとゴルデス大陸を統一し、これからライラ様を作り、ライラ様が5歳になったら、セシール・トマイルに宰相を任せ、50万人規模で移住しましょう。そこで、堕神バールの作った国家に対抗するため、国を作りましょう。新国家名は『新ラカユ国』ではどうでしょう。今から移住者のリストをヘルシス宰相に作らせたらいいと思います」
「でも、バールは神だから、とてもではないげと、どんな攻撃も無効化されないかしら?」
「それは心配いりません。実は悪魔も悪魔神が悪さをしています。天使が神でないのと同じです。天使も神の指示で動いています。その指示が適当ではありますが……。もしバールが直接手を出せば、天界の神々が降りてきて、バールを跡形もなく消します。それが神々の約束ごとだからです。それはバールも分かっているので、直接手を下すことはありません。悪魔は悪魔神の傘下なので、バールは悪魔も使うことができません。残った手は、人間を使う方法です。そのためにどこかに国を作っているはずです。私たちでプリメイラ大陸で一番強い国を作れば、どんな国であっても何とかなります」
「そうね。それならば、何とかなりそうね」
「そうですよ。座して死ぬより、攻撃あるのみです」
「そうね。それがいいわね。待っていてもバールに滅ぼされるものね」
「はい。それに楽しみもできたではありませんか」
「何?」
「大魔法輪廻転生ですよ」
「あれは、1,000年後に悪魔の魔力を借りないとできないわよ」
「それは、違います。今の調子でブートキャブを続ければ、100年後には、大魔法輪廻転生が使えるようになりますよ」
「えっ? そうなの?」
「はい。間違いありません」
「だったら、彼女たちには内緒にしておくわ。話すと面白くないものね。でも、記憶を無くさないようにしたいわ」
「そうね。彼女たちには内緒にしておくわ。話すと面白くないものね。でも、記憶を無くさないようにしたいわ」
「出来ますよ。勇者に与えられた大魔法輪廻転生は勇者の望む時期の記憶をよみがえらせることができます。それに堕神バールが勘違いしたことがあります」
「何?」
「ララ様は、10万年に一人現れる勇者です」
「ほんと?」
「はい。ララ様とは、10万年前に一度お会いしています。敵でしたが、あのときの澄んだ瞳は間違いなくララ様でした」
「思い出せないけど、雪ちゃん、これからもよろしくね。1,000年後も一緒だからね」
「はい。勿論です」
「じゃあ、早速、ヘルシス宰相、セシール元帥、リデア上級元帥、メルトミ上級元帥、ピノ上級元帥、女帝専属秘書官、宰相秘書官、ステンノーちゃん、バレンシスちゃん、それにメドモスを加えて、女子会+メドモスで堕神バール対策をするわよ。雪ちゃん、小町ちゃん、華ちゃん、みちるちゃん、まりちゃん、歩ちゃん全員をここに連れてきてね」
「「「「「「はい」」」」」」




